クラエアファンネット:【Flower Week】ガーベラ
@tomo27vt
ミッドガルのスラム街では存在すら珍しい生花も、外に出れば随分と見る機会が増えた。
例えば荒野にひっそりと咲いていたり、訪れる街の人々が育てていたり。
種類も様々で、生花そのものが貴重品とされるスラム街の荒廃振りが伺い知れたが、その貴重な生花を育てていた花売りはというと、現状を素直に楽しんでいるようだ。
花を見かける度に近寄っては、そっと屈んで鑑賞する姿は旅でよく見る光景にもなっていた。
得体の知れない敵を追う旅は、不穏と不安がつきまとい、時に暗い感情に支配されそうになる。そんな時に花を愛でる余裕は一服の清涼剤になるらしい。最初はエアリスを遠巻きに見ているだけだった一行も、旅が進むにつれて一緒に鑑賞するのも珍しくなくなっている。
クラウド自身は癒し云々よりもどうにも危なっかしいエアリスを放っておけない気持ちの方が強かったが、どちらにせよ花を見る機会は増えていた。
「あ!」
今回立ち寄った町はあまり大きくなかったが、行商人が定期的に来るなど商流はきちんと確保されており、物資の補給面では問題はなかった。
道具屋から宿屋に戻る道中、声を上げたエアリスは軽やかな足取りで街路の傍らに駆け寄っていく。中腰で何かを見やる彼女の後に続いて見れば、そこには花壇が置かれており、オレンジ・ピンク・黄色、と色鮮やかな花が並んで咲いていた。
「かわいいね」
「ガーベラか」
「正解!クラウド、花、詳しくなったね」
「あんたが色々と教えてくれるからな」
「ちゃんと覚えててくれて、嬉しい」
道中での花の鑑賞の際、エアリスはその花の名前や豆知識などをよく披露してくれる。
エアリス以外だとティファがポピュラーな花の名前や花言葉について知っている程度で、一行のほとんどの面々が花について語れるほどの知識は持っていない。
花を育てるにあたって書籍などで勉強した際に得た知識だというが、一目見ただけで何の花かをわかるに留まらず、流れるようにそれに関する知識が出てくるのは相当な努力が要ることだ。知識量をひけらかすでもなく、他人に抵抗感がない程度に教えられる匙加減の上手さには内心舌を巻いている。
ガーベラは行く先々の街でよく見かける花だ。何度も聞いたからこそ覚えたのだが、それだけで微笑んでくれるエアリスを見ると、クラウドも少しばかり嬉しくなるのを抑えられない。だから、名前だけでなく、豆知識についても口をついて出てしまった。
「色によって花言葉も違ったんだったな」
「そう!オレンジは“我慢強い”、ピンクは“感謝”、黄色は……」
「“究極の美しさ”」
「すご~い!」
目を輝かせて軽く拍手すら送ってくれるエアリスに、クラウドは嬉しくなるも照れの方が勝り、顔が紅潮するのを自覚して、たまらず視線を逸らす。中腰になっていたエアリスが立ち上がって下から覗き込んでくるのを視線で感じて、逃れるように歩き始めた。
「大袈裟な言葉だから印象に残っていただけだ」
「究極、だもんね。でも、すごい!教え甲斐あるなぁ」
「光栄だな」
隣で歩くエアリスを横目で見れば、鼻歌すら歌いだしそうなほどに満面の笑みだった。
以前エアリス自身が教えたことを披露しただけだというのに、随分な喜びようだ。皮肉の一つも出しそうになるが、喜色満面の笑みを見ているとへそ曲がりな言葉は消え失せてしまう。自分の気持ちの居心地の悪さより、彼女の笑顔が陰る方がどうにも勿体ないように感じられたのだ。
「ガーベラ、だが」
「うん」
「花びらの付き方にかなり種類があるように見える」
「品種改良進んでて、形、いろいろなの。色もいろいろあるよ」
「確かに、前に見たのは紫だったな」
話を進めれば、また別な知識を披露してくれる。
その顔はやはり笑顔だが、常よりも無垢で幼くも見えるその顔は喜んでいるように感じられた。
同時に自分自身の胸にも温かさが広がるのを感じ、クラウドは今少し花の知識を深めていこうと頭の片隅で決意するのであった。
一緒に見る花
(FF7無印:クラエア)
2020/6/20