魔女のTreat〜Magia Notes Part.5〜

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2020-11-30 23:20:07

ハロウィンパーティーにひとりの魔女がご褒美の贈り物を持って降臨した。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第5話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり

Posted by @natsu_luv

ナイトレイブンカレッジのハロウィンウィークが始まって、早くも今日が最終日だ。
期間中はマジカメモンスターと称された迷惑なお客さんたちに手を焼いたけれど、皆の工夫を凝らした恐怖のもてなしによって、ひとり残らず退散させることができた。
デュースくんから予定通りパーティーが行われることを聞いた私は、グリムと一緒にハロウィンパレードに参加することになった。
私もグリムもオンボロ寮代表として、皆と同じように仮装をしている。
帽子とマントはゴーストさんたちが繕ってくれたもので、私の着ているワンピースはサムさんに安く売ってもらった代物だ。
フロートに乗って、飴玉を紙吹雪のようにばら撒くと、お客さんたちの笑顔の花がメインストリートに咲き乱れた。
パレードの後には豪勢なパーティーが待っている。
ご馳走を楽しみにしているグリムと同じく、私も心を躍らせていた。

パーティー会場であるメインストリートに着いた。
私はさっそく、グリムと一緒に辺りを見渡した。
今回の私の仕事は、ハロウィンウィークの円滑な運営の手伝いだけではない。
ハロウィンウィークが始まる前、運営委員のひとりであるヴィル先輩が軽音部の部室を訪れた。
その時にハロウィンパーティーでの特設ステージで演奏して欲しいというオファーを貰ったのだ。
ヴィル先輩が軽音部の部室に現れた時、私は挙動不審になってしまってカーテンに包まって姿を隠していた。
何も怖いことはないとヴィル先輩に呼び出されて、私は軽音部の先輩たちと一緒に特設ステージでのライブの概要を聞いたのだ。
今回のステージである小さなフロートを見た時、あの時の出来事が頭をよぎった。

「ニコル、そこにいたのか」
「シルバー先輩、お疲れ様です」
「オンボロ寮が大変なことになってしまったな。お前たちには迷惑をかけてすまなかった」
「先輩たちは悪くないですよ」
「そうなんだゾ! オレ様お腹空いたんだゾ!」
「ありがとう。料理のテーブルはこっちだ。案内しよう」

シルバー先輩に連れられて、私達は豪勢な料理が置かれているテーブルへとたどり着いた。
グリムが今にも飛びつきそうだ。
お客さんたちに迷惑をかけないように、私はグリムの側についていることにした。
グリムから目を離さないようにしながら、私もお皿に盛られた料理を取った。
普段はあまり食べる機会のないローストビーフをひと口食べてみた。
一流のシェフが監修したというだけあって、噛むほどに旨味を感じられる。
グリムも口いっぱいに料理を頬張って、にこにこと可愛らしい笑みを浮かべていた。

「どれも美味いんだゾ!」
「グリム、良かったね」
「ニコル、グリム、お疲れ!」
「あっ、エースくんとデュースくん! 二人ともお疲れ様」

デュースくんは今回のハロウィンウィークの運営委員のひとりで、エースくんもハーツラビュルのおもてなし役として活躍していた。
私は二人に労いの言葉をかけ、シャンメリーの入ったグラスで乾杯した。

「あっ、ニコルサン。お疲れ様」
「エペルくん。ジャックくんもお疲れ様」
「あぁ、お疲れ」

エペルくんとジャックくんもグラスを片手に私達の近くまでやって来た。
二人も交えて、もう一度乾杯の音頭をとった。
サバナクローもポムフィオーレも、臨場感のある恐怖のもてなしが印象的だった。
各寮の視察に行った時に、私も少しだけ皆が創り出した恐怖を体験したのだ。
あの時に味わった身の毛のよだつ恐ろしさや、マジカメモンスターたちの慌てふためく姿が面白かったこと、他にも色々思ったことを私は皆にたくさん話した。

「もう私まで震え上がりそうだったよ……あれ、グリムがいない!」
「ニコル、僕も探すの手伝うぞ!」
「デュースくん、ありがとう!」

私としたことがとんだ失態だ。
うっかり、グリムから目を離してしまった。
お客さんたちに粗相でもしたら、大目玉を喰らってしまう。
私はデュースくんと一緒にテーブルを探し回った。
ジェイド先輩とヴィル先輩のいるテーブルの近くに、グリムらしき影を見つけた。
走ってテーブルの近くまで行くと、グリムがジェイド先輩のお皿の上のカルパッチョを食べてしまっている姿が見えた。

