※2017年10月、文庫組版記事も作成しました(http://privatter.net/p/2811114)
※https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52201883 もあります
先日は、天地左右と文字詰めでの印象による見た目違いについてでしたが、今回は見開きで作ってみました。全体が見られるので、開いた時の印象が分かりやすいと思います。
(先日作成の、文字組拡大バージョン http://privatter.net/p/431841)
基本情報として、フォントは私がこの記事を書いた当時に使っていたイワタUD明朝
(小説フォントとしてスタンダードなリュウミン・ヒラギノと比べ全体的に大きな印象で読みやすさに特化したUDですが、現在はリュウミンLを使うことが多いです)
A5、9pt ワード2010
「レイアウト」→「余白」→「印刷の形式」→「見開き」にしています。
女性向け同人誌(見本画像本文に使用している小説は、腐向けではありませんが二次です)
最初は基本です。
天地左右15mmずつ、ノド5mm 文字詰めはデフォルトのまま
22行×27字、1ページ目の文字数は1016字です。
ごくごくスタンダードなものです。地を20mm程にするなど、少し多くとってもいいと思います。
ページ数によってはノドを多く取ったり、紙をキンマリなどの70~76kgくらいにものにする、など工夫が必要です。
※天地左右の余白については個々の好み、作風、デザインなどがあると思いますので、あくまでも私個人のスタンダード、ということでご覧ください。
※ノド部分ですが、ページ数が厚くなればそれだけ必要です。5ミリ、8ミリ、10ミリ。また、A5ではなく新書、文庫の場合ノドを多く取った方が良いと思います。
※使用する本文用紙によっても開き具合が異なります。
←←開きにくい(かたい・しっかりしている) 美弾紙系>>バルギー系>>ノヴェルズ紙→→(開きやすい)>>の順に開きやすくなる印象です。
※左右の余白は、読んでいる時に指がかかることを想定しますので、狭すぎると読みにくいです。
次にこれを、レイアウトそのままMS明朝にします。
繊細な印象になったと思います。
次にフォントを、フリーのIPAex明朝というものにしてみます。
すらっとした印象でとても綺麗なフォントですが、行間がおかしくなるバグが起こることがあります。
次に、ページ上部にロゴを入れたり、タイトルを入れるデザイン系のレイアウトの場合です。
一行当たりの文字数が3~4字減るだけで、ぐっと印象が変わります。場合によっては物足りない、目が忙しいという印象もあるので注意が必要だと思います。
次に、フォントサイズを変えます。
9→8にしてみます。8くらいであれば、文字詰・行数によっては全然問題なくA5でも読めると思います。ただ、A5で25行×35字×2段など、ぎゅうぎゅうになってしまうと読みにくくなります。
一行当たりの文字数を増やした場合は行間を開ける、などの工夫が必要です。
次はフォントサイズ8.5ptです。
そこそこ読みやすく、文字数も多く、スカスカにはなりません。
9ptだとページ数が増えてしまって、という場合、8.5くらいにすればそれほど印象変わらずページ数が少しおさえられると思います。
次に、あまり最近では見ないですが、A5で一段組を考えてみます。
※「A5の二段組みは読みづらい」という意見があったために作成したものですが、二段組み同人誌が実際は多い、ということを前提にしています。
天地左右、文字数行数は、市販のA5に近い単行本を参考にしています。
一段のものは、どうしても一行当たりの文字数が増えます。
目が滑らず疲れずに楽に読めるのは40文字前後が限界とも言われている(諸説有)ので、これはちょっとギリギリかなと思います。
(参考・光文社「舟を編む」19行×44字)
次にこれを、天地余白を広げてみます。
一文字減っただけですが、地を少し大きく取りました。
次に、フォントサイズを9.5にしてみます。
市販の単行本であれば、このくらいのフォントサイズでもあります。
一行あたりが45字に減ったことで読みやすくなったと思います。余白そのままで文字数を変更したい場合は、文字詰・フォントサイズをいじる、などがありますが、文字詰は変えすぎるとスカスカな印象になったり、行間との兼ね合いで見た目が悪くなってしまいます。
次に、フォントサイズは9.5のまま、天地左右を揃えた余白にしてみます。
特に問題はありませんが、一段組の場合は地が多い方が格好がつくかなと思います。
(天にノンブルが来る場合はまた別)
次にフォントを8.5にしてみます。
文字数がぐっと増えるので、気楽に気軽にという感じではなくなります。行間の工夫が必要になってくると思います。
こうして見ると、同人誌においてはA5の場合は二段組みがとっつきやすく、エロ小説の喘ぎ声やスピード感、短いセリフが続く時などは一段組だと下が丸々空いてしまうという見た目の問題が出てきます。
A5では二段、新書では二段と一段の使い分け、文庫は一段、などフォントの大きさ、種類、また話の内容によってレイアウトを変える工夫も必要かなと思います。
読みやすいレイアウトが、イコール自分の好みであるとは限りません。ぎゅうぎゅうに詰めるのが好き、逆に余裕を持った行間や、10ptくらいのフォントが好き、など様々です。
しかし、読みやすいと思ってもらえるレイアウトであれば、苦労することなく素早く、そして引っかかることなく小説の世界に入り込んでもらえるのではないかと個人的には感じます。
とても素晴らしい小説であっても、読んでいて疲れる、何だか落ち着かない・入り込めない、となってしまってはもったいなく思います。
個性や好みを生かしつつ、話に合ったフォントを試したりいろいろと試してみても良いと思います。
追記
文庫レイアウト作成しました
http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52201883
(以下、レイアウトに関係ない話です)
A5の小説同人誌は、A5の漫画同人誌と体裁が揃っているので保管・整理をしやすい、印刷屋さんでもプランが豊富、コピー本も作りやすく、一般的という点で利点が多く、導入としてまずA5という方が多いと思います。
(後述になりますが、文庫・新書ではページ数がかさみ過ぎるためにコスト的にA5で出すという選択もあると思います)
しかし、小説本ならではというサイズで文庫、新書という選択肢もあります。
現在印刷屋さんにおいては価格設定が「B5、A5(と、それ以下)」という所が多いです。そのため新書・文庫にするとページ数が増えるけれども印刷代はA5料金設定でそのまま加算、ということになっています。
中にはA5と、新書・文庫を分けて料金設定してくださっている所もありますが、それでも今は、まず、「いつも使っている印刷屋さんに文庫・新書のパックはあるか」「新書・文庫のサイズを受け付けてくれるか」ということをリサーチするところから始める傾向にあります。
A5だったら80ページ前後で済む本でも、文庫にすると160ページ程と、ほぼ倍のページ数になることもあります。つまり極端な話、同じ文字数でもかなりの印刷代が上乗せされてしまうのです。
それでも新書や文庫で小説本を作りたい、という文字書きさんが増えてくれば、新書・文庫の料金設定をして下さる所が増えるのではないかと思っています。
印刷屋さんの事情もよく分かりますし、製本を一冊ずつする手間を考えれば、A5も文庫・新書も同じじゃないかという意見もあると思います。
でも、B5・A5の料金設定があるのなら、A6・文庫・新書の料金設定ももっとあってもいいと思うのです。
200ページ、250ページの厚いものから薄いものまで、新書・文庫本を手軽に印刷できるようになって欲しいなと思っています。