ワンライお題「ポーション」
@tomo27vt
野営の日は、夕食後から就寝までの間は各々の自由行動だ。
自由とは言え、開けた場所が確保されている以上には何もない荒野が広がっているだけということもあり、各々の行動は自然と決まったものになっている。
バレットが自分の右腕の銃の整備をしている傍らで、クラウドは次の日からの戦闘で使用するアイテムの整理を行っていた。メンバーの中で一番の戦闘のプロであるクラウドは戦闘の指揮を担っている。誰が何をどう装備しているかの把握も兼ねて管理を担っているのだが、なかなか面倒が多い。緊急の場合も踏まえて、各々で回復のアイテムを持つようにしているのだが、この配分を考えるのに時間を要するのだ。作業を終えた時には自然とため息が漏れてしまった。
「クラウド」
「っ、どうした」
「わたし、こんなにたくさん、ポーション持てないと思う」
かけられた声に顔を上げると、薬草を抱えたエアリスが、自身用に分配されたアイテムを指す。
今一度分配したアイテムを確認すると、明らかにエアリスの配分量は多かった。
後衛であるバレットとエアリスは元々アイテムを多めに持つようにしているが、彼の分と比較しても倍近い量だ。全体を見直していなかったことを恥じざるを得ない。
「確かに……すまない、少し配分を誤ったらしい」
「少しじゃねぇだろ、これ……」
「エーテルもかなりあるし、エアリス、これだと逆に戦いにくいんじゃない?」
「そうだね……エーテル、瓶割っちゃいそう」
「私の配分は少ないように思う。こちらにも分けてくれ」
「もう一度考え直そう」
人数が増えれば把握する情報量が増える。その分、ミスの確率も上がる。
よくある理論だが、腕前を認められて任されている以上、言い訳にはできない。
気を取り直すため額に手を当てて頭を振るうクラウドを黙って見ていたエアリスだが、薬草を傍らに置き、中腰の姿勢から軽くしゃがむ。自然と集まっていた面々も同様に姿勢を変えた。
「?」
「手伝うよ」
「おう」
「私たちも任せ過ぎてたものね」
「決まってからの把握でも問題はないだろう」
不要だと言おうとするも、あっという間に広げられたアイテムの移動が始まり、次いでティファとバレットの間で話し合いまで始まっていた。
何となく口を挟みづらくなり、開きかけた口を閉ざす。配分だけでもメンバーが増えた時点から一人で抱えるのではなく、割り振り方を各々で考える方向に考えを改めるべきだったかと反省も生じた。黙り込んでいるクラウドに、アイテムを運んでいたレッド13とエアリスがそっと声をかけてくる。
「どうかしたか、クラウド」
「いや……最初からこうすればよかったと思った」
「すごいね、今まで」
「たいしたことじゃない」
「たいしたことだよ。ありがと」
笑顔で礼を述べるエアリスに、むず痒さを覚えてクラウドは目を逸らしてしまう。逸らした先でレッド13と目が合い、ふん、と鼻を軽く鳴らされる。どういう意味かは判別し辛いが、深くは考えないことにした。
エアリスからまっすぐ向けられる感情と相対する度、眩しさとくすぐったさが胸を襲い、平静を保てなくなる。スマートに応じたいと思うのにどうにも上手くできない。
「わたしたち、もっと頼って、ね」
「そうする」
「しかし、エアリスのあの量は過剰だったな」
「ああ、エアリスは攻撃マテリアも使うだろう。いざという時に回復が使えない状態になったら、と思ってつい……」
「それ。みんな一緒じゃない?」
魔力の高いエアリスは攻撃マテリアを多めに持っているが、他の面々も相応に装備している。
アイテム不足や回復魔法が使えない時のため、“チャクラ”や“祈り”のマテリアも各々で装備もしているので、エアリスの言葉通り、全員が同条件ではあるのだ。
「俺がずっと守れるとは限らないから、過剰になっていたな……
侮っているわけじゃないんだ、すまない」
信頼は置いているものの、どうしてもエアリスには“守る”意識が強く出てしまう。
彼女とは最初の出会いから再会まで、“守る”ことに確かに縁深くはある。ただ、対等な仲間である以上、あまり良くない意識だとも考えているが、どうにも止められなかった。
「クラウド!このアイテム、個人で持つのは駄目?」
「どれだ」
ティファからの問いにクラウドは立ち上がって傍に寄っていく。
自身の考えに頭を巡らせ、そしてティファとバレットの話し合いに加わる形になった彼は、自身の言葉にエアリスがした表情に気付いていなかった。
「エアリス」
「、ん?なぁに、レッド」
「顔が赤いように見えるが」
「夕焼け、じゃないかな」
お守り代わり
(FF7R:クラエア)
2020/7/11