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六十郎じっちゃんの会

全体公開 遊戯王ZEXAL(Pixiv未UP) 1 10785文字
2020-06-06 12:11:09

Ⅳゴーシュドロワ鉄男アンナロビン闇川の、平和なわちゃわちゃ

vs七皇で散った人たちをひとまとめに平和書きてえ

アンナのロケットに乗ってんの。
上からじいちゃんロビン闇川ドロワゴーシュ下に鉄男そして一番下で潰れてるⅣ

じいちゃんが一番上でちょこんとお茶すすってて、ロビンが申し訳なさそうに乗ってて、ゴーシュがドロワ抱えてガーッバッハしてて鉄男はうつ伏せで、そしてその下で全員に押しつぶされて手だけ見えてるⅣ

このメンバーだと苦労人の未来しか見えなくてだなwww


って言ったらえいさんが描いてくれました!!!!


Ⅳの人間関係を広げようとした結果、苦労人幹事雑用ポジに。
毎回逃げようとしてもプロのゴーシュが物理で連れてくる。

六十郎じっちゃんの会は、決闘庵か、じっちゃんの知り合いがやってるちょっといい感じの個室系居酒屋で開催されます(自由人だらけ)(苦労するⅣ)(良心なロビン)

六十郎じっちゃん主催の会。
宴会の荷物をめちゃくちゃ持たされるゴーシュとⅣ。
決闘庵の階段の途中でバテて死んでゴーシュに俵担ぎされるⅣ

決闘庵で開催されるときは、宴会の酒をゴーシュが担いで、Ⅳは途中でバテて潰れます。その上を飛んでいくアンナ(オレも連れてけ)

マイペースなじいちゃんと闇川、自由人なアンナとゴーシュに頭いたいドロワとⅣ、良心なロビンで構成されております。

‪宴会では鉄男と風也が笑って話してて、ゴーシュ(成人したて)と闇川さんと六十郎じっちゃんが飲み明かして暴走するアンナを慌てて止めるⅣがソフトドリンクと皿を持って慌ててバランスを崩している。‬

でもなんだかんだ言いつつ、この集まりは嫌いじゃないトーマスくんであってくれ

◇ ◇ ◇

その後も、ゴーシュが帰国するたびに呼び出されて六十郎じっちゃんの宴に強制参加になるⅣ。夏は肝試し大会に発展してまじビビリを披露してくれ。


‪海外の大会で一緒だと、「ガーッハッハ!」って空港までそのまま引っ張られて一緒に帰国してくるまであるゴーシュとⅣ‬





「────決着ッ‼︎ 決まったァ‼︎ 」
ワーッと歓声が空高く伸びる。
「ハートランドカップ、エキシビジョンマッチ!激戦を制したのはアジアチャンプⅣ選手!
勝者Ⅳ選手、そして大健闘を見せてくれたゴーシュ・ザ・スターマン選手!
両名に盛大なる拍手をッ!!!」

ワーーーーーッ!!!

流れる汗と倦怠感に身を浸して、最高に心地良い達成感に酔った。

広いスタジアムは大歓声と熱気に満ちて
イベントは大成功に終わった。


【タイトル:六十郎じっちゃんの会】




試合後、控え室にて。
挨拶もそこそこに、Ⅳは愛想よく立ち去ろうとしていた。
厄介ごとの気配を察知したからだ。
「では、僕はこれで」
「よおチャンピオン!邪魔するぜ!」
Ⅳはにこやかな仮面の下で頬を引きつらせた。

『ゴーシュ・ザ・スターマン』は最近もっとも躍進が目覚ましいプロデュエリストの一人だろう。
WDCで運営委員を務め、繰り広げられるデュエルに感銘を受けていち決闘者として奮起。厳しい条件をクリアしてプロ資格を取得してヨーロッパで活動を開始し、現在は自分と同じ孤児たちへの慈善事業に精力的、といったところだ。少し前にドキュメンタリーで取り上げられてからは日本での知名度もなかなかだった。

