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プルート・イド・オキサイド 解説

全体公開 6861文字
2020-07-14 22:04:18

2019/11/04の君とUTAU日々3で頒布された文無氏のアルバム「ex-halation」(https://ayana87.wixsite.com/tokeito/ex-halation)に寄せた曲 の歌詞と解説を当日バラ撒いたままの文章でお届け

曲→https://soundcloud.com/tyoumiryou_a/pluto_id_oxide
文無氏アレンジの曲→https://ayana87.wixsite.com/tokeito/ex-halation
文無氏からもらったお題「呼吸」「生きる」

【歌詞】
ぽんこつのパレード
余儀がないよ胎土(たいど)
僕はほらの味も
わからないもんな

ね いつも       九つの似合と
いつも いつのことだ? 無数のプルートイド
螺子を巻いて      限りなくも近く
外を見せて       ひとつになれるかな


Q1.切れば漏れ出す血の透ける肌なら?
A1.どのみち姿は似通った

Q2.触れば熱巻く能もない裡なら?
A2.まるで興味もわかないみたいだ


心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。 兎にも角にも
処理と目蓋はぱっと落ちて、        自覚はないのか?
偶像に胚をそっと貸与、君はかわいそう。  錆はいつしか
問が解けたらまた明日。          深く根を結んで

一にも二にも     引導も壊もきっとないよ、君はそのままだ。
曰くはないのさ    肚裏と揺蕩(たゆた)に恋焦がれた、それは、
そう粘った 縋った  まだ見ぬ夢を、振れない指針を、
縛ったの。      居もしないなにさまを。


勘発(かんほつ)のプライド
きりがないよ傾度
僕は皿の端も
わからないもんな

ね 僕は        軽忽(けいこつ)の慈愛を
僕は だれのことだ?  隣のオキサイド
ピンを抜いて      ひとつひとつひとつ
手を下ろして      解(ほど)けていくのかな


Q�.指せば音出す仔細ない喉なら?
A�.まるで道理がわからないようだ


幻像に愛を!ざっと配当、僕はがらんどう。 弥(いや)が上にも
狐狸と火蓋は切って落ちて、        受諾がないのだ
摺動が良い、と取った芯を君は投げ捨てて、 黴はいつしか
動かす意図もないのでした。        広く柄を包んで

現(げ)にも今にも   残像よ、毎夜じっと毎夜、君はあのままだ。
思(し)惑はないのさ  澱を那由多に掻き起した、それは、
そう思った 思った  あまりに既を、素気(すげ)ない磁針を、
思ったの。      来やしないこれからを。


心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。 曲りなりにも
矩と数多はもっと濾して、         怖くはないのだ
戻道を廃、と言った禁を君は打ち捨てて、  至微はいつしか
沿い続けてはまた明日。          酷く手を刻んで

何も彼にも      言動の罪もきっとないよ、君はこのままだ。
したくはないのさ   檻と僅かに瑟(しつ)を鼓した、それは、
ああ気取った 衒った 盛りに柘植(つげ)を、告げない帰心を、
祈ったの。      似もしないさまざまを。


この擬似的な息を吸って吐いて、
君のとろくさい鼓動を模して、
僕のこころはたしか鳴動していた、いたんだ。

【別に全然読まなくていいIQ中和用のまえがき】
 きみうたおこしの皆々様こんにちは!これはべちょべちょに緊張しているある調味料。文無氏のCD見せびらかしてくれてありがとうございました!最高だよね!右脳と左脳の間に挟んでエンドレスリピートして!なんて?何を言っているかわからないと思うけれどわたしもあんまりわからないです。わたしは素面です。ところで今から文無氏のCD「ex-halation」に寄せたわたしの曲「プルート・イド・オキサイド」について解説を始めます。歌詞の全文は特設サイトがたぶん文無氏のほうで上がってると思うのでそれとか見ながらよろしくお願いいたします!解説だと細切れにしてしまうのでね……

さてこの曲を書くにおいてせびりにせびって文無氏より頂いたお題が「呼吸」「生きる」でした。なので人間の呼吸の真似事をする人造物とその人造物をより人間に近づけようとする人間の欠陥品のお話にしました。なんで?すきだったから……。今回の曲は文無氏たっての希望で旭音エマくん&朝音ボウちゃんです。わたしもだいすき!合法的におふたりで曲を作ることができてしあわせです。左が旭音、右が朝音。左が人造物側で、右が欠陥品側。ぴょんぴょんとコードの飛び出た胴体、ごちゃごちゃに積まれた機材の中で油を拭うかさついた指と不格好な設計図。それでは歌詞の解説を始めます。

