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聖なる夜と妖精たち〜Magia Notes Part.7〜

全体公開 ツイステ二次創作 4687文字
2020-12-24 16:09:13

聖なる夜に行われる、妖精たちのパーティーへようこそ。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第7話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり

Posted by @natsu_luv

灰色がかった空に氷の華が舞い踊っている。
もうすぐウインターホリデー、帰る方法がわからないままの私はグリムと一緒にオンボロ寮に残って、学園の暖炉の当番を務めることになっている。
今日の放課後は、軽音部の部室でクリスマスライブに向けての練習をしていた。
練習が終わった後、リリア先輩が私に声を掛けてきた。

「お主、来週の土曜日は空いておるか?」
「あっ、はい。ちょうど空いてます。どうかなさったんですか?」
「マレウスがクリスマスパーティーを開きたいと言っておってな。是非とも、お主に来てもらいたいのじゃ」
「ツノ太郎さんがですか! 良いですね。伺います」

万象の魔導師ニコル・イーリスの潜在意識から生まれた魂だけの存在だった私。
そんな私にとって、初めてのクリスマスパーティー。
想像するだけで心が弾む。
リリア先輩たちもウインターホリデーには茨の谷へ帰ってしまうので、その前にパーティーを開きたいと思ったそうだ。

「せっかくじゃ、パーティーの後はディアソムニアに泊まっていくといい!」
「ええっ!? 女子生徒が男子しかいない寮に泊まってもいいんですか!?」
「心配はいらぬ。マレウスが裏で手を回しておるからのう」
「そっ、そうなんですか……

まさか、ディアソムニア寮長であるツノ太郎さん自身が手を回しているとは。
とんでもない事実を聞いてしまったけれど、無碍に断ることもできなかった。
それに、私自身は初めてのクリスマスパーティーに対する思い入れの方が強かった。
こうして、私はグリムと一緒にお泊まり付きのクリスマスパーティーに出席することになった。

クリスマスパーティー当日。
クリスマスライブを成功させ、期末テストで赤点を回避し、無事にこの日を迎えることができた。
朝起きてカーテンを開けると、オンボロ寮の周りに少しだけ雪が積もっているのが見えた。
着替えとメイクを済ませ、グリムを起こし、朝ごはんの準備を進めた。
グリムの大好きなツナポテトのトーストを作って、はらりと降る雪を眺めながら朝のひとときを過ごした。

「クリスマスパーティー、楽しみなんだゾ!」
「グリムの大好きなご馳走もたくさん出るだろうし、ケーキも食べられるよ」
「ケーキ食べたいんだゾ!」
「そうだね。ディアソムニア寮に着いたら、いい子にしてるんだよ。ツノ太郎さんたちに迷惑かけちゃダメだからね」

グリムをそっと諭して、私は朝食の後片付けを済ませた。
オンボロ寮を出て、鏡舎に向かい、鏡を使ってディアソムニア寮へとひとっ飛び。
初めてディアソムニア寮に足を踏み入れることに、私の心は楽しみと嬉しさのメロディを奏でていた。
しばらくすると、茨の牙城のような荘厳な建物が視界に入った。
茨の魔女の高尚な精神を讃えたディアソムニア寮の姿だ。
門の前にシルバー先輩が立っている。
さっそく、私達は先輩の方へと近付いて行った。

「ニコル、グリム、待っていたぞ。さっそく中へ案内しよう」
「シルバー先輩、お迎えありがとうございます」

日照時間が短いというのもあり、寮全体の景色が仄暗い。
シルバー先輩の後について行きながら、寮の内装にも目を向けていった。
この間行ったハーツラビュル寮とは随分と雰囲気が違っていた。
クリスマスの装飾が施された談話室へとたどり着いた。
魔女の玉座に見立てられた椅子にツノ太郎さんが座っている。
ツノ太郎さんの前まで向かい、私達は挨拶をした。

「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「ヒトの子たちよ、ディアソムニアに来てくれて感謝する。存分に堪能するといい」
「マレウス様、ニコルたちはどちらへ案内いたしますか?」
「そうだな。シルバー、まずはお前の部屋にニコルたちを案内してくれ」
「承知いたしました」