プロの世界にいればよくある話だが、見目が良く番組的に視聴率を取りやすいⅣは、直近で話題性のある相手と恣意的に何度も組まされることも珍しくない。
おかげでこのところこの暑苦しいヒーロー男と仕事で顔を合わせることがやたら増えたが、Ⅳはこの直情的な男が正直苦手だった。

何がどう琴線に触れたのか知らないが、少し前に仕事で組んでから妙にやたらと関わってくる。
公私は混同しないが、元々はWDCの運営委員、つまり実態はDr.フェイカーの子飼いだった男だ。組み合わせ次第ではWDCでぶつかっていただろうし、事実コイツのデッキのプロフィールは当時復讐の一環としてフェイカー陣営の物として頭に叩き込んである。

向こうはまるで気にした素振りもないが、こちらは割り切るには複雑なものを持っている。
自分たちの悲劇の発端はフェイカーだ。だがフェイカーと父は和解し、今は兄もフェイカーのラボで潤沢な研究資材を生かして辣腕を奮っている。弟は家族と再び笑い合えるだけで心から充分な様子だ。いまだに心にしこりを持っているのはⅣだけなのだからやり切れない。

だが、それは結局この男を取り巻く間接的な何かで、男そのものを嫌う要因ではないのが厄介だ。この手の裏表のない人間が、Ⅳは単純に不得手だった。
何の利も無いのに絡まれているⅣを助けに入るような善良さも、対戦相手の部屋に乗り込んでくる不用心さも。
現に、現れたゴーシュは、マネージャーの一人もつけていない。
(不用心が過ぎるぜ)
凌牙との決勝戦を思い返して複雑な苦笑いを落としたⅣに、ゴーシュは「ガーッハッハ」と豪快な笑い声だけを返した。本当に調子の狂う男だった。
「お疲れさまでしたゴーシュプロ。それでは僕はこれで」
完璧な所作で一礼して、控室をあとにしようとしたⅣをゴーシュは捕まえて
「何だよツレねえノリだな!」
と肩をがっと組んで引き留める。
「せっかく飛行機乗り継いでハートランドまで来たんだ。少しぐれえハメ外さねえと損ってノリだろ!打ち上げと行こうぜチャンピオン!」
打ち負かしても本気で明朗な感情だけ向けてくるこの手の人種が、Ⅳはとにかく苦手だった。対処不能で困る。遊馬とは気が合うんだろうな、と思った。同類の匂いがする。
「だいたい、なんだよその他人行儀な口調はよぉ。一緒に戦った仲じゃねえか」
……あいにく、公私は分けるタイプですので」
「何だぁ? お前そんなかしこまったノリじゃなかっただろお?」
「なにごとにも礼節は必要でしょう? ですから僕は帰ります」
「ツレねえなあ! たまには付き合えよチャンピオン! でぇじょうぶだって、お前みたいのでも素で飲めるイイ場所があんだよ」
「貴方と違って僕は未成年ですし、ですから、ちょっと、引っ張らないで」
「あん?お前ほっせえなあ!なんだこりゃ、ちゃんと食ってんのか?よぉしここはひとつオレがいい肉食わせてやるよ!」
「結構です!ですから、ちょっと、離し……あーッ!離せっつってんだろこのデカブツ!暑苦しいんだよ!は!な!せ!」
「ガーッハッハ!そうそう、いいノリだ!」
「なんだこいつ聞いちゃいねえ!耳にパンでも詰まってんのか!」
「ゴーシュ・ザ・スターマンとっときの店だぜ!さあそうと決まれば行くかぁ!」
「これが!まるでぜんぜん!聞いちゃいないんだよねえ!なにひとつ決まってねえって!言ってんだろ!この筋肉ダルマ!くそっ、離せ!離しやがれーっ!」
「ガーッハッハ!みんなお待ちかねだぜ!」



