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【正常性バイアス担当主任用編集データ】

全体公開 5035文字
2020-11-16 00:27:04

下記の資料は哲学人【正常性バイアス】担当職員及び当職員の許可を得た者のみ閲覧を許可します。







名称:誤報効果 false alarm effect※推定
仮名:フォルス Pholus

能力:当哲学人の名前を知っている状態で、当哲学人の発言を聞いた他者は発言内容が全て虚偽であると感じる。※推定

解説:当哲学人の外見は十歳程度の少女です。変身能力を有しておらず、発生当時から成長していないと主張しています。
 哲学人【誤報効果】であると名乗りますが、同等の意味を持つ【狼少年効果】と呼称されることは拒みます。

 警報器の音、および救急車や消防車のサイレンに対して過敏な恐怖反応と多弁を示します。多弁の内容は主に危険性についての注意や、避難を促すものです。

 重度かつ無意味な虚言癖を持ちます。
 しかし当哲学人の嘘はそのどれもが嘘だとわかるようなものであり、嘘と真実の区別が容易ですが、能力発動条件下にある対象は明らかな真実すらも虚偽であると認識します。
 上記の多弁と相乗することで、当哲学人による注意喚起を虚偽と認識することによる対処や避難の遅れが発生します。

 虚偽に対する罪悪感を強く持っており、指摘されるとすぐさま謝罪します。しかし、指摘した人物との今後の接触を避ける、口数の著しい減少等、研究の妨げになる可能性がある行動が増えるため、推奨しません。

対応:仮名として『フォルス』と呼称。表向きには哲学人名『確証バイアス』【正常性バイアス】として収容する。
 管理は主に副担当が行い、主任担当職員のみが当資料を閲覧可能にする。既に正式名称を知っている者、正式名称を言い当てた者は当資料を閲覧し、正式名称の口外を禁ずる。
 共有可能な情報は虚偽用資料『確証バイアス』【正常性バイアス】に書き込む。

 ■■大学附置哲学人研究所人型哲学人収容室にて収容。

発見経緯:■■■■/■/■■ ■■県■■■市にて発生した大規模火災において、通報を受けた時点で■■件の家屋が全焼済みであったことから異常事態として哲学人犯罪取締課に通達。
 調査の結果、通報が遅れた理由として当哲学人の名が上がったため確保。
 その後の聞き取り調査で矛盾した証言を繰り返したとして長期拘束後、外部協力者の指摘により能力の存在が判明。正式名称の知識の有無が能力発動条件であると仮定し再調査を行う。
 接触する職員が当哲学人の正式名称を知らない環境を保持するため■■大学附置哲学人研究所に移送。

実験記録
日付:■■■■/■/■■
方法:録音された当哲学人の虚偽発言を、能力発動条件未達成(以下α)の人物ならびに条件達成済み(以下β)の人物が聞く。
結果:α-虚偽であると回答。
 β-虚偽であると回答。
考察:わかりやすさを重視し『烏は白い』と発言させている。

日付:■■■■/■/■■
方法:録音された当哲学人の正しい発言を、αならびにβが聞く。
結果:α-真実であると回答。
 β-虚偽であると回答。
考察:わかりやすさを重視し『烏は黒い』と発言させている。
 βは『誤報効果はよく虚偽発言を行うためこれも虚偽であるはず』と認識した。烏に対する認識自体に異変はなく、βに烏の色を質問すると黒と答えた。この矛盾を解消する合理的な思考は行われず、当哲学人の発言が正しいと納得しても、感情的な面での疑心は消えない。
 誰が発言したと思っているかが重要であると思われる。

日付:■■■■/■/■■
方法:録音後加工された当哲学人の正しい発言を、録音された音声が誰の発言であるかを伝えていない状態で、αならびにβが聞く。
結果:α-真実であると回答。
 β-真実であると回答。
考察:わかりやすさを重視し『空は青い』と発言させている。
 やはり当哲学人の発言であると知る必要があるようだ。

日付:■■■■/■/■■
方法:録音後加工された一般職員の正しい発言を、録音された音声が『他の研究所に収容されている誤報効果のものである』と伝えた状態で、αならびにβが聞く。
結果:α-虚偽であると回答。
 β-虚偽であると回答。
考察:わかりやすさを重視し『唐辛子は辛い』と発言させている。
 名称が問題らしい。名前さえ変えれば良いのではないか。