【歌詞解説】
「ぽんこつのパレード 余儀がないよ胎土(たいど)
僕はほらの味もわからないもんな」
余儀とは「他に取れる方法」、胎土とは「土器や陶磁器を制作する際に原材料として使用する土」のこと。
人間の欠陥品は思い立ちました。人間として欠陥と言われるならばでは完璧を目指そうではないか。完璧を目指すには?人間を理解せねばならない。欠陥品は欠陥品ですので人間が怖くて、だから人間で人間を理解することを一番に考えませんでした。この手で完璧な人間を作り出せば人間の構造は完璧に理解できるし、更に作り出した「人間」を手本にすれば自らも完璧に近づけるろうと考えたのです。まずもって完璧とは試行錯誤の後に成るものですので、人造物を作ろうという最初の試行はぽんこつで然るべきでした。人の形さえもなさない不格好なぽんこつたちが列を成して部屋を埋め尽くします。もっと他の方法はなかったのか?なかったのです、欠陥品にはこの方法しかありませんでした。
冗談≒ほら話を理解するためには、常識や文化的バックボーン等が必要です。人間に近づくためには避けては通れないものです。

「九つの似合と 無数のプルートイド
限りなくも近くひとつになれるかな」
9つめは2006年までの冥王星、あるいはプラネット・ナイン(太陽系外縁に存在する「9番目の惑星」とされている仮説天体)のこと。プルートイドとは「Plutoid」、冥王星型天体、準惑星のこと。ここは太陽系に擬えて人間を惑星、人間に準ずるものを準惑星と重ねました。似合はそのまま似合うこと、相応しいこと。にんげんであるものあるいはそうあるに相応しいものが9つ、そしてたくさんのそうではないものたち。現行で太陽系の惑星は8つとされており冥王星はその大きさから外されました。外された9つ目は欠陥品=ボウちゃん、そしてプラネット・ナインが人造物=エマくん。失格の烙印を押された欠陥品と、これから人間になろうとしているもの。僕やあるいは君は8つの惑星の9つめになれるだろうか。

「ね いつも いつも いつのことだ?
螺子を巻いて 外を見せて」
そんな夢を語りかけますがそれは現段階では夢に過ぎず、機会は機械で、僕は僕という自我も確立していません。そんなに素晴らしいものなら早く外を、人間を見せてほしい。僕がいずれ成るというそれを。

「Q1.切れば漏れ出す血の透ける肌なら?
A1.どのみち姿は似通った」
Bメロは試行錯誤の過程です。さて肌に埋め込まれた血管を再現することはできた。ハードだけ、姿だけは人間に近づきます。

「Q2.触れば熱巻く能もない裡なら?
A2.まるで興味もわかないみたいだ」
それではソフトはどうかと言いますと、まだまだぽんこつと言わざるをえないもの。そもボウちゃんのほうも情緒について深く理解をできているわけではありません。なにしろ欠陥品であり、自身の心の向きは完璧な人間を作るにおいて参考にできないものですから。

サビはメインメロとサブメロに別れていますので、順番は前後しますがメインとサブにわけて解説します。
メイン
「心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。
処理と目蓋はぱっと落ちて、」
心臓に代わるモーターはあれ、鼓動も呼吸も不要。内蔵された内臓は人間のそれとはかけ離れていて、尚且つまだ不明瞭なもの。がらんどうと述しても間違いではありません。さてそんな中不用意に繋いだコードがばちりとヒューズを飛ばし、開きかけていた目はもう一度ふりだしに戻りました。

「偶像に胚をそっと貸与、君はかわいそう。
問が解けたらまた明日。」
偶像はここでは欠陥品が自身の理想を人格に落とし込めたもので、つまりは完璧な人間のことです。それに命をそっと吹き込んで、かたちをつくって、しかし万物は世界より貸し与えられるものでしかありません。自らのものにすることはきっとできなくて、それに関して思うならかわいそう、がいちばん近いのでしょう。こういう場合はこう、感情表出のインストールをしています。
問は本日の課題。たとえば脚が動かなかったり、うまく笑えなかったり、それを解かなければ明日=未来は訪れませんし、完璧な人間たりえません。