引きずられて
気付けば小綺麗なこあがりの小料理屋に案内されていた。

「よお!一名追加で頼むぜ!」
「おお、来たかゴーシュ」
「六十郎のじいさん、コイツ連れてきたぜ!酒追加頼むわ!」
「ん? おお、あの時の小せがれか。よぉ来おったな」
「ゴーシュさんー!お久しぶりですー!」
「よぉ風也!元気してたノリかぁ?」

わけのわからない内に連れてこられた料理屋には、すでに先客が居た。
じいさんにおっさんに女にガキども。統一性のかけらもない。ざっと数えたところ六人いる。

「ジョッキで!ドロワ!頼むわ!」
「まったく、連れて来るなら来るで連絡を入れろ。はぁ……ウーロン茶でいいか?」

頭の痛いことに、この熱血男が突発的に人を連れてくるのは初めてではないのか、誰ひとり闖入者のⅣを大して気にした様子がない。平然とメニュー表を進めてくる始末だ。

「あ? ああ、あんた、確かカイトのとこの……
「ドロワだ。うちの馬鹿がすまないな。大方、控え室に突撃でもされて無理やり引っ張ってこられたんだろう。災難だったな」
「いや……まあ……
「さあ始めようぜ!生追加で頼むわ!」
「Ⅳさんお久しぶりです。先日の収録ではお世話になりました」
……ん?……ああ、エスパーロビンの事務所の……
「奥平風也です。このあいだの公開収録は本当にお世話になりました」

どいつもこいつも微妙に見た顔だ。

ゴーシュと一緒にWDCで運営委員を務めたドロワ。
六十郎と呼ばれたじいさんはどうやら場の取りまとめらしい。あの戦いのときに助けられた覚えがある。闇川と呼ばれた隣の紫色の着物の男も同様だ。
こちらはエスパーロビン事務所の奥平風也か。前に公開デュエルで仕事をしたことがある。隣のガキンチョはそういえばあの戦いの時にロビンと一緒だったような……

ちょっと待て。これ全員オレが凌牙アイツからファンサービス返しされたメンツなんだが。微妙に嫌だな。

「なんだこれ。なんの集まりだよ。遊馬か?」
「いんや、遊馬はおらんぞ」

妙に統一性の無いメンツの共通点として、 Ⅳの知る中でいちばん可能性の高そうな名前を上げたが、六十郎と呼ばれたじいさんがこともなげに否定した。
場違いな所に連れてこられた、とⅣは尻の座りが悪くなったが、そこにトイレに行っていたらしい肉だるまが戻って来たことでさらに拍車が掛かった。

「ん、あれ? あーーっ! Ⅳっ⁉︎」
「ゲッ、お前は」

膨れた腹を抱えてⅣを指差したガキ。
WDCで手酷くファンサービスした覚えがある、確か遊馬の幼馴染だったか。
こいつは潜水艇で保護したガキどものメンツの中にも居たからよく覚えている。

ますます気まずさを感じたⅣの肩を、ガシッとゴーシュが組んだかと思うと、何の了承もなくこう宣言した。
「鉄男ぉ!今日の特訓相手はチャンプだぜ!熱いノリでいけ!」
「はぁ!?」
「マジで!? うおー! 燃えてきた!」
「あっ、鉄男ずりーぞ!オレも混ぜろよ!」
「おうおう、アンナもこっちこい!バトルロイヤルにしようじゃねえか!」
いつの間にかデュエルする流れになって、いきなり焚きつけられたⅣはいよいよ困惑した。
ゴーシュの手を叩き落として帰ろうと席を立つ。
「ハァ!?付き合ってらんねーぜ!オレは帰る!」
「おいおい、アジアチャンプともあろう奴が、しっぽまいて逃げやしねえだろ?」
ピク、とⅣの肩が跳ねた。
「それともアレか、さすがに連戦は体に堪えるか?お前ほっせえもんなあ、もっと肉食え肉!がーっはっは!」
無駄に隆々な筋肉で煽られて、ぷちっと頭の端であっけなく堪忍袋の尾が切れた。
……上等だぁ!この脳筋ヤロウ!」
向き直り、ビシッと指を指す。
「おい肉ダルマ!がきんちょ!二人まとめて掛かってきやがれ!オレのファンサービスをたっぷり味わわせてやる!」
「ガーッハッハ!そうこねえとなあ!」

