「この時間に食うから美味いのさ」
「騙されるなよ。快楽は一時、後悔は後々尾を引くんだぜ」
夜ポテチの誘惑、天使と悪魔が頭の中で戦うアレのPさんと雨彦さんです。
@toasdm
「食っちまえよ。どうせ動いたら摂取カロリーはゼロだぜ?」
にたりと悪魔の微笑みを浮かべた雨彦が、彼女の脳内でそう唆す。
「お前さん、こないだは我慢できてたじゃねぇか。塩分も多いからむくむぜ、今はやめとけ、な?」
至極まっとうな、正面ど真ん中の正論。優しく笑う天使の雨彦が、彼女の中でそう引き止める。目の前にはポテトチップス、時刻はまもなく午前0時。夜食はそのまま、消費されることなく贅肉になってしまう時間帯だ。
「この時間に食うから美味いのさ」
「騙されるなよ。快楽は一時、後悔は後々尾を引くんだぜ」
天使と悪魔の雨彦が、交互に頭の中で彼女を悩ませる。実際には、悩ませているのは彼女の目の前にあるポテトチップスなのだが。
「うぅぅぅ……」
悩む彼女は唸り声を上げてテーブルに突っ伏す。どうしてこんなの置いておくんですかぁ、とバスルームの方に恨み言を呟いて、彼女はそのまま眠ってしまった。
「っと……長湯しすぎたか」
風呂から上がった雨彦は、テーブルで寝落ちてしまった彼女を見てくすりと笑う。お前さん、食うかと思ったらそうでもなかったんだな、と未開封のポテトチップスをひょいとテーブルから取り上げて、雨彦はそれを戸棚の中にしまい込む。
「悪魔の誘惑に負けたらカロリー消費にでも付き合ってもらおうと思ってたんだが……まあ、世の中そう上手くはいかないか」
苦笑とともに彼女をそっと持ち上げて、雨彦は誘惑に耐えきった彼女をベッドに運んだ。
「はぁ……」
手、出したっていいんじゃねぇか?と自分を唆す悪魔の誘惑と、寝てるぜそっとしといてやろう、という天使の抑止がそんな雨彦の頭の中で会議を始めたが、ちらりと隣を見て、雨彦は悪魔をやり過ごす。
「……お前さんが耐えたんだから、な」
俺が誘惑に負けるわけにもいかないだろう、と手を出しそうになる自分をぐっと押さえ込んで、彼女の隣で雨彦も眠った。