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心音(こころね)〜Magia Notes Part.3〜

全体公開 ツイステ二次創作 2554文字
2020-10-25 20:10:48

恋する気持ちを抱いて、私の心は喜びの音楽を奏でる。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第3話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり

Posted by @natsu_luv

終業のチャイムが教室内に響き渡る。
午前の授業が終わり、生徒たちが続々と大食堂の方へと歩いていく。
この日の私は自作のお弁当を持っていた。
大食堂はいつも混み合っているから、過ごしやすい気温の晴れた日には中庭でお弁当を食べるという習慣を作ったのだ。
食べる場所はいつも決まっている。
シルバー先輩との待ち合わせ場所でもある中庭の木陰だ。
今日はシルバー先輩も木陰に来ると言っていた。
私はそのことをエースくんとデュースくんに話した。

「シルバー先輩と? いつの間にそんな仲になってたんだ?」
「ニコルのヤツ、シルバーとお付き合いしてるんだゾ」
「ええっ〜!!」
「あれ、オマエたちニコルから聞いてなかったのか?」

エースくんとデュースくんの叫び声が廊下に木霊した。
グリムは二人が私とシルバー先輩の関係を知らなかったことを少しだけ疑問に思っているようだった。

「ちょっと、二人とも! 声が大きいよ!」
「ニコル……。お前、ちゃっかりしてるよな……
「まぁ、相手がシルバー先輩で良かったんじゃないか? どこかの変な奴だったら、ヤキ入れてやろうかと思ったぞ」
「デュースくん、乱闘騒ぎは起こさないでね」

ワル語録を出してきたデュースくんに、私はしれっと釘を刺しておいた。
エースくんとデュースくんとは昼休みが終わってから合流することを約束して、私は中庭の木陰へと向かった。
穏やかな陽射しが降り注ぎ、中庭を優しく照らしている。
木陰の近くまで行くと、見慣れた姿が視界に入ってきた。
天使のような寝顔ですやすやと眠っているシルバー先輩の姿だった。

「アイツ、ぐっすりなんだゾ」
「とりあえず、そっとしておこうか」

眠っているシルバー先輩を横目に、私はお弁当箱を取り出した。
今日の昼食はグリムの大好きなツナとトマトのサンドイッチとハムとチーズのサンドイッチだ。
お昼に食べるサンドイッチは、具沢山で少し大きめに作ってある。
ボトルに入った紅茶をカップに注いでいると、シルバー先輩が目を覚ました。

「はっ……、また眠ってしまった……
「あっ、シルバー先輩。お昼頂いてます」
「そうか、わかった……あっ」
……シルバー先輩、おひとついかがですか?」
「すまない、眠っていたら昼食のことをすっかり忘れていた……

私はそっとラップに包んだサンドイッチを手渡した。
サンドイッチを受け取ったシルバー先輩は、耳まで真っ赤になっていた。
キリッとした騎士のような面差しで、クールな印象が強いシルバー先輩。
そんな先輩だけど、何処か抜けたところがあって可愛いと思ってしまう。
中庭の木陰でちょっとしたランチ会が始まった。

「これはニコルが作ったのか? 美味いな」
「ありがとうございます。サンドイッチはよく作るんですよ」
「ニコルの作るサンドイッチは美味いんだゾ!」
「そうだな。親父殿も料理が上手ければな……

紅茶を飲んでひと息ついたシルバー先輩は、しみじみとした口調でそう言った。
先輩のお父様はどんな御方なのだろう。
先輩にそっくりな凛々しいおじ様なのだろうか。
少し話を聞いてみることにした。

「親父殿の料理の作り方は破天荒だ。レシピを無視して思うがままに作る」
「そっ、そうなんですか……
「ニコルには絶対に食べさせられないな」
「はい……

私が頭に思い描いているシルバー先輩のお父様像からは、随分とかけ離れた印象だった。
もしかしたら、料理の才能だけが壊滅的なのかもしれないけれど。
もう少し話を聞こうとしたその時だった。
シルバー先輩が突然ふらっと倒れ込んだ。

「すまない。また眠くなってしまっ……くぅ……
「シルバー先輩……! 大丈夫ですよ。まだ時間もありますし、私がそばにおりますから」

気付けば、私はシルバー先輩をぎゅっと抱き締めていた。
シルバー先輩の頭を自分の胸に押し当ててみた。
眠りにつく時に近しい誰かの心音を聴くと安心する、ニコル・イーリスがそう言っていたのを思い出したのだ。
私はシルバー先輩のお母様でも何でもないけれど、無意識のうちに心音を聴かせるという行動を取っていた。
シルバー先輩との距離の近さに心臓の鼓動が速くなっていく。
それでも、先輩は小さな子供のようにすやすやと眠っていた。
私まで微睡みそうになった時、誰かの足音が聞こえてきた。

「相変わらず、仲睦まじいのう」
「リリア先輩!」
「そう驚くでない。お主たちの仲は既に知っておる。話はシルバーから聞いておるからな」
「そうなんですね」

リリア先輩がゆっくりと眠っているシルバー先輩の方へと近付いていった。
幼子を慈しむ親のような表情を浮かべながら、リリア先輩はシルバー先輩の頭をそっと撫でた。

「愛いやつめ。まるで赤子じゃのう。どうやら、お主の心音を聴いて安心しておるようじゃ」
「シルバー先輩が……ですか?」
「その通りじゃ。ニコル、お主たちの恋路を見守らせてもらえぬか?」
「えっ……

リリア先輩の言葉を聞いて、私は少しだけ戸惑いを覚えた。
飄々とした小悪魔的な美少年といった雰囲気からは想像もつかない、聖母のような慈愛の微笑みをリリア先輩は浮かべていた。

「ヒトの子の男女が愛を育む姿を見たいという、わしの我が侭を聞いておくれ」
「リリア先輩、もちろんです」
「感謝するぞ、ニコル」

軽音部の先輩であり、ディアソムニア寮の副寮長であるリリア先輩ならば、きっと優しく見守ってくれるだろう。
そう信じて、私はリリア先輩の言葉に頷いた。
リリア先輩と話しているうちに、シルバー先輩が目を覚ました。

「親……リリア先輩!」
「やっとお目覚めのようじゃな。もうすぐ始業じゃぞ」
「はっ、はい。ニコル、ずっと俺を支えてたのか? 重くなかったか?」
「私は大丈夫です。さぁ、校舎へと戻りましょうか」

いつの間にか昼寝をしていたグリムを起こして、私は立ち上がった。
シルバー先輩もリリア先輩に促され、教室へと戻る準備を始めた。
放課後にまた会う約束をして、私達はそれぞれの目的地に足を向けた。
教室の前でエースくんとデュースくんが待っているのが見える。
もうすぐ始まりの鐘が鳴る。


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