「おやおや、すっかり食べられてしまいましたね……
「ふふん、やっぱり他人の皿にのった料理は美味いんだゾ……ふなっ!!」
「こら、グリム! 人様に迷惑かけちゃダメでしょ!」

思わず持っていたキャンディバケットでグリムの頭を小突いてしまった。
さすがに殴られて痛かったのか、グリムは目に涙を浮かべていた。
ジェイド先輩と偶然にもその光景を見てしまったヴィル先輩が呆然としている。
私はグリムを押さえ込んで、ジェイド先輩に向かって頭を下げさせた。

「グリム、ちゃんとジェイド先輩にごめんなさいしなさい!」
「くすん、ごめんなさい……なんだゾ」
「ジェイド先輩、ご迷惑おかけして申し訳ございませんでした!」
「はっ、はい……

呆気にとられたような声で、ジェイド先輩が返事をした。
好物をグリムに食べられてしまったジェイド先輩に対して申し訳ない気持ちを抱いた私は、カルパッチョのお皿が残っているかどうか探しに回ることにした。
ちょうどシルバー先輩とリドル先輩がいるテーブルにカルパッチョのお皿があるのが見えた。
テーブルの方へと歩み寄ったその時、視界がぐにゃりと歪み出した。
世界がぐるぐる回っているような錯覚に囚われて、私はその場に倒れ込んでしまった。



目を覚ますと、私は医務室のベッドにいた。
身体を起こすと、ベッドの上に突っ伏したまま眠っているシルバー先輩の姿が視界に入った。
周りにはグリムとカリム先輩、ケイト先輩、リリア先輩もいて、何処か安堵した様子で私を見ていた。

「ニコル、心配したんだゾ!」
「グリム、ごめんね」
「シルバー、お前も起きろ! ニコルが目を覚ましたぞ!」
「ん……、ニコル……良かった……

シルバー先輩が胸を撫で下ろした様子で呟いた。
私が倒れた直後に何があったのか、リリア先輩が事細かに話してくれた。
私がテーブルの近くで倒れた時、一番近くにいたシルバー先輩が真っ先に私を抱えて医務室へと運んでくれたらしい。
リリア先輩たちとグリムも後を追って、医務室まで駆けつけたそうだ。
ちなみに、他のハロウィン運営委員たちは、引き続きパーティー会場でのおもてなしに勤しんでいるという。
ハロウィンウィークで動き回っていたことによる疲労の蓄積が、私の倒れた原因だったみたいだ。

「お主、ステージには立てそうか?」
「ニコルちゃん、無理はしちゃダメだよ。最悪、オレたち三人でどうにかするからさ」
「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です」

せっかくのハロウィンパーティーでの演奏だ。
軽音部の誰ひとり欠けてはならない。
私もこの日までにグリムやゴーストさんたちに付き合ってもらいながら、歌をたくさん練習した。
練習の成果をきちんと発揮したい。
ベッドから出て、私は地に足をつけてしっかりと立ち上がった。
ステージの開演時間が刻一刻と迫っている。
私達は真っ直ぐにパーティー会場へと戻った。
会場へ戻ると、エースくんとデュースくんが駆け寄ってきた。
二人とも突然倒れた私のことを心配してくれていた。
もう大丈夫だと二人に伝えて、私はステージへと向かおうとしたその時だった。

「ニコル、ちょっとアタシのところにいらっしゃい!」
「ヴィル先輩!」

ヴィル先輩に呼び止められて、私は隅のテーブルへと連れて行かれた。
先輩はメイク道具の入ったカバンを開いて、フェイスパウダーのコンパクトを取り出した。
私の顔面に容赦なく粉をはたいていくヴィル先輩。
その手つきはプロのメイクアップアーティストに匹敵するほどだ。
キャンバスに絵を描くように、先輩は私の顔にアイシャドウとチーク、リップまで重ねていく。
全てのメイクアップの工程が終わったタイミングで、鏡を見るようにヴィル先輩に促された。

「美しくなったでしょう? せっかくの晴れ舞台、疲れた顔で立つだなんてあってはならないわよ」
「ヴィル先輩……ありがとうございます!」
「さぁ、アンタの歌声で人々を魅了してらっしゃい。そして、アタシの審美眼に狂いは無いと証明してもらうわよ!」
「はっ、はい……

ヴィル先輩の言葉に圧倒されたまま、私は小さなフロートの方角へと足を向けた。
フロートの近くで待っていたケイト先輩たちと合流して、私はステージへと登っていった。
ステージの上から見た世界は、何処までも広がっているように見えて、とても壮大に思えた。
観客たちが次々とステージの前へと押し寄せている。
シルバー先輩がエースくんとデュースくんに最前列へと引っ張られていくのが見えた。
先輩方が楽器を持って、それぞれの位置についた。
私もマイクを手に取り、開演のアナウンスを待った。

