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芽吹き育ち、熟れ落ちる

全体公開 3904文字
2020-07-09 17:45:42

AC3軸、デズモンドとご先祖書きかけ。続く。多分。

Posted by @acbh_dmc4

アニムスにより先祖の人生を追体験するうち、俺とご先祖たちの記憶が頭の中で渦を巻き、常に鬩ぎ合っている。
それは不快で時には苦痛を伴うものだが、それでも必要な事なのだと自ら

これはアルタイルの記憶だったか、それともエツィオか、いいやこんなに現代的な風景で建物をかけているのは俺、デズモンドの記憶だったか。
己が徐々に別人に作り替えられていくような、それとも元の自分を取り戻しているかのような奇妙な感覚。
時折悪夢に魘され、周りが心配そうに俺を気遣っているのが分かる。
ああ、息が詰まりそうだ。
久しぶりにアニムスから出て、気晴らしに体を動かしがてらこの遺跡の探索をする。


「しかし子孫とはいえ、記憶の一切を見られるなんて、想像するだけで俺自身が穢されていく気分になる

アルタイルもエツィオも見ようと思って見た訳ではないが(だ、断じて!)濡れ場だってばっちり見てしまっている。
性的なものとかトイレなんかは一番人に見られたくない事の筆頭だろうに。特にエツィオなんて数々の美味しいシーンを何度も何度も
少しだけ苛っとしてしまうと、急にクスリと何者かの笑む声が聞こえた気がして振り返る。
振り返った先には半壊した先駆者の遺跡の残骸が転がっているだけで、ジュノーの姿の一つも見受けられない。
そもそも女性の苦笑の声ではない気がするし、どこか懐かしいもののように思えた。
ああ、クレイやクロスほどではないにしろ、今の俺はアニムス漬けでさながらジャンキーのよう。薬中のように幻覚どころか幻聴まで聞こえてくるなんて終わってる。やれやれ、俺の心はいつまで耐えることが出来るのだろうか。

気分転換に先駆者の遺跡の中を探検しているが、やはりこの空間は気が滅入る。
キューブ型の燃料を格納する古代の機械に腰を下ろして一休みする事にした。


『予言の時が近づいている。この世界の破滅の時が。今こそ、ミネルヴァから託されたこの神殿を活用する時だ』
『だが、起こりえる惨状を回避する方法を託された訳ではない。予言を授けられても成す術がなければ、なんの意味もない』
『最早遅すぎたと言うのか―――アルタイル』

ハッと我に返って辺りを見まわした。
遺跡内をうろうろと探索しているのは俺一人。
皆はアニムスの調整や俺が追体験したコナーの記憶の解析につきっきりで、天井近くにあるこの施設の動力源の格納装置の近くには誰も居ない。
しかし、耳元ではっきりと聞こえた男たちの会話は妙に生々しくて、つい今しがた俺の目の前で議論が交わされたように感じた。
流入現象というのはアニムスなしで記憶が蘇る事だとショーンは言っていた。先程のように記憶の中の者達が勝手に話し始めるということは聞いていない。
それとも異なる時代の記憶が、偶然会話のように繋がっただけだろうか?
そう己の考えを纏めていると、予告も無くグラリと視界がブレて、急な頭痛に襲われ思わず膝を着いた。
世界がグラグラと回る感覚を覚えて、己の体をどうにか支える様に腕を着く。
何時だったか、エツィオの記憶をたどった時、アルタイルの記憶が流れ込み、気がついたらベッドで目が覚めた事があった。
あの時俺は通路で倒れていて、ルーシーやレベッカが俺を見つけて運んでくれたのだと、あの後散々文句を言われた。
あの時と同じようにこんなところで倒れたら、今度はもっと文句を言われるかもしれない。なんせ、ここは何個も壊れた壁やら梁をよじ登った先にある場所なのだから。
なんとか熱を持つ頭を冷まそうと、深呼吸を繰り返す。
こうしてまだ意識があるのだからきっと大丈夫。一時的な流入現象で、また昏倒してしまう事は避けられている筈だ。


『大丈夫か?デズモンド。顔色が悪い』

早鐘を打つ心臓を落ち着ける様に胸に手を当て、じっと耐えていると、父さんの心配そうな声が近くに聞こえた。
ああ見えてアサシンの長だし、幼いころ俺を鍛えたのはあの人だ。
いつの間にか姿の見えない俺を探しにこんなところまで登って来たのか。スーツであの崖のような壁を登って来るとは意外と器用なもんだ。
なんとか他所事を考えられるようになるまで気分が落ち着き、ゆっくりと瞼を上げた。

「あ、ああ、大丈夫少し眩暈がしてもう平気だよ、父さん

そう言って顔を上げれば、父さんにどことなく面差しの重なる壮年の男が目の前に膝を着いて俺の顔を覗き込んでいた。
年のころは俺より少し上といた所か、白い見覚えのあるローブを纏い、濃い髭を蓄え、唇に俺と同じ傷のある腹が立つほど整った顔の男がそこに居た。
驚いて思わずその場から飛びのいて尻もちをつけば、男は面食らった顔をして俺を見つめた。

