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③RUM副作用で血を吐いたⅣと不老不死凌牙

全体公開 3 3543文字
2015-02-15 19:56:33

※死にネタ注意
※主要キャラの死亡シーンをかなりがっつり含みます。
※救いはありません
苦手な方はブラウザバック。
※Ⅳ璃緒を若干含みます

※いつもの私とは違ったテイストをお送りする事になると思います。
閲覧は熟考ください。








※最終回から3年後。Ⅳ20歳、凌牙が高校2年になったはずの年に凌牙の不死とⅣの病気が発覚
それから数年。以来Ⅳはプロを止めひたすらこの14年を研究に捧げました。特にこの5年は延命薬を水の様に飲み酷く苦しい数年だったようです。半年前に交通事故で失った妻の璃緒を愛し見守ったものの、
最後まで彼女に夫として自分から触れようとは、しませんでした。


◆◆◆


Ⅳは研究室で、血の混じる痰を吐きながら、
けれど今日は何だか凄く身体が軽くて、
こんなの何年振りだったかな、と
少し遠のく意識で、思い巡らす

何故かひどく眠くて
うとりと、微睡みながら

夢を見る。

友と、家族と

仲間たちと

笑って

(ああ)

眩しい

Ⅳは、目を細めた

いつしか笑わなくなった友が
Ⅳの目蓋の裏で、仲間と、家族と
Ⅳの大切なもの全てに包まれて笑っていた

愛する家族が笑っていた
いつの間にか出来てしまった仲間が笑っていた。
友が、笑っていた。

愛していた。
ただ、ただ。あいしていた。

そばにいてくれるひとの幸福を

家族を

仲間を

友を――その幸福を。




(願っちまったら、もう、止まらねえだろう
なぁ)



りょうが




友の名前を呼んで、
まぶたの裏の幸福に微笑みながら

Ⅳは

筆を、取り落とした。





享年、34歳のことだった


◆◆◆

「カイト?」
珍しい電話に、何気なく取った。
「どうした?こんな時間に」
「凌牙、落ち着いて聞け」
カイトは、らしくなく掠れた声を出した。後ろで騒めく音がして、よく聞き取れない。凌牙は耳を寄せた。
「どうした?何か、」
「Ⅳが



血を吐いて、Ⅲが気付いた、朝には もう


※突然の、訃報


◆◆◆


葬式で、Ⅲは泣き倒していて
「まさか、二度家族の喪主を務めねばならないとは
クリスは、力無くカイトの前で、一度だけ零した。
「しかも今度は、弟を」

カードを作ったのはクリスで
あまりにも、辛い


葬式の時、ひたすらに淡々と全てを眺め
そして、焼けたⅣの骨を骨壺に入れた凌牙は

「君に、渡さなければならないものがある」

クリスに、Ⅳのプロデュエリスト引退の真実と
身に患っていた病の真相を知らされる。
Ⅳのこもっていた離れに案内され、
Ⅳの生前の軌跡を、見る事になる。


◆◆◆

Ⅳに遺された研究資料をめくりながら
「馬鹿じゃねえのか、お前
こんなモンの為に、人生丸ごと棒に振ったのかよ」

紙の束に、水滴が落ちて
インクを滲ませる

「プロデュエリストも辞めて、
馬鹿みたいな量の薬飲んで延命して
最後の最期まで、こんなモンの為に

止まらなかった。頬を、流れ落ちる涙が

Ⅳは、
凌牙を、友と呼んだ男は。

最後の最期まで、凌牙を運命から取り戻そうとしていた。

不死になった凌牙から、
もはや、人と呼べるのかも怪しい化け物を、友と叫び続けた男は

不死の、運命から
凌牙を、『普通に死ねる人間の凌牙』を
取り戻そうと、最期まで足掻いていた

けれど、あの時無茶なランクアップで負荷をかけた体は
永い時間には耐え切れず

そうして、こんな
あの男の、命を燃やした試行錯誤の証だけを遺して、
灰になった

ッ」

手の震えが止まらなかった。
手書きの走り書きは、どれもこれも急くようで
その全てが、凌牙の為に捧げられた、
あの男の、余命ごくわずかで限りなかった筈の、
費やされた膨大な時間と叫びだった。