「そろそろハロウィンステージの時間よ。今年は歌声で人々を魅了する魔女を召喚することができたわ。さぁ、開演よ!」

ヴィル先輩が出した開演の合図を皮切りにして、イントロの演奏が始まった。
ケイト先輩の奏でる悠然としたギターの音色がメインストリートに響き渡る。
奏でられる旋律をリリア先輩の弾くベースの低音とカリム先輩が叩き出すドラムの音がしっかりと支えている。
躍動感のある曲調に変わったタイミングで、ステージの照明が明るくなり、観客たちを見渡せるようになった。
観客たちの大きな声援が聞こえてくる。
エースくんとデュースくんの私の名前を呼ぶ声も、しっかりと聞くことができた。

「皆さん、ハッピーハロウィン!」
「ハッピーハロウィン!!」

開幕はキャッチーなメロディと疾走感のあるリズムが心地良いロックナンバーだ。
観客たちは楽曲にのりながら、マジカルペンの色と同じ色のペンライトを振っている。
後方ではイデア先輩とオルトくんとその他イグニハイド寮生たちが、ペンライトを振り回して体全体で少し変わったダンスを踊っている。
一曲目が終わり、次の楽曲のイントロが始まった。
次はアグレッシブな曲調のメタルナンバーだ。
怒涛のコールアンドレスポンスが展開されるこの楽曲でも、観客たちは熱気を保ったまま合いの手に応えてくれた。
二曲目を歌い上げ、次の楽曲が始まる前に少しクールダウン。
ミネラルウォーターで喉を潤し、いよいよ三曲目に突入だ。



軽やかなギターのメロディから始まるこの楽曲は、グリムが大好きな曲であり、私が軽音部に入部するきっかけにもなったもの。
最前列でステージを見ているグリムがひと際喜んでいるのが見えた。
観客たちも疲れを見せることなく盛り上がっている。
練習に付き合ってくれたゴーストさんたちも、ふわふわと空中に浮かびながら見守ってくれている。
最後のサビを高らかに歌い上げると、歓声と拍手が飛び交った。

「皆さん、本日はお越しいただきありがとうございます! 次の曲がラストです」
「最後まで楽しんでくれるかな?」
「イェーイ!!」

ケイト先輩の呼びかけに観客たちは元気の良い返事をしてくれた。
小気味よいメロディが特徴的なイントロが奏でられた。
突き抜けるような明るいサウンドに合わせて、私は希望に満ちた歌詞を歌い上げていく。
ラストのサビの後は観客たちと大合唱。
最高潮の中でハロウィンステージは締め括られた。

「皆さん、ありがとうございました! ハッピーハロウィン!」
「ハッピーハロウィン!!」

拍手が飛び交う中、私達はステージから降りた。
パーティーの途中に倒れたとは思えないくらいに、私は元気よくステージを動き回りながら歌うことができた。
これも軽音部の先輩たちの演奏と観客たちの声援が私を支えてくれたからだろう。
フロートの陰でシルバー先輩が待っていた。
先輩の姿を目に映した時、身体がふわりと浮いたような感覚になった。
シルバー先輩はよろめいた私をすかさず受け止めてくれて、ぎゅっと抱き締めてくれた。

「ニコル、よくやったな」
「シルバー先輩、ありがとうございます」

シルバー先輩に優しく抱き締められると、溜まっているはずの疲れが一気に吹き飛ぶように感じる。
私達は互いを見つめ合い、口付けを交わし、抱きしめ合っていた。
パーティー会場へと戻ろうとしたその時、見知った気配を感じた。

「シャッターチャンスじゃな」
「リリア先輩!!」

知らぬ間にリリア先輩がドヤ顔でスマホを構えていた。
リリア先輩に続くように、カリム先輩とケイト先輩もフロートの陰までやって来た。
二人とも、私達に労いの言葉を掛けてくれた。
ケイト先輩が嬉々としてスマホを取り出した。
きっと、マジカメ用の写真を撮るのだろう。

「せっかくだし、ライブ成功の記念撮影しちゃおうよ!」
「そうですね。私も賛成です!」
「シルバー、お主も入るといい」
……俺が入ってもいいんですか?」
「いいって、いいって! 大勢の方が楽しいだろ!」

そう言って、カリム先輩がシルバー先輩の背中をぐいぐいと押した。
皆揃って、ケイト先輩のスマホのカメラのレンズの方へと固まった。
最高の笑顔で最高潮の気持ちで、今この瞬間を写真に収める。
合言葉はもちろん、ハッピーハロウィン。


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