そこまで動けるのなら大丈夫そうだな。気分はどうだ?』

慈愛の籠った余裕のある顔で薄く微笑み、俺の身を案じてくれる。
その姿は、どう見ても記憶にある500年前のご先祖様の若りし頃で、また追体験していた時には拝めなかったエツィオ・アウディトーレ本人の顔だ。
その精悍な顔は、老年期の歳のいったエツィオにどことなく面影があるし、なにより見覚えのあるまるで聖職者のような白いローブから彼であると窺い知れた。

『はは、そんなに見つめられると照れるじゃないか、デズモンド。俺の顔に見惚れてないで、少しこちらで話そうじゃないか』
「べっ、別に!見惚れてなんか!」

目の前のご先祖は揶揄うように笑うと、元々座っていた燃料の格納庫をポンポンと軽く叩いた。どうやら、座れと言う事らしい。
おずおずとその指示に従い、引けた腰をそこに落ち着けると、エツィオは満足げに笑い、優雅に一礼して自己紹介を始めた。

『もう気付いているとは思うが、俺はエツィオだ。エツィオ・アウディトーレ。君とずっと話をしたいと思っていた。それから

エツィオは自分の背後を振り返ると、もう一人、これまた物凄い見覚えのあるローブを身に纏ったアサシンを紹介するように片腕を上げ、俺に見やすいように身体をずらした。

『こちらが我らが伝説のアサシン、アルタイル・イブン・ラ・アハドだ』

とてもいい笑顔でそう紹介してくれるエツィオに、呆れたようにアルタイルがジト目を送り、不機嫌そうに腕を組んだ。

『それとも死の天使と言ったほうがよろしかったでしょうか?』
『おい。その二つ名で呼ぶな。殺されたいか』
『そんなご謙遜を。チャーミングな通り名ではありませんか。俺は好きですよ』

剣呑なオーラを放ちながらエツィオの軽口に本気で嫌そうな顔をするアルタイルを俺は呆然と見つめる。
彼の姿も、エツィオの記憶の中の記録(ややこしい)で知ってはいたが、年のころは俺と同じくらいだろうか。
俺が一番初めに彼の記憶を追体験した頃辺りの見た目である。
細面で気難しそうな顔に意外と筋肉質な体つきをしている。彼が纏う真っ白のローブは、やはり聖職者のようで、エツィオと並ぶとまるでペアルックだ。

こ、これはこれも流入現象というやつなのだろうか??
ご先祖たちが目の前に現れて俺に向かって自己紹介をしている。今までにあった誰かの記憶のフラッシュバックとは全く違う、これは早々にショーンかレベッカに言って病院かアサシンの医療チーム(なんていう物があればの話だが)に行った方が良いのだろうか。
いいやそんな時間は今はないのだから、さっさとアニムスに戻り、事を終わらせてから頭の検査をした方が良いんだろうな。
っていうか、この異常事態がすでに起こっているのに、事が終わるまでに俺の頭は持つのか?!

『おーい、デズモンド。大丈夫か?一人でブツブツ話してないで、一緒に問題を考えよう。少しでも俺たちがお前の助けになる』
『エツィオ、急に我らが現れて混乱しているのだろう。暫し落ち着くまで待ってやれ』
『ええ、そうなんですが、漸くデズモンドに逢えたので早く話してみたくて』
『お前は一度彼に会いに行っていたではないか』
『まぁ、そうなんですけど。やっと声が届いたのですよ!それにこれきりかもしれないではないですか』

ニコニコと嬉しそうに俺に視線を向けるエツィオに、今までまじめに考えていたことが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
まぁ、どうせ考えても答えなんて見つかる訳でなし、とりあえず構って欲しそうにしているエツィオから話を聞いてみるのも良いかもしれない。
未だ動揺はしているが、緩く息を吐いて彼らに話しかける。

「な、なんでアンタ達が今俺の目の前に現れたんだ?これも流入現象って奴なのか?」

始終落ち着き払い、エツィオの様子に呆れた視線を投げかけていたアルタイルが俺に向き直る。
どうやらアルタイルが説明をしてくれるようで、始終テンションの高いエツィオを黙らせて口を開いた。

『お前がモンテリジョーニのヴィラでこの男を見ただろう。アレは実際この男がお前を導いたのだ。今お前とこうして話しているのはその現象と同じだ』
『ただあの時と違って話までできるのは、恐らくここがエデンの林檎と同じような力に満ちているからなのだろう。お前は林檎を使いこなせる特異な者でもあるからな。無意識に俺たちの精神を発現させたのだろう』
「流入現象ではなく、林檎の力なのか」
『ああ。この建物に入ってから、時折ジュノーの干渉を受けているだろう?この場所は封印されているが、不可思議な力が漂っている』
「ならジュノーみたいに今のアンタらは親父たちにも姿が見えるのかな」
『いや。アレと違って我々は弱い。恐らくお前にしか見えていないだろう』


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