「なあ、なんで」

『凌牙』

耳の奥で、男が笑む声がする。


「なんで、てめえは
俺を友に選んじまったんだよ、Ⅳ――ッ」


慟哭は空を刺して。

受け止める者無く、拡散して消えた。




一刻程が立っただろうか

ゆるり
憔悴した顔で起き上がった凌牙の手には
握られた、ライターが。

パチン、と
それが親指ではじかれる。

止める者は、居なかった。

あっという間に書類に火が回って
Ⅳの生きた軌跡を、
友への想いを、炎が舐めていく

Ⅳの叫びは
耐え難かった。

耐えがたかったのだ。

「もう、遅えよ Ⅳ」

Ⅳの遺した研究資料が、灰になっていく

舞い上がって

還っていく


空に


―――『一足先に、地獄で待ってるぜ、凌牙


「俺はもう、そっちに逝く事も出来ねえよ」






そこから先は、地獄絵図であった。

泣き伏して痛んだ頭を冷やすのに、表に出てきたⅢは、
離れの兄の研究所から、酷い焦げた臭いがするのに気が付いた。
ハッとⅢが駆け付けた時には、既に離れは轟々と火に巻かれ燃え上がっていて
近づくだけで凄まじい炎があぎとを開けて建物を呑みこんでいた。

馬鹿だと思いながら飛び込んだ。
そこには兄の遺した研究の紙束に埋もれるように、
膝をついて呆然と立ちすくむ凌牙が居た。


「何やってるの凌牙!?」


悲鳴と共にⅢが凌牙の腕を引くと、
凌牙は立ち上がりもせずに、ふらりと反対の手でライターを再びかざした。

「やめて!!やめて、燃えてしまう!
トーマス兄様がッ 兄様が遺したものが全部ッ」

Ⅲが阿鼻叫喚のままに、突進するように凌牙を押し倒した。
その拍子に、ライターがくるくると床を滑って火に呑まれた。
油を吸ったライターが、爆発的に火を強めた。


窓ガラスが割れて
入り込んだ空気に、

炎が爆発した。


「ぐっ」

衝撃と共に吹き飛ばされて
凌牙と一緒に転がったⅢが、
痛みに顔をしかめて動きを止めた時だ
嗚咽が、耳に滑り込んだのは

「りょう、が」
「何で、俺は死ねないんだ」

息も出来ずにⅢは
床に転がされたまま滔々と泣き続ける凌牙の慟哭を、目にしていた

「璃緒なんで」

凌牙の喉が、鳴った。

「死にたい
死にたい死にたい死にたい死にたい
なんで、なんでだ なんで俺はアイツらと一緒に逝けねえんだ なんで」

ヒュウ、と
吸いこんだ息が

「もう、手も足も無くなっていい
どうせ死ねないなら、ここで」

迫った炎が、投げ出した凌牙の腕に迫り
凌牙の手のひらが、床のガラス片を素手で掴んで
振り上げた。

「ダメッ!!」

凌牙の振り上げたガラスは、凌牙の指を切り落とす前にⅢに弾かれた。
Ⅲの頬を掠ったガラスに、ようやく凌牙はⅢに気が付いたような顔をして

「Ⅲ?」

「駄目だ、駄目だ凌牙、そんなの望んでない、トーマス兄様は望まないッ!!」

血を吐くようなⅢの叫びに、
Ⅳの名を聞いた凌牙は心臓を刺されたような顔をした。

「いつかもう一度デュエルするって言ってたッ、ずっと言ってたんだ兄様はッ
君はデュエリストだろうッ!
捨てちゃ駄目だ、死んじゃ駄目だ凌牙ッ」

ガラッ

不吉な轟音がして、上から柱が降ってきた。
衝撃と爆音に全てが判らなくなって、気が付いたらⅢは凌牙の細い腕を肩に回していた。
崩れた柱のすきまに、亡き兄のデッキケースが見えて、
思わず手を伸ばしかけて、けれどもⅢは歯を食いしばって目を逸らして凌牙の腕を掴み直してその場を去った。
(ごめんなさい、トーマス兄様)

Ⅲの後ろで、Ⅳのデッキが火に巻かれて消えていった。


◆◆◆


「ごめんなさい
ミハエルは、すっかり背が伸びて一番上の兄と同じぐらいになった四肢を、
トロンの前に膝をついて投げ出して、声を震わせた。
「なにも、持ちだせませんでしたせめて、デッキだけでもって、でも
喉を震わせて、ミハエルは
「トーマスにいさまッ」
息が引き攣れて、ヒュウと喉が鳴った
その時だった。

柔らかなぬくもりと共に
小さな身体で精一杯に、ミハエルの頭が抱きしめられたのは。

「父さ、ま
「良くやったね、ミハエル」

やわらかく、暖かく
耳朶に吹き込まれる声と共に、ミハエルの髪は撫でられた。
繰り返し。繰り返し。何度も。

「君は選ぶべきものを間違え無かった。」

帰って来てくれてありがとう、と
トロンは息子を抱きしめた。

「トーマスも、きっとこう言ってる。
俺の友を護ってくれてありがとうって。無事でよかったって。
お前は、俺の、自慢の弟だ、って」

ミハエルは、幼子に戻ったように
トロンに縋って、泣いた。




ToBeContinued


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