「引導も壊もきっとないよ、君はそのままだ。
肚裡と揺蕩(たゆた)に恋焦がれた、」
引導は渡されるもの、最終宣告をすること。肚裡は腹の中、心の内のこと。揺蕩は揺れ動くこと、揺蕩うで心を定めかねること。
命に終わりはないのでしょう、完璧な人間となりえる彼はしかし人造物であるがゆえに人間のように年を取りません。
とにかくまだ物理の腹、心理の腹含め人造物はそれらを獲得していません。それを乞い焦がれているのは人造物でしょうか、はたまた欠陥品の方でしょうか。

「それは、まだ見ぬ夢を、振れない指針を、居もしないなにさまを。」
それは何者にもわかりません。これが人の領分なのか神の領分なのか、人造物は果たして「夢を見る」のか、彼にとっては前例のないことですから指し示すものも動かず、さて、彼が信じたか、信じるべきかわからない、居るか居ないかもわからない天上のものにだってわかりやしないのです。

サブ
「兎にも角にも自覚はないのか?
錆はいつしか深く根を結んで」
欠陥品も欠陥品とはいえにんげんでしたから、なんとなく、最初から薄々感じ取っていました。完璧な人間とはなんだ?いるのか?つくることができるのか?疑問は「完成」に近づくにつれ深まります。

「一にも二にも曰くはないのさ
そう粘った 縋った 縛ったの。」
しかしいま欠陥品に残された方法はこれ、諦めてしまえばそれまで、薄目を開けて人造物はひたむきに自らと向き合う欠陥品の挙動を客観視します。天井から垂れるコード、散らばる設計図、自らを盲信する手指。

「勘発(かんほつ)のプライド きりがないよ傾度
僕は皿の端もわからないもんな」
勘発は譴責、過失を責めること。何度もの失敗、試行錯誤、欠陥品だからうまく作れないのでしょうか、どれだけなおせば完璧になるでしょうか。
ロボットには「皿」という括りがわかりません。人間が大まかに定義している皿、どれだけ大きければ皿でなくなるのか、用途が違えばそうなるのか、深さ何ミリまでが皿で何ミリからがボウルなのか、傾き度合は何度からが壺なのか。一枚一枚定義するのも膨大なデータになりますし、誤認は絶えません。

「軽忽(けいこつ)の慈愛を 隣のオキサイド
ひとつひとつひとつ解(ほど)けていくのかな」
軽忽はそそっかしいこと、軽はずみなこと。オキサイドは酸化物、ここでは酸素と置き、転じて酸素を吸って生きる人間のこと。人間は軽率にラブを振りまきますが、さてその理由は?完璧な人間もおそらくはラブを振りまくでしょう、解かねばたどり着けません。

「Q�.指せば音出す仔細ない喉なら?
A�.まるで道理がわからないようだ」
さて試行錯誤です。痛覚の話、もしくは自我の話。刺せば音を出すようにはできるでしょうが、名前を呼んで返事をされたとして、そういう動きを仕込んだだけで、そのプログラムに沿って動いただけで、それはたとえば哲学的ゾンビと何が変わるのでしょうか。

メイン
「幻像に愛を!ざっと配当、僕はがらんどう。
狐狸と火蓋は切って落ちて、」
配当は割り当て、狐狸とは化かすもの、火蓋はそれを殺すもの。
それはそうとして欠陥品は自らの幻像である完璧な人間を求めますが、自らに割り当てられたリソースは無に等しいものです。化かされた、浮かされた理想、そしてそれを切り捨てること。諦めてしまうのが結局は一番いいことなのです。

「摺動が良い、と取った芯を君は投げ捨てて、動かす意図もないのでした。」
摺動は滑らせて動かすこと。この方が動きがいいから、合理を求めて不合理を捨てますが、かなしいかな、人間は不合理の集合体です。

「残像よ、毎夜じっと毎夜、君はあのままだ。
澱を那由多に掻き起した、」
残像はここでは冥王星で、定義のほうが変わったもの。彼らは変わらずそこにあるもの。
澱とは淀み、底でいつまでも揺蕩うもの。人間の無意識、自分たちでさえ理解しきれていないブラックボックスのことであり、無数に掻き起こされてきたところで掬い切れやしません。

