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子供たちの英雄(FF7R:クラエア)

全体公開 FF7(クラエア) 1 2228文字
2020-06-27 23:11:23

ワンライお題「子供たちの秘密基地」

Posted by @tomo27vt

伍番街スラムには、スラムの住人の子供たちが各々で知恵を出し合って作り上げた秘密基地がある。大人は立ち入り禁止だが、何事にも例外は出来るものだ。
唯一出入りを許された大人の一人であるクラウドは今、子供たちが作り上げた“訓練”に参加を許され、挑戦している所であった。

「クラウドー!ファイトー!!」

もう一人の大人のエアリスは参加しない代わりに、スタートからずっと声援を送り続けている。黄色い声援に、大剣を振るうその音がより力を増したように聞こえるのは気のせいだろうか。
スタート地点ならばともかく、ボックスを破壊し続けたクラウドは今や、奥の水辺近くまで到達しており、位置の確認はほとんど破壊の爆音頼りだ。ほとんど姿も見えない距離の上、爆発音が絶え間なく鳴り響く中では、いくらソルジャーとは言え聞こえるものでもないと思うので、きっと気のせいだろうとムギは心中で結論付ける。

「クラウド、すごぉーい!!」
「新記録出るんじゃないか?」
「さすがだよね」

顔を紅潮させてはしゃぐ子供たちと並んでクラウドの雄姿を見守るエアリスは微笑んでいた。
ムギや他の子供たちにもいつも笑顔を絶やさないが、その笑みとはどこか違って見える。何なら、リーフハウスの先生や他の大人たちと会話している時の笑みとだって違う。
これは気のせいではないはずだ。

(だってあんな目、他の人にはしないもんな)

翠の瞳はいつもキラキラと輝いて見えるが、今日はその輝きが一段と増していた。
いつもはもっと凪のように穏やかで、まっすぐこちらを見つめているはずなのに、時折、ぞっとするほど遠く感じることもある。これは瞳だけではなく、エアリス自身にも感じていることだ。
リーフハウスの先生のようにあたたかいのに、他のどの大人よりも壁を感じていた。子供たちの秘密基地の場所を教えても、そこに立ち入ることは決してなかったように。
その瞳が今日は、星のように輝き、熱っぽく潤んでさえいたのだ。そして、ただ一人をまっすぐに見つめていた。勿論話している時はこちらをまっすぐ見つめてくれているが、そこにあの熱はない。彼女に熱を灯しているのは、彗星のように現れて、ムギのみならず子供たちの心を掴んでしまった、あの男に他ならなかった。

「おー!新記録だー!」
「クラウド!おめでとー!」

笛の音とともに訓練が終了し、叩き出された点数に子供たちが歓声を上げて盛り上がる。
それは見たこともない数字で、否応なく、クラウドとの差を感じざるを得ない。
わかっていることの筈なのに、ムギは胸の奥がよりキュッと締め付けられるように感じた。

「ムギ?どうかした?」

かけられた声にハッと我に返ると、エアリスがこちらを覗き込んでいた。
声掛けで力が抜けて初めてムギは、自分がシャツの胸元を握りしめていることや、顔に妙な力がこもっていたことに気付く。

「あ、いや……クラウド、すごいなって思ってた」
「うん、すごい。ムギたちも、負けてられないね」
「、うん、そう、そう。負けてられないな」

言葉にしてから、ムギは自分の気持ちを自覚した。負けたくない、そう、負けたくないのだ。
戻ってきたクラウドに子供たちは駆け寄って集まり、スゴイスゴイと称賛の声を浴びせていた。
今は素直に彼を讃えているが、少しすれば彼の記録を越えるために奮起するだろう。実際、ムギは格差に苦しくなりながらも、それでも彼を越えたいとも感じている。
元々これは“訓練”である。少しでも自分たちの力を高めて、自分たちの街を守る力を得るための訓練だ。自ら自信を鍛えようという気概を持つ子供たちは、圧倒されるばかりではない。
称賛の声にクラウドは少しばかり笑みを浮かべているが、踏ん反り返って偉ぶるようなことはなかった。力ばかりでなく、謙虚な姿勢というのも見習うべきだろう。

「お疲れ様、クラウド」
「ああ……すまない」

エアリスから手渡された水筒を受け取ると、クラウドは汗を腕で拭って、勢いよく飲み始めた。その勢いの良さに一気に飲み干すかと思われたが、程なくして口は離れ、ふぅとため息が漏れた。
ポーションではなく水を選択したエアリスの判断は正しかったらしいと感心していると、ムギはクラウドがじっとエアリスを見つめていることに気付く。
エアリス自身も視線に気付いたらしいものの、理由がわからないのか見つめ返して、小首を傾げていた。クラウドは手に持ったままの水筒を軽く掲げる。

「あんたも、飲まないのか」
「どうして?」
「結構声を出していただろ。普段はあんなに声を張り上げていないんだから、水分は補給した方がいい」

言ってからそっと差し出される水筒を、エアリスはきょとんとして見つめる。水筒とクラウドを一往復する視線に、クラウドは眉間に皺を寄せた。
もしかしなくても、クラウドは気づいていないのだろうか。これはいわゆる……
知らず緊張するムギの隣で、エアリスはふふ、と小さく笑った。

「?何だ」
「ううん、なんでもない。ありがと、クラウド。でも、わたしは大丈夫。
だから、クラウド飲んで?」

受け取らないでいるエアリスに無理強いすることはなく、クラウドはまた水を飲み始める。
ちらりと隣を見上げると、視線が合ったエアリスは微笑みながら、人差し指を口元に当てた。


子供たちの英雄(FF7R:クラエア)
2020/6/27
@tomo27vt


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