かくして、あっけなく簡単に乗せられて、そのまま混戦のデュエル大会になった。


デュエル後。ライフをゼロにされた鉄男とアンナは大の字で寝転がって息を整えていた。
「だー!悔しいー!」
「くっそー!」
そこまでしてⅣはやっと冷静になって、すっかり口車に乗せられたことを悟ったが、散々デュエルをした後では全てがどうでもよくなった。
「ほっほっほ。元気で結構」
と六十郎と呼ばれた老人がⅣのそばに寄ってきて、いかにも面白そうに茶をすすった。
「ったく、なんなんだよこの集まりは。意味わかんねえ」
「なに、特訓よ」
「特訓?」
「そこにいる鉄男がな、2か月ほど前にな。弟子入りしに来おった。強くなりたいんじゃと」

遊馬たちには内緒でな。

◇ ◇ ◇



汗をぬぐう。ヨーロッパと違って湿度が高い。

「さっすが、ハートランドはあっちいなあ」
常夏の街、ハートランド。ゴーシュは久々にこの国の土を踏んでいた。

ゴーシュの今の活動拠点は主にヨーロッパだが、機会があれば日本の仕事はマメに取るようにしている。ハートランドにはカイトがいるからだ。

スラム街出身の自分たちが、金で買われて流れ着いたのがこのハートランドだった。カイトと出会ったのもこの街。同じくMr.ハートランドに無理やりつれてこられたカイトとは、過酷な環境を共に生き抜いた強い同郷意識がある。
訓練所時代の絆は今も固い。
クソみたいな思い出も多いが、ここで生きると誓った仲間がいる以上、たまには顔を見てやりたい。カイトは元から一人で無理をする性質だからなおさらだ。

ゴーシュもドロワも日本を離れてしまったが、機会さえあればカイトの元を訪れたいと思っている。少し目を離した途端に月まで行って仮死状態になってくるようなハチャメチャな男なのだから、顔は今の倍見に来てもいいくらいだ。

とはいえ、仕事のたびに来ていれば、ただでさえ親密な交流を厭うカイトのこと、問答無用で追い返されることも珍しくない。
どうやら今回は二徹明けだったらしくかなり濃い隈ができていたので
「そんなんじゃ背え伸びねえぞ!」
と笑って忠告してやったら、青筋を立てて叩き出された。あれは内心だいぶ気にしている。ゴーシュは笑った。噂では最近遊馬に成長期が来たらしいので、その影響かもしれない。追い返されるのは十回目だ。
とはいえ、その程度、気にするなら最初から突撃しない。そもそも予定を聞けば百パーセント居留守を使われるので、ゴーシュは端からカイトの予定を聞いたためしがない。

帰還の飛行機は明日の朝一だ。丸一日すっかり時間が空いてしまったが、デュエルが盛んなハートランドのこと、適当に歩いていればそのうち相手も見つかるだろう。
こういう時間に宛てもなくぶらつくのが、ゴーシュは好きだった。

治安の良い綺麗な路地。学校帰りの子供たちがワイワイ騒がしく遊んでいる。

どれもゴーシュとドロワの幼少期には存在しなかったものだ。
雨水を飲まなくても水道があり、生ごみを漁らずとも子どもたちが生きていけるこの国は、ゴーシュたちにとっては夢物語にも思える。
ゴーシュが活動する地域にはそれがない。だからゴーシュは、自分たちが生まれた地域でもこれが当たり前になる日が来るようにデュエルをしている。

幸い、チャリティー活動は軌道に乗っている。こうしてゴーシュがぶらつく暇を持てる程度には。
マネージャーを担当しているドロワは仕事があるからと来日しなかったが、今はそう忙しいシーズンでもないので、単純にカイトの元を訪れるのが照れくさかっただけだろう。妹分は真面目なぶん、堅物で照れ屋で困る。

