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No.1572863959 昇華

全体公開 4637文字
2020-06-15 16:23:19

哲学人「昇華」の研究データ

名称:昇華 sublimation

能力:破滅的行動・欲求の代替化
 能力暴露者が暴動等・問題とされる行動をしていた場合、「気変わり」によって安全な行動へと代替される。また、能力暴露者が問題行動をしたいという欲求を持っていた場合も、それを経由した「代替案」を思いつき沈静化する。

解説:当哲学人は視認可能な心理学系哲学人です。金髪で肌はアジア系とされる色合いをしている少年であり、5~8才程度の身体能力と学習能力、対話能力をもちます。背からは他防衛機制哲学人と同じように、逆向きになった鳥の翼が生えていますが、本人はあまり出したがりません。骨の部分に手のパーツをつけて、ロボットアームのようにしている姿を好んでいます。背中にはとある「機械」(*1) があり、当哲学人はこれによって欲求を変形させると語っていますが、詳細は不明です。
とある人形をよく持っており、人間の子供と同じように、ごっこ遊びに勤しんでいます。(*2)

(*1)
横にすればウサギに見えなくもない機械です。本来ハリボテであり、鉄の外面以外はなにもありません。作動するようには見えませんが、哲学人が物を入れる仕草が目撃されています。

(*2)
「ドロシー」と名付けられたピンクの髪の人形です。子供のごっこ遊びと同じように、挨拶を求められます。「会話した」という証言が出ていますが、証拠不十分です。
対応:精神世界を移動する特性上、収容不可能。発見次第説得と記録を行う。

発見経緯:
■■■■/■/■■ 
■■研究員がスクラップ工場の通報を経て確認。巨大なおもちゃの城と、従業員のそばで遊んでいる当哲学人を確認。この際、従業員は数日前からクーデターを検討していたと証言し、その後離職している。



記録

発見前、発見工場の別の場所にあった防犯カメラにて。尚、発見の数ヶ月前である。

従業員:「おい、ぼく?」
哲学人:「んー」
従業員:「ここ危ないんだぞ。どっから入ったんだよ、ほら、連れてくから帰んな。」
哲学人:「でも、ぱーつほしい。」
従業員:「何だよ、ここにあるのはゴミなの。ゴミ。はいはい。乗った乗った。」
哲学人:「やだ、ゴミじゃないよ。こんなにいっぱい。」
従業員:「……っせぇな!ゴミって言ったろ!このガキが!」
哲学人:「わ。」
従業員:「なっ」
???:「(鳴き声とも呼べる声。監視カメラには映っていないが、従業員も何かが見えている様子)」
哲学人:「あげて。」
従業員:「何だよその、気持ち悪い……
哲学人:「ゴミじゃないよ。まって。いれて。」
従業員:「ったくなんだよもう……ほらよ。」
物が入る音。
哲学人:「んふ。ぴっ。がー、がー。がちゃん!……はい。もらって。」
(スクラップ工場にある普通のパーツに見える。)
従業員:「…………できたって、何が。」
哲学人:「どーぞ。」
従業員:「………
     はい。……なんだ?
     ありがとう?」
哲学人:「んふ、どういたしまして。」
従業員:「なぁ。」
哲学人:「なーに、おじさん。」
従業員:「工作、好きか?」
哲学人:「うん。」
従業員:「ここら辺のパーツ。」
哲学人:「ん。」
従業員:「こうやってな、もともとくっついて       
んだよ、貸してみ。」
哲学人:「うん。」
従業員:「……
数分間、従業員はパーツを使って元々のパイプを組み立てる。
従業員:「ほらよ。するとな、ここから水や、油を通して動かせるわけだ。」
哲学人:「おおー!」
従業員:「なんだボウズ。こういうの好きか?」
哲学人:「うん。おじさんも?」
従業員:「そりゃーボウズくらいの時は、そりゃ、そんな感じだったよ。図鑑とか見てさ。飛行機とか車とか、そういうのも、全部こんなパイプを使ってんだ。な?」
哲学人:「ひこうき。くるま。かっこいいのだ。」
従業員:「そうだな。そうだ。そうか。そのために来たのか。え?」
哲学人:「うん。ねぇ、またつくって。」
従業員:「おっ、いいぞ、今度は、そうだな、もっと動きそうな形に近づけるか。」
哲学人:「うん。」
(数時間後、顧問が見回りに来たと思われる)
従業員:「おーい、ボウズ。できたか。」
哲学人:「うん。こっち、てつだって。」
従業員:「おっ、いいぞ。」
顧問:「おい!(従業員名)!何やってんだ!」
従業員:「あ、すみません!」
顧問:「サボってると…………って、お前、すげえなそれ。」
従業員:「……はい?」
顧問:「俺の見回りが甘かったとはいえ、2時間だよな?お前さ、そんなすごいもん作れるのか!あ、でもサボりはダメだから始末書は書けよ!給料はオマケな!」
従業員:「……えっ、あ、はい。ありがとうございます?」

