@toasdm
燦々と降り注ぐ太陽と、キンキンに冷えたかき氷。麦わら帽子と入道雲のように、それはとても相性の良い、夏を象徴するアイコンだ。
「暑いー……けど、冷たくておいしいー……」
大げさなくらいにつばの広い麦わら帽子は、北斗から彼女へのプレゼントだ。暑いですね、と微笑みながら、北斗は具だくさんのかき氷の中からキウイを選んで彼女の口へと運んでいた。
「誤算でしたよ」
「ふふ……苦手なものがあるのは仕方ないことですし」
本日のかき氷、と銘打たれたスペシャルかき氷はフルーツあんみつのように具だくさんで、その中に、苦手なキウイが含まれているのは完全に、北斗の誤算だった。子供みたいで恥ずかしい、と照れる北斗にいわゆる「あーん」をされてキウイを任されている彼女の方も、恥ずかしいと言えば恥ずかしいのだが――麦わら帽子の広いつばが、そんな彼女の恥ずかしさを少しだけ、軽減させてくれている。あとは、何よりも――。
「おいしいものが食べられたら、それでチャラです」
「あはは、それはそうかも」
北斗は苦手だが、彼女の方はフルーツには目がない。嫌いなものと好きなものがうまく噛み合って、夏は冷たさに好きをトッピングする。最後の一切れを彼女の口へと運んで、北斗は漸く、フルーツ全部乗せのスペシャルかき氷のキウイ抜きを完成させた。遠くでかき氷対決(勝敗の決め方はよくわからなかった)をしている冬馬と翔太を眺めて目を細めながら、彼女は自分の手元にあるかき氷を食べすすめ始めた。
「いちご練乳なんですね」
「はい! 生のいちごも乗ってる、ちょっと豪華な方にしちゃいました!」
嬉しそうなスプーンが、彼女の口へと涼を運ぶ。甘酸っぱさにミルクのコクが、冷たさを伴って彼女に夏を届けているのを、北斗は隣で見つめながら同じくかき氷で夏を感じていた。
カラン、と器とスプーンだけになった夏の風物詩をテーブルに置いた彼女は、その涼しさと引き換えに、少々苦しい満腹感を得ているようだ。
「ぷぇ……」
「やっぱりLサイズじゃ大きすぎたんですよ」
「だってぇ……いっぱいほしかった……」
サイズが選べるかき氷の、彼女は一番大きなサイズをチョイスしていた。食いしん坊さんだ、と苦笑する北斗の隣、彼女はおもむろに、べー、っと舌を出して北斗にみせて言った。
「赤くなってないです?」
「っ……なって、ますね」
かき氷シロップの鮮やかな赤が、彼女の舌を彩っていた。なんで、こんな、とドキドキする胸を押さえて、北斗は一瞬目を逸らす。
「うぅ……恥ずかしいなぁ、どうやったら取れるんでしょう」
お水飲もうかな、とペットボトルを手にとった彼女の頭を、麦わら帽子ごと北斗はすっと引き寄せる。
「ん、っ!?」
空いた手でそのペットボトルをさっと奪って、北斗は彼女の唇も奪う。びくん、と震えた彼女の体を抱き寄せて、唇の隙間から舌先を滑り込ませる。
「んぅ、んっ……」
瞬間、冷たさをまとった舌先からいちごと練乳の甘い香りを感じとり、北斗の中にゆっくりと流れ込んでくる。甘い甘い彼女の舌全体を軽く舐め回して、北斗はさっと体を離した。
「こうしたら、取れるかもしれませんね」
「なっ、う、ぁ」
「ほら」
べ、と舌先をちらりと見せて、北斗はウィンクをする。ほんのりと、わずかに赤くいちご色に染まった舌先が証明するのは、たしかに彼女の舌が赤く染まっていることと、それを北斗が舐め取った事実だ。
「ひ、人目」
「帽子で見えなかったんじゃないです?」
「うっ……」
まさかそういう目的でこれくれたんじゃないですよね、と見上げてくる彼女の頬をつんと突いて、北斗は笑った。
「ああ、ここも赤い色がついてますよ」
取ってあげましょうか、とからかう北斗の手からペットボトルを奪い返し、彼女はごくごくと飲み干す。彼女の舌の赤は薄くなっても、頬の赤はなかなか薄くならなかった。