「ったく、じれってえなあ。気にしねえで来ちまえばいいもんを。なあ?」

ゴーシュはごちた。お前が気にしなさすぎるだけだろう、と辛口の妹分は反論するかもしれない。あれで意地っ張りで夢見がちな所があるから、目に見える成果を出さないとカイトの前に立ちたがらないのだろう。もったいないことだ。
俺たちの今の活動を土産話に聞かせると、カイトは無関心を装いこそすれいつも少しだけ目元を和らげる。
離れていても変わらない。言葉だけが真実ではないのだ。アイツは情に厚い。内心誰より俺たちの活動を認めている。
あいつは認めた相手に厳しいタイプだ。
そしてカイトは、本当にずっと昔から、ゴーシュたち相手にそれを崩したことはない。

「さぁて、一杯引っかけるにもさすがに早えしなあ。デュエルしてそうな広場でも冷やかすかあ。……あん?」

適度な店を物色しながら歩いていると、ふらふらと向こうから自転車が二台並んで走ってくる。学生らしい二人組はおしゃべりに夢中なようで、前方を荷物を思って歩く老人に気付いた様子がない。

「! うおっと、あぶねえ」

ゴーシュは反射的に腕を出して老人を歩道側に引っ張り込んだ。

チリンチリン、慌てたベルの音だけが残る。

「くぉーら、気ぃ付けろよー! がきんちょどもー! 危ねえぞー!」
「ごめんなさーい!」

遠のいていく自転車。ゴーシュは向き直った。

「災難だったなじーさん、ほらよ」

散らばった荷物を拾ってやる。道に転がった野菜を拾ってしゃがみ込むと、頭上に影が落ちた。

「デュエルできる場所を探しておるのかね」
「あん? おうよ」

転がったトマトを拾って顔を上げる。
ゴーシュの腰のデッキを杖で指して、逆光の中で小柄な老人は飄々と笑った。

「あんちゃん、ゴーシュとか言ったか。礼代わりにわしの決闘庵に来んか。好きなだけデュエルするといい」
「あん?」
瞬いた。
「じーさん、なんでオレの名前……ん? あ? お?」
改めて顔をまじまじと見ると、どこかで見覚えのある好々爺然とした笑顔。
老人はしたたかに、カラカラ笑った。
「ついでにちっとばかし荷物を持ってくれんか。老体には買い物ひとつ重労働じゃて」




「ガーバッハ!偶然だなじーさん」
「ま、これも縁じゃて」

どこかで見覚えのあるじーさんだと思えば、あの戦いのときに遊馬のもとに駆け付けたひとりだった。ゴーシュも言われなければ気付かなかった。記憶力の良いじーさんだ。
ゴーシュがほぼ全て荷を引き受けたが、老人ひとりで良く持てたなと思う量だ。

「よくもまぁこんだけ買い込んだなぁじーさん!」
「ほっほっほ、普段は弟子が降りるんじゃがな、たまには自分で歩かんと鈍るからのう。おかげで珍しい拾い物をしたわい」
「ハハッ! 遊馬もこの上で修行したんだってなあ! コイツぁ楽しみなノリだ!」

長い長い階段は、まだまだ続く。
見た目より健脚らしく、じーさんはひょいひょい登っていく。

「ホッホッ、ついでに夕飯でも食べていくといい」
「お、マジで? そいつァありがてえ、世話になるぜじーさん!」

ゴーシュが高らかと笑えば、じーさんはホッホッと好々と笑う。
やはり日本は良い国だ。子どもが明るく、老人がひとびとを見守っているのは平和な証だ。
ゴーシュの故郷のスラムも、やがてこうなっていくといい。

「お前さん、酒はイケる口かね? ちょうど辛口の吟醸があるぞい」
「おー! じーさん分かってるねえ! 日本酒は熱燗派だが、夏はやっぱキンキンの冷やってぇのもオツなも……ん? なんだぁ? 騒がしいな」



