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【レドヒツ】恋情ブロックノイズ

@tkaruno
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2015-01-16 08:22:06

フォロワーの桐山さん(@kirigoma)が描いた一場面の前後の話を考えて書く、という企画に乗らせていただきました。
あの素敵シチュが何やらよくわからん事態になってしまってすみませんwでも楽しかったです(´∀`)


* * * * *



 それはありふれた話だった。
 一人の男が一人の女と恋に落ちた。だが、男を取り巻く環境は女と結ばれる事を許さなかった。悩み苦しんだ男は結局女を選び、全てを捨てて逃げ出そうとした。
 ただ一つ失敗だったのは、男が逃げ出そうとした場所が悪かった事だろう。

「お前の直属だったって?」
「らしいな。もっとも、私は顔も知らない」

 ―――男が籍を置いていた場所はBF団。C級エージェントの一人だった。



※ ※ ※ ※ ※


 ヒィッツはソファで任務前に読みかけだった本を捲る。レッドはその隣でTVの画面を見つめていたが、特に何の興味を持って見ている訳ではないらしい。それならば自室に戻ればいいと思うのだが、二人が駆り出された任務が終わってからレッドは何か思うところがあるらしく、ヒィッツと距離を置こうとしない。だからといって何をされる訳でもないので、ヒィッツはいつもの気まぐれだろうと放っておいた。
 TVの音は大きくはない。注意すれば聞き取れるが、そうでなければ単なるBGM程度の音量だ。
「……今日のアレで死んだ奴は、」
 不意にレッドが口を開く。
「お前の直属だったって?」
「らしいな。もっとも、私は顔も知らない」
 件のC級エージェントが死んだのは作戦遂行中の事故だったが、すぐにその男が任務のどさくさに紛れてBF団から逃げ出そうとしていた事が発覚した。下級兵扱いとはいえエージェントの脱走は重大だ。だが今回は当の本人が死んでしまった事もあり、孔明も深く追求する事はなかった。
「まあ結果として一人の女性の命が助かっただけだな」
 ヒィッツは特に気にした風でもなく本のページを捲り、
「そもそもここから逃げ出そうなどと考えたのが馬鹿な話だ」
と、男の行動を切って捨てた。
 普段から数多の女性との割り切った関係を楽しんでいるヒィッツにとって、件の男の行動は理解し難いものであったらしい。
「お前は気障ぶっててロマンチストに見える割に、こういう点では冷淡だよな」
 そうレッドが言うと、ヒィッツは一瞬レッドの方をチラリと見やり、
「まさかお前の口からそんな事を言われるとは思わなかった」
言いながらわずかに口角を上げ、すぐに本へと視線を戻すと、
「まあ、それほどまでに激しい感情を実行に移せる行動力は多少評価してやっても良いがな」
 その言葉が本気なのか皮肉なのかは判断しかねたが、おそらくは後者ではないかとレッドは思う。
 レッドよりも遥かに外界の社会と関わりを持つ事が多いこの男は、見た目よりずっとBF団への……ビック・ファイアへの忠誠心は強い。
 そしてそれは当然レッドも同条件の筈―――なのだが。
「だったら、俺と駆け落ちするか?」
 TVの音が消えたような気がした。
 あまりに唐突な、あまりに現実味のないレッドの言葉に、ヒィッツは思わず本から顔を上げる。
「な……」
 悪い冗談だ。馬鹿な事を言うな。笑えない話だ。―――返そうとした次の言葉は全てヒィッツの喉の奥で消えた。
 ヒィッツの顔を見つめているレッドの目は仮面の下で見えにくかったが、その奥で薄暗い光を湛えているであろう眼の色は感覚でわかる。射抜くような視線はレッドが本気である事を伝えている。
「―――お前、それは……、」
 やっとの事でヒィッツが口を開いた。喉が妙に乾いてまるで唇の先で声が紡がれる様だ。
 そんなヒィッツの言いたい事を察してかレッドは眉一つ動かさず、いつものからかう様な笑みすら浮かべる事もなく、
「ビック・ファイア様への忠誠が変わった訳じゃない。だが、確実にお前が手に入るのなら、俺はここに未練も何もない」
 感情の読めないレッドの表情はまるで精巧な作り物のように一ミリも変わらない。だからこそその言葉に含まれた熱情が本気である事がわかる。


 地位も財産も居場所も。
 今までの自分が構成してきた“生活”という世界も。
 全てを手放してでもお前が欲しいのだ、と。


「……まさかお前がそんな事を言うとは思わなかった」
 ヒィッツは笑い飛ばす事も怒る事もできず、ただ、そんな陳腐な言葉を返すので精一杯だった。
 やっと音を取り戻したTVのノイズは未だ止まない。





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