対話記録
日付:■■■■/■/■■
対象:■■■研究員
目的:収容時の意思確認。
■■■研究員「それでは、これから君は研究所で暮らしてもらいます。大丈夫ですね?」
当哲学人(頷く)
■■■研究員「貴方の情報は、取締課の人達から聞いてます。運が良いことに、似たような体質の哲学人がうちには数名いますから。彼らと話せるようにこちらとしても取り計らいます」
当哲学人(頷く)
■■■研究員「質問などはありますか?」
当哲学人「あのさ」
■■■研究員「はい」
当哲学人「私は、燃やしてない」
■■■研究員「あー……私の役割は、貴方を収容することです。研究所に」
当哲学人(俯く)
■■■研究員「事件について取り調べをするつもりはありません」
当哲学人「でも、私がやったって、思っただろ」
■■■研究員「それが貴方の能力だと、聞いてます」
当哲学人「そうだけど。あのさ、それなら」
■■■研究員「はい」
当哲学人「私は、哲学人じゃない」
■■■研究員「……嘘ですね」
当哲学人「そうだよ嘘だよ! なんっ、で、全部逆に聞くくせに、あのなぁ!」
■■■研究員「落ち着いてください」
当哲学人「うぅ……うん」

(当哲学人は俯き、机に体重を預けながら、■■■研究員から目を背ける)

当哲学人「私の、せいで。怪我した人とか……いるじゃんか」
■■■研究員「私は事件についての情報は、持ってませんので」
当哲学人「いる! いっぱい燃えた! それで……家も、無くなった人、いるし」
■■■研究員「そうなんですね」
当哲学人「それで、怖くて……知らせたのに、誰も、信じてくれなくて……知らせたのに」
■■■研究員「貴方は……自分の体質について、どのくらい知っているんですか」
当哲学人「言っても信じないだろ!」
■■■研究員「だとしても、貴方が何と答えたのかの記録は残ります。私はもう無理ですが……能力の影響を受けてない人が聞けば、あるいは」
当哲学人「……私のことを知ってる人は、私のことを信じない。それだけ。だって、私は……狼少年が言ったことなんて、全部嘘に決まってるから」
■■■研究員「……参考にします」
当哲学人(頷く)
■■■研究員「それと……こちらの推測なんですが、貴方の名前を知ることが、原因だと思われてます」
当哲学人(頷く)
■■■研究員「研究所では、貴方の本名を知るのは私だけの予定です。別の名前で呼ばせてもらいますね。収容理由も適当に考えます」
当哲学人「……名前」
■■■研究員「といっても、哲学人が名乗らないことは自然に反しますから。そこを誤魔化すために、貴方の英名から取りました。フォルスってどうです? スペルは変えますけど、ほぼそのままです」
当哲学人(頷く)
■■■研究員「少しでも、過ごしやすい場所であるように努めます」
当哲学人「……私って」
■■■研究員「はい」
当哲学人「結局、嘘、吐かないと……駄目なんだな……
■■■研究員「……わかりません」


対話記録
日付:■■■■/■/■■
対象:哲学人数名。
目的:自由時間の会話。重要性が高いと判断し記録。
(哲学人イドラ、アポフェニアが談笑しているところに当哲学人が現れる)

イドラ「おー、お前こないだ来た奴だろ。名前は?」
当哲学人「え、あ、誤報効果……あ!」
イドラ「マジ? まーたそういう奴」
アポフェニア「えっ、なになにイドラの子?」
イドラ「哲学人に子供なんてできるんでしたっけねぇ」
アポフェニア「物は試しってやつ?」
イドラ「やめろ」
当哲学人「あ、えー、えーと、ごめん嘘言った! 確証バイアスって名前!」
アポフェニア「あ、バイアス系? 親戚じゃーん、よろしくぅー。私アポフェニアね。で、こっちがイドラ」
イドラ「どーも。アンタ、人間名は?」
当哲学人「えっ、あ、あの、フォルス、って」
イドラ「ふーん。お前の担当誰?」
当哲学人「ん、帽子被った変な人」
イドラ「あいつは担当持てねぇって聞いたけど」
当哲学人「ははっ、えと、ごめん嘘言っちゃった。■■■■さん」
イドラ「あいつかー。話したことねー奴だったかな」
当哲学人「そ、そう」
アポフェニア「ここは能力効かない感じかな?」
イドラ「お前はそうだろ」
アポフェニア「私はね。イドラって素で思い込みするんだよ面白いねぇ」
イドラ「抗哲機とか持たされてねぇ?」
当哲学人「さ、災害時の、あれ、だから。大丈夫、今大丈夫」
イドラ「……ふーん?」
当哲学人「え、あ、あの、だ、駄目?」
イドラ「いや。なあフォルス、今自由時間か? 暇なら遊んでやるよ」
当哲学人「え」
イドラ「おーい、新入りが来たぞー」
当哲学人「うわっ」

(遊んでいた年少哲学人数名のところへ当哲学人が連れていかれる)


■■■■/■/■■
収容の経歴から、【正常性バイアス】なのではないかという指摘が■■■■■■■研究員、哲学人【イドラ】両名から行われました。
現在研究中の哲学人であるとの弁明の後、各資料を修正しています。
確証バイアスの特徴から合致する点のみを見て、よく調べも比較もしなかったミスです。思い込みって怖いですね。




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