山頂に差し掛かったところで、なにやら揉めているような声がする。
階段を登り切って汗を拭うと、そこには古風な着物の男と、地面に座り込む子どもがいた。

闇川に土下座して特訓を頼んでいる鉄男だ。

「頼む! オレに稽古をつけてくれ!」
「あいつァ……

砂利の上に両膝をついて、必死に頼み込む鉄男。あの少年には見覚えがあった。

「そうか、あいつ遊馬の幼馴染みのガキか」

「頼む!オレはどうしても強くならなきゃいけないんだ!」
「そうは言っても、拙者はまだ修行中の身、弟子を取るわけには」
「頼む!」
砂利に額をついて鉄男は言いすがった。
「オレは遊馬アイツの親友だ!けど、あの戦いで、オレはアイツが一番辛いときに何もできなかった……!オレが弱かったからだ!」

土下座も厭わず、絞り出すような声で頼み込む姿は、誰もが胸を打たれるような真摯さがあった。

「もう二度とあんな思いをさせたくない!遊馬にも、璃緒さんにも……だから!オレは強くならなきゃいけないんだ!!」


「良いノリだ!」
淀んだ空気を切り払うように、ゴーシュは溌剌と叫んだ。
鉄男の横に膝をついて、背中を平手でドンッと大きく叩いて励ます。
サムズアップするゴーシュに、鉄男が顔を上げて目を丸くした。
「あんた、ゴーシュ!?なんでここに!?」
「まあ成り行きでな!そんなことより、良いノリだったぜ、鉄男!」

何かのために強くなりたい。
あんな熱いノリを見せられたのでは、血が騒ぐというもの。

「オレが稽古つけてやるよ!プロデュエリスト、ゴーシュ・ザ・スターマンさま直々の特訓だ!根を上げんじゃねーぞ!」

鉄男は目を丸くして、次第にじわじわと期待に顔を赤くして「おう!」と元気よく叫んだ。

こうして、決闘庵で、ゴーシュと鉄男、そして闇川を交えたデュエルの特訓は始まった。

六十郎は、好々爺然とした笑顔で、それらを見ていた。



◇ ◇ ◇


「というわけでな」
騒がしい面々を尻目に、じいさんは煎茶をずずっとすすって、Ⅳの疑問にそう答えた。
「最初は鉄男わっぱゴーシュあんちゃんだけじゃったんじゃがな。人が人を呼んで、いつの間にかこの大所帯よ。ホッホッ」
「はあ……
「ま、お前さんもあのあんちゃんに連れて来られた口じゃろ。せっかくの縁じゃ、楽しむといい。流れには逆らわんのが人生のコツじゃて」
「そりゃ、どーも」



「くっそー!Ⅳ、リベンジだ!もう一回!」
「あっずりいぞ鉄男!オレだってデュエルたい!」
「ガーッハッハ!よーしもっぺんやるかあ!次はタッグデュエルなんかどーよ!」
「あっ、ちょ、こんの、勝手に決めんじゃねえー!この脳筋どもー!」



「ほっほっほ。なべて世はこともなし、じゃのう」


◇ ◇ ◇



「なーんでオレはせっかくのオフにガキンチョの面倒みてんだろうな……
「ガーッハッハ!」

Ⅳがぼやいた。ゴーシュが豪快に笑った。
決闘庵の広い道場には、鉄男と風也のデュエルする声が響いていた。
「鉄男くん、もう一回お願いしますっ!」
「おう!行くぜ風也!」
「はいっ!」
修行場に子どもたちの汗が散る。
体力無尽蔵な子どもたちに散々付き合って連戦を終えたⅣとゴーシュが、壁に背を預けながら涼んでいた。