シルバー先輩に連れられ、私達はいったんツノ太郎さんの元を後にした。
先輩の部屋に入るのは初めてだ。
好きな人の部屋を訪れることに対して、私は少しだけ緊張していた。
考えを巡らせているうちに、先輩の部屋へ続く扉が開かれた。
シルバー先輩の部屋は整然としていながらも、ベッドの上に目覚まし時計がいくつか置かれていたり、小鳥たちの餌入れがあったり、随分と可愛らしかった。
ひとまず、シルバー先輩の部屋に荷物を置かせてもらった。

「パーティーの準備は大方できているはずだ。談話室へと戻ろう」
「はい、行きましょうか」

私は貴重品と愛用のギターを持って、再び談話室へと足を向けた。
ツノ太郎さんだけでなく、リリア先輩も談話室にいらっしゃった。
リリア先輩は私達の姿をとらえると、即座に駆け寄ってきた。

「待っておったぞ! 談話室の飾り付けも完璧じゃ。セベクが料理を用意してくれておるから、楽しみにしておくと良い」
「そうなんですね! 楽しみです」
「オレ様早くご馳走食いたいんだゾ」
「はっはっは、もうすぐで準備が整うはずじゃ」

リリア先輩とお話ししていた矢先に、セベクくんの声がダイニングの方から聞こえてきた。
料理の準備が整ったようだ。
私達は揃ってダイニングへと向かった。
ライムグリーンのクロスが敷かれたテーブルの上に、豪勢な料理が陳列していた。

「若様、お待たせしました! シャンメリーもお注ぎしますね!!」
「あぁ、ありがとう。さぁ、皆も席に着くといい」

ツノ太郎さんに促され、私達も席に着いた。
セベクくんが仔犬のような愛らしい笑顔でシャンメリーを注ぎに廻っている。
全員のグラスにシャンメリーが注がれた。
乾杯の音頭はツノ太郎さんがとってくれるそうだ。

「まだ少し早いが、聖なる夜に乾杯しよう」
「乾杯!!」

シャンメリーをひと口飲んだ後、各々でお皿に盛られた料理を取っていった。
今回の料理は購買部で取り寄せた特別なものらしい。
スモークサーモンのカルパッチョとローストビーフのサラダ、マルゲリータピザにフライドポテトと唐揚げといったパーティーメニューの定番が揃っている。
ミネストローネはセベクくんの手作りだそうだ。
こんがりとしたきつね色の七面鳥のローストが、私の食欲を掻き立ててくる。
きっと食べると美味しいに違いない。

「どれも美味いんだゾ!」
「グリム、良かったね」
「ニコルたちが幸せそうで、俺も嬉しい」
「わしもじゃよ。お主たちが幸せそうにしておると、わしらも元気を貰える」

私の向かいに座っているシルバー先輩が、いつものように眉尻を下げて微笑んだ。
シルバー先輩の優しい笑みを間近で見られることは、私にとって小さな幸せのひとつである。
出された料理はどれも美味しくて、次々と食べてしまうくらいだ。

「七面鳥は僕が切り分けよう」
「ありがとうございます!」

ツノ太郎さんはそう言って、いとも簡単に魔法を使って七面鳥を切り分けてくれた。
ハーツラビュルのティーパーティーでも日常の中で魔法が使われている光景を見てきた。
この捻れた世界では当たり前のように魔法が日常生活の中に浸透している。
魔法が使えない私には、いまいち実感が湧かないけれど。
ひとまず、初めての七面鳥のローストを食べてみた。

「美味しいですね。なんだか特別な気分を味わえます」
「気に入ってもらえて何よりだ。やはり、クリスマスパーティーなるものを開いて良かった。ヒトの子たちにパーティーを楽しんでもらいたかったからな」

