風花雪月 支援Sイベント後クロレス ここまでにキスする仲になってる前提
@syuu_29
ほんの少し離れるという宣言にベレスが黙り込むと、わざとらしくクロードは付け加えた。
「なに、五年もかからない」
――五年。それが何を意味する言葉なのかはベレスとて考えずともわかる。なにしろ再会以降クロードはベレスの欠落した五年について責めてきた。あんたがいて欲しかった、それはもうとてもとてもとても長い五年だったと暗にもあからさまにも釘を刺した。
ベレスにしても惜しい歳月である分、そうして責められれば足を止めるしかなかった。しかし意図して離れたわけでもないのにごめんというのは不誠実のようで口を閉ざせば、クロードは責めた口で「あんたを責めたいわけじゃない」と詫びた。
何度も繰り返したそのやりとりが頭をよぎらないわけもない。
しかし今の言い方にはめずらしくも近頃見かけることなどなくなってきた学生時代の面影があり、ベレスは思わず微笑んだ。
「根に持つね」
「ああ、持つさ。一生だって持ってやる。それっぽっちの罪悪感であんたが逃げ出せないと言うのなら、いくらでもちくちくと掘り起こして突きつけてやろう」
言葉は軽い調子だ。けれど剣呑な瞳が向けられている。もしやなじられたいのかなとベレスはクロードの顔に手を伸ばした。指の腹で鬚からもみあげをなぞり、顎を引き上げる。それが意外だったらしくクロードの瞳の剣呑さは瞬きの合間に消えた。彼が「きょうだい?」と不思議そうな顔をするのに構わず、ベレスは「うん、ひどい男だね」と唇を言葉で撫でてから重ねた。触れるだけの口づけはすぐに終わり、指先は惜しむ気持ちのままに顎先から耳朶までを撫でる。触れた耳飾りが小さく音を立てる。
「……ちっとも本音に聞こえないな」
言葉より雄弁な指先にクロードは薄い笑みで答えた。それから手のひらをベレスの背に回すと、離れそうになった身体を腕の中に留めた。
「あんたに甘えられる日が来るとは」
「ひどいのは本音だよ。だってきみは五年待たせてもいいのに、そうやって私を甘やかしてる。離れるのに」
ベレスは素直に言い返すと「期待させるのが上手だね」と添えて褒めた。その言い回しが我ながらいつか彼に剣の指導をして褒めたそのときのようだなと思い出せば、顔を見るのがいまさら照れ臭くなり――ただ不器用に瞼を閉じる。
「……褒められるのは好きだが、あんたほどじゃない」
「わたし?」
思わず瞼を押し開くと、ベレスにも甘い視線という言葉の意味する表情がようやく理解できた。クロードの表情が、そうとしか言えないものだったからだ。生まれてこの方一度だって弾んだことのない心臓がもしも『まとも』なら、胸が弾んだだろうとさえ思った。
ベレスが言葉にしがたいその感覚に黙り込んで何度も瞬けば、ふははとクロードのほうは破顔した。すっかり大人びた姿なのに、その笑みだけなら士官学校の生徒の頃そのままだ。しかも「あんたの指導の賜物ってやつさ」と当時のようなことを言って、ベレスを真似たようにまるきりウブな口づけをわざとらしく何度も繰り返した。
「ああもう、まったく離れがたい人だなあんたは!」
そうして振りそそぐ唇を受け取るのに精一杯で、それはこっちの台詞だというベレスの言葉は結局うやむやになってしまった。