「最近気付いたんだがよ」
「あーん?」
凌牙 アイツの妹にしてもコイツらにしても、押しの強えやつにオレ弱ぇわ……
「ガーッハッハ!なんだ、今さらだな!」

仕事帰りにゴーシュに捕まること、はや数回。
いつの間にか、すっかり馴染んでしまっている自分に気付いてⅣが遠い目をした。下手に抵抗して隣の大男に抱え上げられて連れてこられるより、さっさと諦めて連れていかれる方が気が楽だったのだ。


遠い目をしたⅣに、アンナが近付いてきて、「おい、Ⅳ!」とニカッと笑った。

「サボってんなよ!オレはまだまだ行けるぜ!」
「あーハイハイ。お子サマは元気なこって」

Ⅳは肩をすくめてデッキを構えた。
アンナは「列車」を冠するランク10、高レベル帯を扱う機械族デッキだ。
Ⅳは同じく高レベルの機械族をぶん回すギミックパペット。動きが参考になるらしく、最近はゴーシュよりⅣを好んで相手どることが多くなった。

「オレの手解き ファンサービスを受けられるのはミハエルの特権だったのになぁ」

Ⅳはぼやいた。
このアンナという少女、かなり思い込みが激しいタチらしく、以前ミハエルを遊馬の彼女だと思って特攻を仕掛けたらしい。
聞いた時は、女顔の弟を指してゲラゲラ笑ったが、これが自分が関わるとなると笑えない。弟の苦労がしのばれる。

まだ弟はライバル認定から外れていないらしい。
見ている分には面白いんだが。

「次は アイツもぶっ飛ばしてやるからなー!!イタリア男もサメ野郎もみんなまとめてオレの敵だ!!」
「遊馬も苦労すんなぁ……

まぁやるからには楽しまなければ損だ。
しょうもない理由で奇襲を食らう凌牙がそれはそれで見てみたいので、それなりに本気は出す ファンサービス、だ。









「お前、いったいアイツらになにした?」
砂を噛んだような微妙な顔をしながら、凌牙がそうⅣに尋ねてきたのは、そろそろ夏も終わろうかという季節のことだった。

唐突な質問から言いたいことをだいたい察したⅣは、わざとすっとぼけた。
「なんのことだ?」
「とぼけんな、鉄男 どいつアンナ こいつもカウンターの時のデュエルの癖が最近テメーそっくりなんだよ……
今度こそハッキリ苦虫を噛み潰したような顔でそう指摘した凌牙に、Ⅳが「さすが一番のファン」と混ぜっ返せば、凌牙が実に嫌そうな顔をした。そうそう、いい顔だ。

アンナは勝手にペラペラ喋るタイプなので、凌牙がどう襲撃されどうなったかは筒抜けだ。
爆走少女にひたすら振り回されたらしい凌牙に、ゲラゲラ笑ったことだけ言い添えておく。

なにせ凌牙の癖は知り尽くしている。
どう隙を付けば崩せるか、どう突けばリズムが狂うか。どう巻き返せば壊せるか。
凌牙が嫌がることなら誰より知っている。その呼吸を仕込んでやったのだから、そりゃあ気付くだろう。

鉄男も最近メキメキと力を付けてきたので、凌牙もあまり慢心していられないらしい。

「まあ、成り行きでよ」
「どんな成り行きだよ……
「それはオレが聞きてえよ」

笑って肩をすくめたⅣを、凌牙がジッと見つめた。
「なあ」と凌牙が問うので、視線をやれば、凌牙は何とも言えない顔で、どこか困惑したようだった。
「Ⅳ、お前、なんか……変わったか?」

Ⅳは、目を丸くして、ゆっくりと瞬きした。




Ⅳが凌牙を知り尽くしているように、凌牙もⅣを知り尽くしている。
その凌牙が言うのだから、きっと正しいのだろう。

言われてみれば、余計な力が抜けて、肩が軽くなっていたかもしれなかった。いつの間にか。

ちなみに、今日は宴会の予定だった。
どうせまた浴びるほどの酒を詰めた酒樽を運ばされることだろう。


Ⅳは少しだけ悩んで、最終的に「細かいことはどうでもよくなったな」と答えた。




◇ ◇ ◇


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