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危なっかしいひと(FF7R・クラエア)

全体公開 FF7(クラエア) 1589文字
2020-05-16 22:07:47

ワンライお題「マテリア」

Posted by @tomo27vt

居酒屋に入り浸る父親を連れ戻してくれ、という依頼そのものは単純なものの筈だった。
最悪力業で解決すればいいか、とも考えながら赴けば、件の父親はカウンターに突っ伏したまま管を巻いて離れようとしない。
曰く、賭け事に負けて大切な物を奪われたから何もやる気が出ない、とかなんとか。
何故か一緒に依頼をこなすこととなったジョニーの勢いに押される形で、その大切な物とやらを取り戻すことになったのだが、街中の店を渡り歩く羽目になるとは思わなかった。
マテリア屋の次は定食屋、と頭の中の地図を思い浮かべるクラウドに、声がかかる。

「先生は、教え込むのが好みかい」
「は?」

ニタリ、と笑う口元は怪しさが漂っており、どうにも不信感が拭えない。
マテリア屋の店主を名乗るその男は、夜にも関わらずサングラスを外さず、ラフな格好で、身体を横にして寝転がったまま接客をする。
絞られた照明といい、ウータイの物か異国風のインテリアが雑多に置かれている所といい、どうにも胡散臭さが漂うこの店は、出来れば訪れたくない。
成り行きでこなした依頼の出来が想定以上だったらしく、宿屋で手に入れた依頼の物を渡してから“先生”などと呼ばれるが、まったくもって嬉しくなかった。
嫌悪がどうにも隠せず、つい剣呑とした態度で返事をしてしまう。何でも屋は客商売だから愛想を良くしろと、エアリスにもティファにも言われているのに。
返事をされた店主はしかし、クラウドの嫌悪もどこ吹く風と、ニヤついた顔を改めもしない。

「さっき連れてた娘さ。“ソウイウコト”にはおぼこい雰囲気だったもんでな」

連れていた娘とはすなわち、エアリスだろう。
街を訪れてすぐ、入用だったため、このマテリア屋に二人で訪れていたのだ。客が来たのに一瞥したきり、気怠そうな態度で応対されたため、覚えてもいないだろうと思っていた。
覚えていて、尚且つ彼女を、“ソウイウコト”云々で、値踏みしていた、とは。
下卑た物言いに自然と見下ろす目が細くなり、眉間に皺が寄っていく。
鋭くなった空気に気づいたのだろう、マテリア屋の吊り上がった口元がヒクリと引き攣る。

……人の連れを勝手に見るな」
「こりゃ失敬、無粋だったな。じゃあ、アンタもさっさと退散してくれや」

シッシッと払いのけるように手を振られる。
元々長居する気もなく、近々の目的もある身だ。
次の目的地である定食屋までの道のりを思い浮かべながら、クラウドは店を後にした。


**


「っ、エアリス!」

思わず、荒げた声で名を呼んだ。
声に、パタパタと走る歩みを止めたエアリスが振り返ってこちらに駆け寄ってくる。
目が覚めるような真っ赤なドレスに身を包み、艶やかな彩りを纏う彼女は実に煽情的だ。実際、街中の男たちが振り返り、恍惚の声が上がるのが嫌でも耳に届く。
好色家のコルネオに気に入られるための装いとはいえ、どうにも胸のざわつきが収まらない。

「なぁに?」

小首を傾げて、見上げる様は艶やかな装いと打って変わって幼さを感じる。
普段のエアリスがよくする仕草ではあるが、装いが変われば、別な魅力を醸し出すものだ。
マテリア屋の下卑た物言いが頭を過る。ああ、普段でも危なっかしいというのに、と。

「なるべく、離れないようにしてくれ」
「離れない、けど?」

もう一度、首を傾げられる。
上手く伝わらないのがもどかしいが、どう伝えればいいのかがわからない。
頭の中で迷走する内に、エアリスの方が「早くいこ!」と手を引っ張り、先に進み始めた。
タイトなドレスは動き難そうなのに随分としっかりと歩けるものだ、と感心しながら、どうにもまとまらない考えをクラウドは放棄した。どうせしばらくは一緒にいるのだから、と。


FF7R・9章ウォールマーケットのマテリア屋とクラエア
@tomo27vt


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