ツノ太郎さんが深みのある声でそっと呟いた。
色々と話に花を咲かせていると同時に、料理のお皿も空っぽになってきた。
五人と一匹には少し多そうだと思っていたけれど、グリムとセベクくんがたくさん食べるから、あっという間に料理が無くなってしまうのだ。

「さて、そろそろケーキを食べようぞ」
「そうですね」

リリア先輩が嬉々としてキッチンへケーキを取りに行った。
一体どんなケーキが出てくるのだろう。
そわそわしながら待っていると、何やら大きな物音が聞こえてきた。
物音が鳴り止んだタイミングで、リリア先輩がケーキを持ってきた……はずだった。

「メリークリスマスじゃ!」
「きゃあぁぁっ!!」
「ふなぁ〜〜〜〜っ!!」

リリア先輩の手中にあるケーキのような何かは、食べ物由来のものとは思えない色をしていた。
黒とライムグリーンといったディアソムニア寮を思わせるカラーリングの土台に、茨のような触手のような蔦がうごめいている。
とても食べられる代物ではない。

「親……リリア先輩! ニコルたちには刺激が強過ぎます!」
「リリア様! ケーキならば既に僕が買ってあります!! お掛けになって待っててください!!」

セベクくんが慌ててキッチンの方へ走っていった。
リリア先輩特製のケーキらしきものは、シルバー先輩に回収された。
化け物のようなケーキのあまりのおぞましさに、グリムがすっかり涙目になっている。
私はグリムを慰めながら、クリスマスケーキの登場を待っていた。

「グリム、怖かったね。もう大丈夫だよ」
「ぐすん、ぐすん……
「リリア、あまりヒトの子たちを怖がらせるんじゃない」
「なんじゃ、つまらんのう」

ツノ太郎さんに諭されたリリア先輩は、少し拗ねたような顔を見せていた。
しばらくすると、セベクくんが温かい紅茶とクリスマスケーキを運んできてくれた。
ツノ太郎さんはホールケーキがあまり好きでないようなので、きちんとカットされたものがお皿にのっている。

「お待たせしました!!」
「うわぁ、可愛い!」
「セベク、よくやったな」
「若様、ありがとうございます!!」

ブッシュドノエル、バニラアイスとベリーがトッピングされたワッフル、クリスマスツリー型のアイシングクッキーがお皿に可愛く盛り付けられている。
私達はセベクくんの器用さとセンスの良さに感心した。
このケーキたちも購買部で取り寄せた特別仕様のものらしく、中でもブッシュドノエルは有名パティシエが作ったものらしい。
ブッシュドノエルはショコラの芳醇な香りが漂い、なめらかで程よい甘みのクリームとスポンジが上品な味わいを演出してくれている。
アイスクリームがトッピングされたワッフルは、ディアソムニアでは定番のスイーツらしい。

「オレ様幸せなんだゾ」
「グリム、すごく良い笑顔だよ。スイーツ美味しいね」
「気に入ってもらえて嬉しいぞ、人間!!」
「セベクは相変わらずだな」

スイーツプレートを褒めてもらえて上機嫌なセベクくんに対して、シルバー先輩が微笑んだ顔で呟いた。
ケーキを食べた後、私達は談話室へと戻った。
私はパーティーのお礼にギターの弾き語りを披露することにした。
オンボロ寮ではグリムやゴーストさんたちがお客さんとして歌を聴いてくれる。
今日はディアソムニアの人たちが観客だ。
私は声高らかに歌い上げ、ギターを弾き鳴らした。

「ニコルの歌声は心地良いのう」
「あぁ、心が安らぐ」
「もっと聴かせるんだゾ」
「ニコルが喜んでくれて良かった……すう……
「こら、シルバー! 寝るな!」

グリムを膝に乗せたまま、シルバー先輩が眠ってしまった。
セベクくんが少し声を抑えながら、慌ててシルバー先輩を起こしている。
ツノ太郎さんとリリア先輩は終始笑顔だった。
またひとつ、思い出のアルバムに楽しい出来事を載せることができた。
ディアソムニアの夜は長い。
ゆったりとした時の流れに身を任せながら、私達は聖なる夜を楽しく過ごした。


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