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余話 温かいミルクティを貴方と

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2020-08-25 21:06:22

尚紀が潤から美味しいロイヤルミルクティの煎れ方を教えてもらう話です。オメガ二人がきゃっきゃっしつつロイヤルミルクティを煎れています。

 美味しいロイヤルミルクティの煎れ方を教えて欲しいんです。

 尚紀からそう懇願されて、潤は初めて彼を自宅に呼んだ。 それじゃあ、僕がいつも作っているやり方を教えてあげるからうちにおいでよ、ということになったのだ。

 やはり尚紀の反応は素直で可愛い。潤の心は癒やされる。
「ありがとうございます。美味しい焼き菓子を持っていきますね!」
 そう約束し、尚紀は日曜日の午後にやって来たのだ。




「まずね、美味しいミルクティはアイスもホットも同じ作り方。アイスは氷を入れて急速に冷やす方法ではなく、粗熱を取って、冷蔵庫で冷やしてね」
 今回は温かいミルクティを作るね、と言うと、尚紀はメモ帳を片手にうんうんと頷いた。


「小ぶりのミルクパン……っていうか小鍋に水を入れて、沸騰させて」
 潤はキッチンにあるミルクティ用のミルクパンに水をカップ一杯分入れて火に掛ける。
 沸騰させるその間に、紅茶の茶葉を準備する。
「茶葉は二人用で約十グラム。ティースプーン二杯ってところかな。茶葉はどんなものでも大丈夫だけど、ロイヤルミルクティ用の茶葉があるなら、それがおすすめかな」
 潤が取り出したのは赤い缶。以前、颯真が横浜の紅茶専門店で買ってきてくれた、アッサムティーだ。

「茶葉はロイヤルミルクティ用とかチャイ用とかだと、煮出した時にきちんと香りとコクが出るし、茶葉を細かく砕いてくれていたりするやつだと風味が出やすいよ」
 そう言って潤はアッサムの茶葉をティースプーン二杯を沸騰した湯が入るミルクパンに投入した。

「もし、ミルクティ用の茶葉がない場合は買ってきた方がいいですか?」
 尚紀の質問に潤は首を横に振る。
「いや、望ましいってだけで、何でも大丈夫だよ。なかったらティーパックを破って茶葉を投入するっていうのでも問題ないよ」

 潤はミルクパンを温めるガス台の火を強める。
「ここからは強火で三分」
「え、強火?」
「そう。ぐつぐつ煮ちゃって。鍋肌に茶葉がくっ付くから、その時はスプーンでこそぎ落としてかき混ぜてあげて」

 潤がミルクパンの中にスプーンを入れてかき混ぜる。ぐつぐつと泡を立てて、茶葉と湯が攪拌され、みるみるうちに茶葉が煮出されていくのが分かる。

 尚紀は興味深そうに潤の手元を眺めている。辺りに漂う、濃厚な茶葉の香り。潤がふっと笑うと、尚紀も笑いを返してくれた。

「三分経ちました!」
 キッチンタイマーを確認してくれていた尚紀の言葉に潤は頷いて、冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。
「これは濃いめの牛乳。これを水と同じ分量を鍋に投入してください」

 そう言って先程水を計ったカップに牛乳を入れて、そのままミルクパンに投入する。すると、ぐつぐつと煮えたぎっていた鍋の中が、冷たい牛乳で冷やされて、しゅんとなった。
「静かになった!」
 尚紀が楽しそうだ。
「これで沸騰するまで放置。大体三分くらいかな」
 潤がそう言うと、尚紀が、はい先生、と手を上げた。
「はい、どうぞ西くん」
 潤も冗談めかして尚紀を指す。
「あの、牛乳はなんでもいいですか?」
「そうだねえ、乳脂肪分高めがおすすめだなあ」
「乳脂肪分?」
「そう。牛乳ってほとんどが乳脂肪分が三・五パーセントくらいなんだよね。それだと茶葉に牛乳が負けちゃうから、濃いめの牛乳がおすすめ」
「濃いめ……? 乳脂肪分がですか?」
「そう。牛乳とちょっとカテゴリー違うけど。牛乳売り場には牛乳脂肪分を多めに調整したものがあるから、そういうものを選ぶといいよ。買うときに見るのは裏のパッケージに書いてある成分規格の乳脂肪分ね。四パーセント以上がおすすめだよ」
 潤が手にしている牛乳パックの成分規格を尚紀に見せる。
 なるほどと呟き、尚紀はメモを取る。几帳面な性格が
現れていると、潤はますます好感を持つ。こういう姿勢はとても好ましい。
 しかし、潤が好ましく尚紀を見ている間もミルクパンの中は茶葉がぐつぐつと煮えている。小さな水泡がミルクパンの口縁部に迫っていたらしい。

「あ、沸騰しそう」
 気付いた尚紀がミルクパンを指す。潤も振り返り、ガス台の火を消した。今にも茶葉と泡が溢れそうだったが、火を止めると急速にしぼんだ。

「危なかった……
 思わず安堵の声が漏れる。気を取り直して、ポットに茶漉しをセットし、煮出したミルクティを丁寧に茶漉しで濾していく。

「アイスロイヤルミルクティにする場合は、これであら熱を取って冷蔵庫ね。甘みを加えるときは、ここで入れた方が砂糖が溶けるからおすすめ。温かくして飲みたいときは、このままカップに注げば完成」

 潤は二つのマグカップに完成したばかりのロイヤルミルクティを注ぐ。
 
「わぁ……!」
 尚紀の目が輝いた。
「温かいうちに飲もっか」
 潤の言葉に、尚紀が頷いた。



 リビングに移動して、テーブルにマグカップを置く。尚紀が持参した焼き菓子はスコーン。江上の家の近所に美味しい手作りの店があるという。江上の家の近所と言うことは、このあたりにの店なのだろうが、潤はすでに住んで二年近いにも関わらず、あまり詳しくはない。今度尚紀に連れて行って貰おうと思った。

 温めたスコーンに、尚紀が持参したクロテッドクリームとマーマレードを添える。それらを付けてスコーンを口に運ぶと、スコーンの程よい甘さとクリームの濃厚さ、さらにマーマレードのほろ苦さが絶妙なバランス。
「おいしいね、これ」
 潤が素直に驚いて、二口三口と運ぶと、尚紀も満足げな表情を浮かべた。

「このミルクティはやっぱり美味しいです。これ、廉さんに煎れてあげたら、喜ぶかなあ」
 尚紀が楽しそうに聞いてくる。潤は即頷いた。

「もちろんだよ。こういうのって尚紀が廉のことを思って煎れることに意味があるんだよ」
 尚紀は廉のためにミルクティを煎れてあげるなんて言ったら……。潤は楽しくなる。

「これから茶葉を買いに行く? バレンタインに廉に作ってあげなよ。きっと喜ぶと思うよ」

 その提案に尚紀は即答で頷いたのであった。


【了】

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※こちらのお話に使ったロイヤルミルクティのレシピは、大阪のロンドンティールーム様で公開されているレシピを参考にしています
https://m.youtube.com/watch?v=-3SdixzV4GU
いつも煎れているレシピなのですが、本当にに濃厚で美味しいので、ご興味があればぜひ!


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