@fugumiso_11
「あのね、聞いてトモちゃんっ」
始まりは春歌の一本の電話から始まった。
慌てふためいて話す春歌は、だからね、その…等を繰り返している。相当焦っているのだろう。
「どうしたの。落ち着いて話しなよ…」
アタシは彼女にそう促すと、ごめんねと一言謝り本題に入った。
「……翔くんは、スタイルのいい女性が好みみたい…」
一瞬開いた口が塞がら無かった。
話が飛躍しているのもあるが、つまりはどういうことなのだろう。
翔ちゃんに限って春歌にそんな事を言うはずはないだろうし…。
「トモちゃん、わたしってあんまりスタイル良くないよね…?それに、パッとしなくて地味だし…」
悲しそうに話す春歌は相当悩んでいるみたいだ。
大人しくて、素朴で清楚な可愛いところが春歌の良いところだと私は思うし、きっと翔ちゃんも春歌のそんな所にも惚れているだろう。
「わかった!とりあえず話し聞くよ。週末空いてる?ご飯食べに行こうよ。」
こうしてアタシは週末、春歌の話を聞くことになった。
週末、春歌はショートケーキを食べながらアタシに話し始めた。
「いつも通り、2人で夜ご飯を食べた後だったんだけど…。」
相変わらず仲がよろしい事で…なんて、口にはせず心でツッコミながら無言でコーヒーをすすった。
「翔くんが見てた雑誌にね、スタイルの良い女の人が写ってたの。結構真剣にそのページを見てたから、どうしたのかなって思ったんだけど…。わたしの方を見て、考え事した顔で次はスマホで何かを調べ始めて…」
春歌はみるみる悲しい顔になってゆく。
「わたしに見られたくない感じだったから、何か言いにくい事なのかなって…。わたしあんまりスタイルよくないから……」
うーん…なんでかはさっぱりわかんないけど、多分スタイル云々の話ではきっとないだろう。
春歌もスッゴく可愛いんだから、もっと自信持てば良いのになぁ…。アタシの自信を分けてあげたい!
「違うんじゃないかな…。翔ちゃんがアンタにベタ惚れなのは見ててわかるし…。いっそ本人に聞いてみれば?」
「そ、そうかもしれなくても…でも、そんな事恥ずかしくって聞けないよ…!」
悲しい顔になったと思ったら次は真っ赤だ。
あーあ、こんなに翔ちゃんのことで悩んじゃってさ。可愛い友達を取られた気分で、なんかちょっと悔しい気がする。
あ!そうだ
「だったら、そのスタイルの良いお姉さんみたいになっちゃえば良いんじゃない?アンタ元々は綺麗なラインしてるんだから、服をちょっと変えて化粧すれば雰囲気でるよ!」
(帰って綺麗になった春歌をみて、慌てふためいて理性と葛藤すりゃいいのよ…!)
こうしてアタシの翔ちゃんに対する精一杯の企みが始まった。
春歌は今日、渋谷と出掛けたらしい。
俺は撮影だったから、春歌とは夜に会う約束をしていた。というか、もう春歌の部屋に帰るのは日課だ。
帰路で一件のメッセージが入った。
【渋谷 友千香】
春歌、悩んでるみたいだよ。話聞いてあげれば?
そういえば少し前から春歌は落ち込んでいるようだった。聞いてもはぐらかされるから、言いたくない事なのかもしれないと思っていたけど…。
仕事がうまくいっていないのか、それとも他に何か辛い事でもあったのか。帰ったら春歌の飯でも食いながらゆっくり話を聞いてあげたい。
“サンキュー。そうする!”と渋谷に返事をして、早足で寮へ向かった。
そして部屋に着いてドアを開けた。すると、
出迎えた春歌が着ていたのは、肩や鎖骨の出たオフショルダーの真っ黒なミニのワンピースだった。
「お、おかえり…なさい。翔くん…」
(おおおお、お前、その格好…!!)

なんかもう色々とすげー眩しい。肩も足もギリギリで、色々見えそうだけど…!?!?
