X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

完全な図書館

全体公開 3702文字
2020-07-15 13:36:55

名称:完全な図書館 Complete library

能力:『バベルの図書館』と呼称される、異空間へのテレポート
 不正利用者の発話および筆記能力の削除へランダム性を付加することによる重大な機能不全。(検証不可)

解説:『バベルの図書館』および内部に存在する人型実体『司書』の総称です。
 『バベルの図書館』は無限に上下に伸びる六角形の回廊により構成されており、内部にはアルファベットのみが使用された本が所蔵されています。本の内容は全てアルファベットのランダムな羅列であり、ほとんどは意味を成していません。その広大な規模から、この図書館は基底世界ではない異空間に存在していると考えられています。
 意味のある本の位置を示すカタログが一冊発見されており、これは基底世界と『バベルの図書館』を往き来する手段として機能します。

 ■■■■/■/■■現在、スチュダート・フォスター氏のみがこのカタログを使用してテレポート可能です。スチュダート氏が望んだ場合は他者をテレポートさせることも可能ですが、その場合、図書館からの脱出方法はスチュダート氏が迎えにいくまで存在しません。また、一度図書館内で不適切な行動を起こした人物は再び図書館に入れません。

 『司書』は黒髪の成人男性です。現在当研究所で確認されている唯一の図書館内の哲学人であり、図書館の案内を役目と認識しています。図書館外に出る意思はありません。
 外部の人間に対し友好的であり、図書館内の探索、改造に協力的ですが、それらの行為が破壊を伴う場合は説得による制止を行います。
 カタログの性質については何も知らないと証言しています。しかし、図書館内で『司書』に対して不適切な行動を起こした人物が再入館不可能になっていることから、『司書』の意思が反映されている可能性が示唆されます。

 『バベルの図書館』内では未知の方法によりWi-Fi通信が利用可能です。

対応:カタログは■■大学附置哲学人研究所行動学部貴重品ロッカーに保管し、実験時とスチュダート氏の申請時のみ同研究所研究員の立ち会いの下で使用可能。
 私用の時、立ち会いの研究員は『バベルの図書館』へ移動する必要はないが、万一に備えバベルの図書館専用SNSグループの書き込みに気を配ること。

 『バベルの図書館』探索チームは■■■■■■■■■■■所属の調査員三名と研究員一名を中心とした四名以上で構成する。最長一ヶ月の探索を期限とし、探索中は『司書』の居住区からの距離をバベルの図書館専用SNSグループに記録し共有すること。

 スチュダート氏は自宅から当研究所に通学し、研究所内で年齢相応の授業を行う。
 授業後、午後八時まで実験協力が可能。
※研究所内で午後七時半を越えた場合、研究員がスチュダート氏を自宅まで送り届けること。

発見経緯:■■■■/■/■■ フォスター夫妻の行方不明事件の調査により、夫妻が『バベルの図書館』に取り残されていたことが判明。『司書』は事情を知らないと証言しており、息子のスチュダート氏がカタログを使用した際の事故と判断。
 スチュダート氏の発話能力治療と『バベルの図書館』への出入口確保のために、氏は■■大学附置抗哲科病院に入院。カタログは■■大学附置哲学人研究所に保管される。

備考:『司書』の証言によると、基底世界と『バベルの図書館』内に完全同一存在であるカタログが一つずつ存在しており、対応するカタログは同一世界に存在できません。(『バベルの図書館』内の本に同一のものは存在しないという原典の記述に由来)
 テレポートの際にカタログが『バベルの図書館』内に入ると、入れ替わりに『バベルの図書館』内のカタログが基底世界のどこかに転送されています。その時転送される位置は完全にランダムであり、捕捉されていません。

