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[圭P♀]指先のリズム

全体公開 1 1777文字
2020-07-05 14:27:49

「つ、都築さん、って……運転、できたん、です、ね……?」
……うん?」
都築さんが運転できると思ってなかったPさんと都築さんがドライブデートするお話です。

Posted by @toasdm

 流石に運転中に寝てしまうようなことはないだろう、とは思っていたが、そもそも圭が運転免許を持っていたという事実だけで彼女は驚いていた。
……
 それに付け加えて、顔写真付きの身分証明書みたいなものだよ、とペーパーでもおかしくないと思っていたのにこうしてちゃんと運転が出来て、あまつさえ、カーナビの指示に従ってきちんと目的地への道を間違わずに曲がったりするのだから、その驚きっぷりをどう隠してよいものか、彼女は三周くらい回って冷静に考えていた。
「酔ってしまったかな?」
「え、あ、いえ、そういうんじゃ、ないんです、けど……全然大丈夫です」
 ご本人には言えない。都築さん運転できたんですね、は言えたとしても、カーナビの指示を「ふぅん、そうなんだね」とさらっと流すんじゃないかと思っていました、だとか、「ああ、今の角を左だったのかな?」とテンポのずれたドライビングになるんじゃないかと思っていました、だとか、そんな失礼なことは言えそうにない。
「ちょっと、給油するね」
 あまつさえ、ガソリンスタンドに入っても、こんなに堂々とスマートにしているなどというイメージは、少なくとも彼女の中にはなかった。給油口がある方向を間違えなかったり、店員が近づく前に給油口を開けたり、要所要所に運転慣れしたスマートな大人の所作が現れている。彼女は聞き慣れたいつもの圭の声で「レギュラー満タンで」を聞く日がくるとは夢にも思わなかったのだ。給油口を開けるつもりがボンネットがばたん、と開いてもおかしくないとすら思っていたのに、もう驚きすぎてなにがどうなっているのかわからない。
「ありがとう」
 要は、さまになりすぎていて、格好良すぎて脳が処理しきれていない。給油を済ませた圭の車は、再び車道へとなめらかに戻る。

 格好いい。わけわかんない。なにこれ。

 混乱した彼女の様子がおかしいことに気付いた圭は、信号待ちでギアをパーキングに入れると、彼女の方をじっと見つめる。
「ねえ」
「はひぇっ!?」
「どうしたの?」
 心配そうな顔をさせてしまった申し訳無さで、あぅ、と口ごもりながら、彼女はとうとうぽつりと漏らしてしまった。
「つ、都築さん、って……運転、できたん、です、ね……?」
……うん?」
 どういうことかな、と小首をかしげる圭に、どう説明したら失礼に当たらないだろうか――彼女は自分が考えていることが大変に失礼なことだというのを理解した上で、慎重に言葉を選ぶ。
「あの、なんか、ふわっとしたイメージ……の、話なんですけど」
 いやこれどう頑張っても失礼にならない言い方無理じゃないかな!?とやや開き直ってきた辺りで、信号は青へと変わる。おっと、とギアを戻したその仕草の男らしさに、彼女は内心、ひぇぇ格好いい、と悲鳴をあげていた。
「なんかほら、ガソリンスタンドで給油口開けようと思ったらボンネット開けちゃったりとか、そういうことがもしかしたらあるかもしれないって思わないでもないっていうか――
 ああだめだ、何言っても失礼だ、と頭を抱えた彼女の隣、圭はくすくすと笑いながらハンドルを握っている。
「ふふふふ……どうしてだろう、ね。なぜかよくそんなことを言われる気がするよ」
 プロデューサーさんもかい?と言われ慣れたような反応を返す圭が気にしていなかったことは救いだったが、いたたまれなさはなかなか帳消しにはならない。うぅ、と唸りながらちらりと横目で見てみれば、圭は鼻歌を歌いながら人差し指でトントン、とハンドルを叩いてリズムを刻んでいた。

 ――あ、これだけは、想像通りだった。

 今日はデートに出かけようか、と車で迎えに来た圭の、運転しているところを想像するにあたってなぜかこの光景だけは、なんとなく想像ができていた。
「ふふふ……っ」
「うん?」
 今度はなぁに、と尋ねる圭の横顔は楽しそうで、少し開けた窓から吹き込んでくる風は圭の艶めく髪の毛をなびかせて、その横顔をキラキラと縁取っている。
「いいえ……っふふふ、都築さんとドライブデート、楽しいな、って思っただけです」
 そう、の返事は嬉しそうで、後は車内に楽しそうな圭の鼻歌が流れる。どこかで聞いたことのあるような楽しげなメロディーと指先のリズムが、オフの日の二人を海へと運んでいった。


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