ワンライお題「連絡を取る」
@tomo27vt
『もしもーし、クラウド~?』
『聞こえてる』
明るい声が電話口から聞こえて、クラウドの口元が自然と緩む。
現在一行は3つのパーティに分かれて行動している。ひとまずの目的地とした村が山をひとつ越えた場所と相応に距離が離れており、巨大組織の神羅から追われる身でもあるので大所帯で動くのを避けたためだ。ただ、各パーティにひとつずつ通信機器を持つことで、連絡を取り合うように心がけてはいる。連絡を取るのはリーダーであるクラウドからだ。一番初めに目的地の村に辿り着いたクラウドたちは、宿屋で一息ついたのちに他のパーティに連絡を取っていた。
「俺たちは村には着けた。あんたたちは今、どの辺りだ」
『山越えて、ふもとの林だよ。今日はここで、野宿かな』
「問題はないか」
『だいじょぶ。仲良いよ』
「そっちじゃない」
エアリスが行動を共にしているのは、シドとヴィンセントだ。二人は一行への加入時期が近く、年齢も近い。だからと言って特に気が合ったわけでもなく、距離を詰めようとするシドをヴィンセントがすげなくあしらう姿が目立っていたが、あしらわれるシドが気にも留めていない様子だったこともあり、険悪な空気になったこともなかった。編成は戦闘スタイルを重視して決めていたので特に気に留めていなかったが、あえて言われると気になってくる。笑い交じりに応えるエアリスの声に、問題はないと判断して気になりそうな気持ちを無理矢理打ち切った。
『それも、だいじょぶ、だよ』
「なら、いいが……明日には合流できそうか」
『うん。お昼には着けそう』
「そうか」
知らず、ため息が漏れた。別行動は何度かしているが、安全を確認できるまでどうも緊張が解けない。今回は特に、越えた山のモンスターが手強かったこともあり、心配が募った。先に連絡が取れていた別パーティのバレットたちが、モンスターの巣に入り込んでしまったと聞いていたので余計だ。難を逃れて山の中腹には辿り着いているらしいので安堵したが、先に連絡を取ろうとしたエアリスたちが上手く繋がらなかったので内心ハラハラしていた。単純に、電波の不良が原因だったようで、呑気な声が聞こえた時に肩の力が抜けたのは秘密だ。
『クラウド』
「何だ」
『そんな心配しなくても、平気だよ』
思わぬ言葉に、ぐっと言葉に詰まる。緊張や不安は極力声に乗せないよう努めていた筈だ。確かにエアリスは他人の感情の機微に随分と聡く、助けられたりヤキモキしたりとしているが、それが機械越しでも構わず発揮されるのはどういうことだろうか。
言葉に詰まるクラウドの気持ちを察してか、エアリスの笑う声が聞こえてくる。それが得意げに聞こえて、何となく悔しくなった。何事か返せないかと部屋を見渡す。質素な部屋で目立つのはベッドくらいのものだが、視線を巡らせるうちに、壁に掛けられた絵画が目に入った。
「エアリス」
『なぁに?』
「村の名物に、あんたが好きそうなスイーツがあった」
『え?ほんと?』
「アップルパイだ。甘過ぎなくて美味かった」
『おいしそぉ~』
「活力にしてくれ」
『がんばるね』
絵画に描かれていたのは、瑞々しく赤く光る林檎だ。食後のデザートとして提供された際、村の名産を使用していると紹介された。名産とだけあって酸味と甘みのバランスが絶妙で、パイそのものもユフィが舌鼓を打つほどだ。
弾む声の調子に、高揚しているエアリスの表情が脳裏に浮かぶ。無邪気な様は、口元だけでなく声にも笑いを乗せそうになった。
『お疲れさま。クラウド』
「ああ、お疲れ。明日、気を付けてくれ」
『はぁ~い。おやすみ』
電話を切ると、途端、静寂が訪れる。ケット・シーはとっくに機能を停止して、デブモーグリと一緒に部屋の隅で大人しくしており、ユフィは別室だ。
次に訪れたのは眠気で、備え付けのチェアーでそのまま眠りそうにもなった。明日すぐに出発というわけではないが、情報収集はしておきたいし、無意味に疲労を蓄積させるわけにもいかない。欠伸を噛み殺しながら、クラウドはベッドに向かった。
傍にいられなくても、
(FF7無印:クラエア)
2020/8/1