クロウちゃんと『シアン』ちゃんの話

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2020-10-22 23:17:55

コミケの公式薄い本で見たモデルしてるシアンちゃん特集見て思いついた、バンドではなくモデルしているシアンちゃんのIF話です。クロウちゃんはちゃんとシンガンしている。なんとなく書いたので何もかもふわふわ。コミケ本のネタバレないです。クロシアかもわからん。

Posted by @Greas087

 派手な蛍光色、古風で地味な色、統一性が無くごちゃごちゃとした看板が並んだ街中を、協調性も無く足早に歩いている奴やべらべら喋りながら呑気に歩く奴等が自分の目的の為だけに人の流れに沿って歩いていた。
 そんな川みたいな人並みを逆らって反対方向を突き進む。
 此処はミディシティで最も若者が行き交う『バンブーアンダーストリート』だ。女子高生に人気のファッションブランドショップや、クレープ屋やタピオカ屋等、若者受けが良い店がてんこ盛り、シブバレーも近いので、人気スポットらしい。
 しかし俺にとっては人が多過ぎて歩くのも一苦労なので出来ればこんな場所好んで何度も行きたくはなかったが、如何せん此処を通らなければ相棒レッドトマホークを預けている楽器屋に辿り着けないのだ。
 レッドトマホークを定期的なメンテナンスの為、数日間だけ楽器屋に預けた。そして受け取りが今日だった。ライブが暫くない時期にメンテナンスに出したものの、やはりギターを数日触れていないだけだが体がギターを求めているらしくどうしても弾きたい衝撃に駆られていた。
 一目散でこの通りからオサラバして楽器屋に行きたいのにと、だんだん心に余裕がなくなってきていた。
 イライラしている自分にもみっともなくなった俺は、気を紛らす様にキョロキョロと辺りを見渡す。何度も言うが人と店しか無くて面白みも無いし、うじゃうじゃ人がいる為人酔いしそうだった。
 すると、歩く人の波を他所に長い列を見つけた。並んでいるのは若い女ばかりだったが、楽しそうに待つ小さな少女を連れた親子連れもいた。
 長蛇の列が気になって先頭まで歩みを進めると、辿り着いたのは女物の服を取り扱うブランドショップだった。ショーウィンドウの中には俺には全く縁のなさそうなフリフリとした服……ロリータというものだろうか、黒い服と色違いで白い服を着たマネキンが飾られていた。そして二つのマネキンの頭部からは黒猫の耳が生えていた。ショーウィンドウのガラスにも猫の肉球やら、ハートや苺のマークが貼られている。
 しかし、この通りは俺は楽器屋に向かう途中に度々通るし、数日前も通った。数日前はそんな派手めな飾りはなかった筈だ。
 店の入り口には何か張り紙があった。
 『人気モデル「シアン」とのコラボレーショングッズの販売!』、とでかでかと書かれてあった。文字の側には『シアン』らしき少女の写真が添えてある。
 『シアン』って最近駅の広告や、テレビのCMとかに出て話題沸騰のネコ族の人気モデル……と、同じ事務所の後輩に聞いた事がある。
 全く知らないという訳ではないがテレビを付けたらCMで見た程度で興味はなかった。
 まあ、列がこんなに長く出来るのだから人気なのは間違いない。
 どうでも良いが、ずっとショーウィンドウを見ていればクラッと頭に痛みが走る。派手な色を見過ぎたみたいだ。思わず愚痴が漏れた。
「チカチカすんだよな……
「そっかあ、やっぱり派手すぎちゃったかにゃあ」
「派手過ぎるっつうか、男には見慣れねえ色ばっか……は?」
 独り言だったのにも関わらず、何故か一瞬合いの手が入った。
 辺りを見渡すと、俺の背後に帽子を深く被った、俺の肩位の小さい人物がいたのだ。
 服装も人混みに直ぐに紛れやすい地味な格好をしている。
 こいつ何者だ? と、様子を伺っていると、やっとそいつは顔を上げた。
 大きな赤い縁メガネを掛けた困り顔の少女だった。
 少女というか、先程店に貼られていた張り紙に載っていた人気モデルの『シアン』だというのがメガネ越しからでも分かった。
 興味は無いが目の前に有名人が現れたと思うと慌てた。
「お、お前」
「しー! お願いにゃ今日はお忍びで来たにゃ誰にもここに来る事を言ってないから内緒にしてほしいにゃん……!」
 大声を上げそうな俺の手を掴みながら『シアン』はうるうると瞳を潤ませ小声で訴えてきた。
 俺はモテるが、女に左手を掴まれる事もなければ上目遣いで何かを求められた事もなかったので瞬時に口を閉じて首を縦に振る。体は正直だ。手は柔らかくて温かい。女の手は全員こういう感触なのか?
 すると『シアン』も悲願した顔から忽ち安堵の表情を浮かべた。
「お兄さんありがとにゃん、あとさっきの意見はいつかのコラボの時に活用しますにゃん! 男の子にもゴスロリに興味持ってほしいから」
 感謝される事は一切していないが、『シアン』は礼と彼女なりの目標を述べてから俺から離れて、一目散にその場から逃げていった。
 嵐の様な出来事だったが、まだ手の温もりは残っている。

 掴まれた左手をギュッと結びながら、また楽器屋へと足を進めるのだった。


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