@niziirononanika
名称:分裂 Splitting
能力:他者および自己の『良い面』と『悪い面』に関する統合認識不全誘発。
解説:二人一組の哲学人です。
それぞれ【分裂-a】【分裂-b】と記載します。
【分裂-a】
白い右翼を持つ女性です。快活でよく喋り、人間に対して好意的です。美しい容姿であり、所作のすべてに品があります。
特に幼い子供に対して強い愛情を示します。
何一つとして欠点を持たず、完璧で善良な人格者です。
彼女の能力暴露者は、他人の『良い面』を見ることにより強い尊敬や愛情を抱くことが可能と考えられます。
当然のことですが、【分裂-b】を強く嫌悪しており、彼女を卑下する発言が目立ちますが、彼女はあまりにも相容れない善人と悪人であるためにこの罵倒だけは正当なものであると考えられます。
【分裂-b】
黒い左翼を持つ女性です。多弁で馴れ馴れしく、積極的に人間に接触します。
長所と呼べる部分はなにもなく、見るだけで嫌悪をもたらす存在です。
彼女の能力暴露者は、他人の『悪い面』を見ることにより強い人間不信を発症すると考えられます。
不遜にも【分裂-a】に対して好意を示していますが、両者が相容れることはありません。
両個体は似ても似つかない存在であり、その性格の不一致にも関わらず、完全に同一の位置に重なりあって存在します。同時に異なる言葉を話し、時に両個体で対話しています。
存在するだけで自動的に能力を発動しており、特に低年齢の子供ほど強く能力の影響を受けます。両哲学人と距離を置くことで影響は軽減され、やがて消失します。
左右で色の異なる翼を持った一体の哲学人ではありません。絶対にそのようなことはありません。彼女の善性が犯されることなんてありえないのですから。同一の位置に存在する別個体です。絶対に。
どうにかして悪い方だけを消さなきゃいけません。
■■■■/■/■■追記
他者への認識不全は時間経過により緩和されますが、当哲学人に対する認識不全は永続効果である可能性があります。我々は考え直す必要があります。本当にこの哲学人は善良ですか? ――■■研究員
対応:精神世界を移動する特性上、収容不可能。発見次第説得と記録を行い、長期的な研究協力を申請する。
発見経緯:■■■■/■/■■ ■■県■■市■■■■産婦人科病院にて■■医師が発見。
対話記録:発見者■■氏へのインタビュー
■■研究員:連絡があった哲学人について、お話をお願いします。
■■氏:ええ……白い翼の生えた女性と、黒い翼の生えた女性の二人が、全く同じ空間に同時に、ぴったり重なって存在していました。
■■研究員:はい?
■■氏:そのようにしか表現できないんです……同じ空間に、同じ顔で、同じ服装の人物が居たとしか。
■■研究員:それは、つまり、ええと。片方が片方をすり抜けていたように?
■■氏:いいえ。ぴったりと、重なっていました。動きも表情も全く同じなんです。ほんの少しのズレもなく、二人は同じ人間かのように、同じように動くので……少なくとも人間ではない、と判断しました。
■■研究員:……なるほど。しかしそれは、外見上は一人の、翼の生えた人間に見えるのでは?
■■氏:はい? いえ、あれが同じ人間なわけありません。ああ、人間ではなく哲学人ですが……あそこには二人居ました。
■■研究員:ふむ……映像記録はありますか?
■■氏:院内のカメラなら、待合室が映っているはずです。
■■研究員:後程確認させていただきます。それで、その哲学人とはどのような会話を?
■■氏:世間話……ですね。
■■研究員:世間話……ですか。
■■氏:今日の天気についてと……あとは、子供の心理学についての話を……。
■■研究員:心理学ですか。
■■氏:はい。ただ、本当に些細な話題だったので、内容はあまり。
■■研究員:わかりました。ありがとうございます。
能力暴露者である■■■氏へのインタビュー
■■研究員:貴方が出会った哲学人について、お話を伺いたいのですが。お時間よろしいですか?
■■■氏:あ……ええと。はい。
■■研究員:どんな方でした? 思い出せる範囲で構いません。
■■■氏:あの……天使、でした。
■■研究員:天使?
■■■氏:はい。真っ白な羽が生えていて……それに、凄く優しくて、善良な方だったので。天使みたいだと……。
■■研究員:哲学人、とは名乗らなかったですか?
■■■氏:言ってたような……ああ、悪魔がそう言ってました。
■■研究員:悪魔。
■■■氏:居たんですよ。あんなに美しい天使様と同じ場所に! 本当に許せない! 何なんですかあれ!
■■研究員:落ち着いてください。お体に障ります。
■■■氏:あ、ああ……すみません……でも、あんなに完璧な人と同じ場所に、あんな、あんなのが居るのって……。
■■研究員:貴方は、その哲学人が現れた現場に居合わせただけと聞いています。
■■■氏:は、はい。
■■研究員:会話はされましたか?
■■■氏:いえ……。
■■研究員:その天使は、貴方の前で何をしましたか?
■■■氏:え……ええと……看護師さんと話していました。
■■研究員:他には?
■■■氏:他……?
■■研究員:……一つ、疑問なんですが。どうして、その哲学人が善良であると思ったんですか?
■■■氏:え、だって……だって、あの人は完璧なんです。悪い部分なんて何もないから、善なんです。だって悪いことはなんにもないんですから。何で疑うんですか。貴方は私のことをなにも信じてくれないんですね。酷くないですか、それ。どうして。
■■研究員:なるほど。ありがとうございます。