従業員:「……あれ、俺、一人で作ってたのかこれ。」
従業員:「……。」
従業員:「案外悪くないな。」



■■■■/■/■■ 
■■研究員がスクラップ工場の通報を経て確認。巨大なおもちゃの城と、従業員のそばで遊んでいる当哲学人を発見した際の記録です。

研究員:「失礼しま……おおお。」
責任者:「おお!来てくれましたか!■■研究所の方ですよね?」
研究員:「はい、本日はよろしくお願いします。……これが、あの」
責任者:「そうです!いやはや、壮観なんですよ。なんでこれをここに作るんだと叱りはしたんですが、そしたらなんと、号泣されてしまいまして、子供を退かそうにも、待ってくれと言われるものですから。」
研究員:「その従業員さんは、どちらに?」
責任者:「こいつです、ほら、しっかりしてくれ」
従業員:「(すすり泣き)」
研究員:「……大丈夫ですか。」
従業員:「……あぁ。………ゆっくりには、なる、けど……たぶん」
研究員:「無理はしないで。……何があったのか、とりあえず、説明できますか?」
従業員:「……ありえないのかも、しれない…………でも、ちびっこが、いつのまにか……クレーンの横に座ってた。危ねぇだろ。………終わりの前でもクビになりたい奴はいないから、俺も……そりゃ怒った。…………したら……したらよ、……(すすり泣きが嗚咽になる)」
研究員:「……落ち着いてください。」
従業員:「落ち着いてられるかよぉぉ……俺は……おれは死ぬつもりだったんだよぉ!!憎い政府に!突っ込んで!!!!!なのに、なのによぉ!!!!なんで、こんな時に……
責任者:「お前……。」
研究員:「……どうしたんですか、あの子は。」
従業員:「あいつはなんなんだ!!!おじさん、って、…………急に自分ごと、気持ちごと捨てたくなって……思い出しちまった。小さい頃の、お城……馬鹿みてえに、さぁ!!!オレは、もう!終わりだったのに!終わりで燃えて全部消えるはずだったんだ!なのに……あのガキと話してたら、いつのまにか……余計なこと思い出しちまったじゃねぇかよ!どうしろっていうんだよ!」
研究員:「……そうですか。急に現れて、復讐心が薄れて、お城作りに没頭することになったと……
責任者:「……(従業員の名前)さん。」
従業員:「なんだよ、もう終わりだろ!見損なったろ。終わりだ!」
責任者:「いや、そこまで追い詰められてるとは思ってなかったんです。……一回相談しましょう。」

(研究員、スクラップの城の側に残る当哲学人を発見。)
研究員:「こんにちは。」
哲学人:「……どろしーにも、こんにちは、して。」
研究員:「ああ……ドロシーちゃん、こんにちは。」
哲学人:「……こんにちは、だって。こんにちは。」
研究員:「君は、哲学人だよね?」
哲学人:「うん。おにいさんは、けんきゅうじょのひと?」
研究員:「ああ、知ってるのかな。」
哲学人:「うん。きいた。にいさんたちがおしえた。」
研究員:「お兄さんも知ってるのかな。」
哲学人:「うん。ぼく、「しょうか」。」
研究員:「名前?……「昇華」かな?」
哲学人:「うん。」
研究員:「……ってことは「防衛機制」かな」
哲学人:「そう。あ、お兄さん」
研究員:「ん、何かな」
哲学人:「おでこ」
(哲学人がおでこからつまむと、小さな何かが出てきたと当研究員は語っています。)
研究員:「……これは?」
哲学人:「お兄さんの、「それ」。」
研究員:「なるほど。たしかに少し「なくなった」みたいな気分だ。」
哲学人:「研究員さんは、今は、ちょっと、だ。うん。入れる。」
研究員:「分かった。見てればいいかな」
哲学人:「そう。」
(研究員は、機械はそれを入れたときにLEDが光り、稼働音がしたと述べています。その後、下から何かが出てきたそうです。)
哲学人:「できた。」
研究員:「おお。これは何かな。」
哲学人:「答えて。」
研究員:「たしかに。この仕事にやる気が出たね。なるほど。」
哲学人:「そゆこと。持ってって。」
研究員:「うん、ありがとう。」
(研究員は、それを子供からもらったミサンガのように見えたそうです。)
哲学人:「んじゃ、ぼくをみおくって。」
研究員:「そうか。もしよかったら、研究所にも来てくれるかい?」
哲学人:「もちろん。よんで。じゃね。」
(哲学人は「消えた」そうです。)



インタビュー記録
哲学人「超自我」に彼について聞いたインタビューの記録です。


研究員:「こんにちは」
超自我:「はい。こんにちは。はい。質問に答えればいいんですね。」
研究員:「そうです。では、早速。
哲学人「昇華」は、いつ生まれたんでしょう。」
超自我:「わかりませんが、最近防衛機制が出てきてますから、その余波でしょう。」
研究員:「そうですか。彼はあなたたちと同じように無意識を経由していると」
超自我:「その通りです。」
研究員:「彼の見た目は、貴方に少し似ていますね。」
超自我:「「昇華」自体、俺の規制でひっかかるものの処理ですから、当然。」
研究員:「そうですね。あの機械はどのようなものなんでしょう」
超自我:「詳しくは知りませんが、無意識的に動いています。彼自身の能力です。」
研究員:「というと、別の心理学系哲学人では動かせないと」
超自我:「ご覧の通り、俺が触ってもハリボテなので。」
研究員:「そうですか。能力等に誤差はありませんか。」
超自我:「ええ、だいたいあってるでしょう。」
研究員:「よかった。ところで、あの人形についてなのですが。」
超自我:「ああ、ドロシーちゃん、ですか」
研究員:「ええ。あれは、話してるんですか。」
超自我:「もちろん。まぁ、無意識でないなら聞き取れないことも多いでしょう。中途半端な人や、不安定な場合は聞き取れるかもしれません。」
研究員:「そうですか。……あれは、哲学人ですか。」
超自我:「…………まぁ、そうとも言えるのでは。」
研究員:「というと。」
超自我:「……本人に聞いた方がいいと思いますけどね。というか、予想つくんじゃないですか。」
研究員:「……。」
超自我:「その通りですよ。「足りないし出来ないことを、別のやり方にして補おうとしている」わけです。
……「ドロシーちゃん」を、無視しないであげてくださいね。」
研究員:「わかりました。以上で終わりです。ありがとうございました。」


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