「それは、あまりに既を、素気(すげ)ない磁針を、来やしないこれからを。」
既説を元とした方位磁針は役に立ちませんし、それらは大切ですがそれらのみに縋っていてはどうやっても進まないでしょう。欠陥品は欠陥品であるがゆえに、なんとも理解が叶わないのです。

サブ
「弥(いや)が上にも受諾がないのだ
黴はいつしか広く柄を包んで」
ますますもって押し付けがましく理想を語る欠陥品ですが、さて、

「現(げ)にも今にも思(し)惑はないのさ
そう思った 思った 思ったの。」
実際には、そう思惑通りにはいかないものです。それでも一度抱えてしまった理想は肥大し続けますし、どうにもなりません。

メイン
「心臓も肺もきっとないよ、僕はがらんどう。
矩と数多はもっと濾して、」
矩は領分、また法律や道徳などのっとるべきもの。
再度人造物は述べます。たくさんの矩を洗い出して、詰めて、そうやったところでこの身は縛られて動くものでしかありません。

「戻道を廃、と言った禁を君は打ち捨てて、沿い続けてはまた明日。」
戻道とは道理に外れること、そのさま。人間を作ることは概ねそれに価するでしょうし、出だしから欠陥品はそれをぶっちぎっています。欠陥品はひたすら自らの倫理に沿って進んでいるだけなのです。

「言動の罪もきっとないよ、君はこのままだ。
檻と僅かに瑟(しつ)を鼓した、」
瑟を鼓すとは柱に膠して瑟を鼓すのこと、状況の変化に対応できないことのたとえ。
作られたものに罪はありません。道具であるもの、手段は常に罪の外にあるもの。がんじがらめの体内外、どう定義が変わったかもわからないまま。

「それは、盛りに柘植(つげ)を、告げない帰心を、似もしないさまざまを。」
柘植の花言葉は頑固。帰心は帰りたいと望む心、尊敬の念のこと。欠陥品が冥王星のごとく惑星ではないと貼られたレッテルを剝して自分のまま人間であると認めてほしいのです、頑固故にそう求められないのですけれど、帰りたいと一言言えば済む話かもしれないのに。

サブ
「曲りなりにも怖くはないのだ
至微はいつしか酷く手を刻んで」
至微はひどく細かいこと。完璧な人間ができるはずで、もうすぐ完璧な人間をもとにして自分も完璧な人間になれるはずだから、完璧な人間は全部全力でできるはずだ、完璧な人間ならこんなことはしないはずだ、完璧な人間なら、でも、完璧な人間ってなんだっけ?

「何も彼にもしたくはないのさ
ああ気取った 衒った 祈ったの。」
衒うとは自分にすぐれた知識や才能があるかのようにわざと見せかけること。
どうしたって欠陥品は欠陥品で、思い込んだ知識だって本当はないのかもしれません。神の領域であるがゆえに最後は祈るしかありません。


「この擬似的な息を吸って吐いて、
君のとろくさい鼓動を模して、
僕のこころはたしか鳴動していた、いたんだ。」
さて、紆余曲折を経て「完成」を見、欠陥品にひどく求められている人造物は果たして思います、思ったのでしょうか、わかりません。哲学的ゾンビであるのかないのか、中国語の部屋であるのかないのか、彼がそうであると思ったとしてそうでないかもしれない。彼に心はあるかわからないし、ただ期待の目を前に、人造物はぎこちなく、目の前の欠陥品の真似をして、自らに課せられた「呼吸」をひとつ、こなしてみせたのでした。

これはTwitterに載せたものだけれど最後にタイトルの解説
▼人間の呼吸のまねごとをする人造物の話
プルートイド:冥王星型天体。冥王星が惑星を外された「準惑星」であることから人間に準じる人造物のそれ
イド:フロイト提唱人間の精神構造を3つにわけたひとつ。本能的なもの。
快感原則に従って快を求め不快を避ける機能を有するとされるので、
恐らくはアンドロイドだとか人造物が一番最後に獲得するかできないだろうもの。
オキサイド:酸化物。転じて酸素。「呼吸」


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