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【セルヒツ】贖罪の羊たち

@tkaruno
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2015-02-22 21:12:49

フォロワーさんのアミダの神様が「背中合わせ」「セルヒツ」を提示されたので。
でもなんかコレジャナイ感が否めない。


* * * * *


「貴方は私に色々な事を教えてくださったが、唯一教えてくれなかった事がありますね」
 そう言ったヒィッツは自嘲気味に笑い、目の前のワイングラスの縁を軽く指でなぞった。
「おや、そんな物があったかね?」
 テーブルを挟んで向かい側に座っているセルバンテスはそう言って自分のグラスを飲み干す。言葉では心外だと言いたそうだが、その表情にはどこか愉しんでいる風にも見える。
 ヒィッツもセルバンテスの態度をそれと取ったのか、自嘲の眉尻は悲壮な形に変わった。
「この世界の裏側も、見えるものと見えないものの判断も、自分と人の欺き方も……私が生きていく上で必要な知識は貴方が与えてくれた。だからこそ私は戦い方を覚え、生き長らえて今に至る。でも、」
 ヒィッツは一度言葉を切ると、ワインをあおった。深い熟成した葡萄はその舌先に甘味と苦味を同時に残す。
「でも貴方は唯一、私に貴方の背中を守る術は教えてくれなかった」
 白磁の眼に滲んだ液体の正体はヒィッツ自身にもわからない。
 悲しいのか、悔しいのか、怒りなのか、それとも。
「仕方ないさ、“素晴らしき”。私が背中を預けられるのは君じゃない」
 そんなヒィッツの錯綜する感情に引導を渡すように、セルバンテスは笑った。
「君は本当に強くなった。十傑集として二つ名を冠したのも伊達じゃない。けどね、」
 その笑顔はさながら賢人の如く。
「私の背中は君が守るものじゃない。否、私は誰にも守られない」
 その笑顔はさながら殉教者の如く。
「私のこの身は時に剣として敵を討ち、時に盾として敵を阻む為のものだ。守られるべきものではない」

 セルバンテスの姿が陽炎の様にヒィッツの視界で揺れる。

「……仰っている意味がわかりません……」
 喉の奥から搾り出されたヒィッツの声はまるで初めてあった時のようだ―――――セルバンテスは微笑むと、
「相変わらず君は嘘つきだ」
 そう言って流れるような動きで席を立つ。後に残されたヒィッツは微動だにしなかったが、セルバンテスの目には今にも泣き出しそうな幼子が震えているように見える。
「―――――私の背中など、君が守る価値なぞ無いんだよ」


   重く、低く呟かれた囁きはヒィッツの耳に届く筈も無く。





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