「あの、お風呂にしますか?それとも、ご飯にしますか…?」
聞き覚えのありげなセリフに(いつも聞いてる)頭が沸騰しそうになった。
「は、春歌…?どうしたんだ、その格好」
「やっぱり…似合って…ませんか?」
「ににに似合ってる…可愛い、けど…!その、ちょっと突然すぎっていうか、刺激的つーか、いや、そうじゃなくて!」
焦って体から汗が出てきた。なんかすげー暑い。自分でも何を言ってるかもよくわからず、とりあえず一旦深呼吸して落ち着くことにする。
「リビングいこう…落ち着いて話そうぜ!」
こうして俺は春歌とリビングに向かった
2人でソファーに座って話を始めた。
とりあえず俺は渋谷から聞いた、春歌が悩んでいる事を確かめた。
「笑わないで聞いてくれる…?」
「勿論、笑ったりしねぇよ」
春歌は泣きそうな顔をして、俺がみていた雑誌の話をした。相当その事で悩んでいたことがわかる。
「あのさ、俺がみてたのそっちのページじゃなくて、隣のページ」
雑誌を持ってきて春歌に見せた。
そこには、都内にあるスイーツの店が書いてあった。
「お前、最近仕事すげー頑張ってるなって思っててさ。俺もお前と少しは外出たいし、なんか甘いもの食わせてやろうかなって思って。…本当はサプライズにするつもりだったんだけどさ」
そう言うと春歌はみるみる真っ赤になっていった。
耳や肩まで真っ赤だ。目もうるうるして今にも泣き出しそうだ。
「ごめんなさい!どうしよう、恥ずかしい…!わたし、今すぐ着替えて来ますっ!」
「待て待て!」
俺は春歌の腕を掴んで強引にソファーに座らせた
「ダメだ!さっきはビックリしてうまく言えなかったけど、すげー可愛いぜ。それに、いつもより色っぽくて…。いつものお前も好きだけど、着飾ってる姿も、綺麗ですげー好き。」
俺は春歌をギュッと抱きしめて肩にちゅっとキスをした。それから首に、耳にも軽くキスをする
「ひゃっ、翔くん…く、くすぐったい…っ」
「本当にくすぐったいだけか?」
そうやって聞いても恥ずかしがって春歌からの返事は無かった。
「俺がご褒美貰っちまったな。仕事から帰って、彼女が可愛い格好で出迎えてくれるなんて、すげー贅沢…」
それから春歌の髪をすくってキスをした。
春歌のすべすべした肌が心地良くて、少し肩を撫でると抵抗するみたいに俺の服をギュッと掴むから余計に可愛くって愛おしくなった。
「春歌…大好き。愛してる」
俺のことで、こんなにも悩んでしまう春歌が好きだ。凄く愛おしい。大切したい。守ってやりたい。
「翔くん…その、ごめんね。…私の為に考えてくれてたのに…」
「お前が不安になってたら、サプライズも意味ねーよ。美味しそうな店一緒に探そうぜ、その方が楽しいしな」
俺はそう言って春歌の頭を撫でてやった。
気持ちよさそうに目を瞑っていて、おとなしいネコみたいで可愛い。
「…それにしても、この服もう着れないです…。トモちゃんにあげようかな…?」
春歌はうーんとうなっていた。どうやらもうこのワンピースを着る気はないようだ。
「だーめ。こんなに可愛いのにさ。折角買ったんだからまた着てくれよ。あ、でも外ではダメだぞ!俺だけな」
「…!こんなにあちこち出た服、外でなんて着れませんっ」
春歌は恥ずかしそうに、少し怒ってそっぽを向いた。
「はぁ!?その後夜ご飯を一緒に食べて、いつも通り自分の部屋に帰ってったあ!?」
「そ、そうだけど…。何か変かな…?」
変だよ!変!あんなに可愛い春歌に手出さずに終わるなんて、そんな事あるの…?翔ちゃん本当に男?
なんか勝負に負けた気分だ。
自分のプロデュースした春歌は間違いなくめちゃくちゃ可愛くて、思わず抱いちゃいたくなるくらいだったはず。
「アンタ…本当に大事にされてんだね…」
「うん!翔くんは本当に優しくてかっこいいよ!」
嬉しそうに惚気る彼女を見ると心底どうでもよくなってしまった。
しかし心配だ…いつになったら、この2人は…なんて、アタシが突っ込む話じゃないけど。やっぱり親友のことは心配だ。
「トモちゃん、相談に乗ってくれてありがとう!」
「…!どういたしましてっ」
いつか……その時まで。
長い気がするけれど、春歌の嬉しそうな顔を見て楽しみになったアタシだった。