※不正使用によりカタログが少なくとも一冊消滅しています。現在■■大学附置哲学人研究所に保管されているカタログの対になるカタログは存在しません。

対話記録:■■■■/■/■■
■■研究員:インタビューにご協力ありがとうございます。まずは自己紹介をお願いします。
司書:はい。ええと、哲学人【完全な図書館】だよ。できるなら、司書と呼んでほしい。
■■研究員:はい。人間名はありますか?
司書:無いよ。むしろ私からすると、各人が呼び分けの為だけに固有の文字列を占有していることが不思議かな……なのでごめんね、人間名を呼ぶのは苦手なんだ。
■■研究員:かまいません。
司書:それで、ええと……ごめん、自己紹介って他に何を話せばいいかな。
■■研究員:では、職務についてを。貴方はこの図書館の管理者ですか?
司書:実はそうじゃない。私はここに生まれただけなんだ。そして、この生まれ故郷について少しばかり他人より詳しいから、司書の役割を担っているだけなんだよ。外から来た人を案内したり、ホールを休憩室として整えたり、図書館内の改装工事を計画したりはしているけど、図書館内の全部を見渡せない以上、管理者にはなれないよ。私の知らないところでは、私の知らない司書が居る可能性もある。
■■研究員:貴方はこの図書館の全てを知っていないんですか?
司書:無限の本を読むにも、無限の図書館を隅々まで見て回るにも、時間が足りないからねぇ。
■■研究員:……貴方は、いつ頃生まれたんですか? その当時のお話を窺ってもかまいませんか?
司書:私が生まれたのは四十九年ほど前だよ。その頃は……人が居なかったかなぁ。ここに住んでいた沢山の人達が死んで、人類が絶えた後に、私が生まれたらしい。
■■研究員:小説としてのバベルの図書館で描かれたことの、更に後に生まれた、ということですか。
司書:きっとそうだね。でも私は、この場所についての知識も、この場所に居たらしい人達の記憶も持っていた。それが真実であるかどうかは、どうでもいいことだって言っていいよね?
■■研究員:ええ。この図書館と異空間の起源が不明ですから、今は触れられません。
司書:良かった。何と聞かれても、生まれる前のことは推測でしか語れないからねぇ。
■■研究員:貴方は図書館の改造に協力的ですね。しかし、それは貴方の家と、職場と、そして哲学的本体を改造することになります。こちらが言えることではありませんが……大丈夫ですか?
司書:あはは。大丈夫、私は私として存在しているから、図書館に何があっても身体的な不調は起きないよ。それに、どんな改造が施されても、それは図書館の本の一部に手を付けたに過ぎないから。住みにくくなれば上か下の階に移動するよ。
■■研究員:内部の本に対しての、乱雑な扱いはしないようにと仰っていましたが。それも、膨大な図書館の本の一部に触れただけに過ぎないのでは。
司書:私もそう思う。本なんていくら投げ捨ててもらってもいいんだ、本当はね。破棄した本の不完全な模写が、手に届く位置にある保証はないけれど。でも、そもそもその本に価値がある保証もないのだからね。
■■研究員:では、何故?
司書:昔、仲良くしてくれた人が居てね。その人は本が好きだった。あの子が再び現れたときに、目に見える位置の本が減っていたり、汚れていたら申し訳ないから。
■■研究員:その人物は、今どちらに?
司書:うーん、私は物理学には詳しくないんだ。なのでどこに居るかは君に委ねたい。
■■研究員:つまり?
司書:十二年と一ヶ月、自由落下し続けたらどのくらい進む?※
■■研究員:……なるほど。


※おおよそ1,851,107kmですが、落下物が途中で白骨化するため空気抵抗の値が変化するため誤差は増大します。また、『バベルの図書館』内は時間や日付を表すものが存在しないため、『司書』の言う一年が基底世界と同じ時間である確証はありません。

※要検証事項
 周知の通り、物語に由来する哲学人は物語の枠組みからの逸脱を拒む、または行動制限により行えません。しかし彼は『バベルの図書館内』の変化を好み、図書館の改装を自ら進めています。この現象を説明するものとして考えられるのは以下です。

・『バベルの図書館』の存在が重要であり、図書館内であれば制限がない。
・図書館の改装自体が物語に従っている。
・彼は哲学人『完全な図書館』の一部などではない。
・『完全な図書館』概念は創作物であり、哲学概念ではないため哲学人化されない。その為に類義哲学概念を組み込んでいる複合型哲学人である。



© 2026 Privatter All Rights Reserved.