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クリスマス・クッキー

全体公開 6024文字
2020-12-25 23:32:26

露風が童話組やロシア組とクッキーを焼く話です

Posted by @akirenge

【クリスマス・クッキー】

帝国図書館はクリスマスの時期になると、毎年クリスマス会を行う。これは利用客向けのイベントであり、今年はクリスマスにはしないが、
クリスマス会である。三木露風は厨房を借りて、エプロンをつけ、材料を確認していた。

「こんなものですね」

クリスマス会はクリスマス関係の話を朗読したり、子供たちにお菓子を配ったりする。クリスマス関係の展示もしていた。
海外文豪が増えてきたため、諸外国のクリスマスを取り入れたりもしている。
露風はクリスマス会の時に子供たちに配るクッキーの準備をしていた。敬老会のご老人方に配るクッキーもだ。
今日はクッキーの試作をする日である。どんなクッキーを作るかを決めてから、作って食べる。
クッキー自体はクリスマス会や敬老会のクリスマス会の前日に他の菓子作りが出来る文豪たちを呼び作り、器用な文豪たちに包装も頼む。
寮が多いと料理はロマンスが消え機械作業になっていくというのはどこかで聞いたことがあった。

……出来てないな」

「フェージャ……ほら、言った通りじゃない。出来てなかったよ」

「ドストエフスキーさん、トルストイさん」

厨房に入り、声をかけてきたのはフョードル・ドストエフスキーとレフ・トルストイだった。ロシア文豪コンビである。

「アイツ……司書が今日はクッキーの試作のはずだから貰ってきてって言ってきてな」

「司書さんがですか」

「僕は手元を見ておこうかなって。料理は少しずつ覚えているんだ。カトリックのクリスマス会の準備も、手伝いたいし」

特務司書の少女がクッキーを食べたかったのでドストエフスキーにお使いを頼んだらしい。ドストエフスキーは甘いものが好きだ。
露風の趣味の一つにクッキーづくりがあり、クッキー係になったのもそのおかげだが、彼は露風が作ったクッキーをよく食べている。

「ロシアのクリスマスは一月七日でしたね」

「ナナクサガユ? を食べながらクリスマスを祝おう。ロシアのとは言われたよ」

「そのナナクサガユってのは七つの草が入ったコメを煮たものだろう」

ロシアのクリスマスは一月七日である。これはロシアが使っていた暦が旧暦のものであり、現在の日付で合わせるとこの日になるからだ。
カトリックのクリスマスとトルストイが呼んだのはロシアはカトリックもあるがロシア正教がメジャーだからである。

(イタリアのクリスマス……ナターレも本当は一月六日まで祝うのですが)

日本メインで他の採用できそうなところを採用しつつ国を尊重するとしているイベントではあるが、日本のクリスマスは二十五日に
祝われてからすぐにお正月に切り替わり、正月を三日ほど祝ってから一月七日にナナクサガユである。それに対し欧州では
十二月最初ぐらいからクリスマス関係の行事を行い続け二十五に祝い、イタリア……カトリックの総本山であり特務司書の少女の故郷でもある……
一月六日のエピファニアまで祝い続ける。
なお、ロシアは一月七日だが彼等が死んだ後のロシアの歴史とか見ているとクリスマスが三つになるらしいが、ロシア組のクリスマスは一月七日だから、
それだけ覚えておけばいいとは露風は帝国図書館分館の黒い方の管理者から聞いた。

「露風ークッキー」

「南吉、危ないよ」

「あ、ロシアの二人」

「食べに来たよ!!」

クリスマスについて考えていると、ごんと共に新美南吉が入ってくる。南吉を追いかけるように鈴木三重吉が来て、
追いかけるように小川未明と宮沢賢治も入ってきた。クッキーはまだ出来ていない。これからであり、試作なのである。
露風は思案した。

「それでしたら、皆で作りましょうか」



クリスマス・クッキーの試作はどんな形のクッキーを作るかというのを考えるものであった。クッキーというのは奥が深い。
どんな型を使うか、どんな材料でクッキーを作るかでも違ってくる。
童話組もロシア組もエプロンをつけて……一部はつけさせて……クッキーづくりをすることとなった。
ちなみにクッキーだが生地を寝かせる時間が必要であり、特務司書の少女もすぐに食べたいかもしれないとは思いつつも
そのことは内線電話で伝えておいた。

「甘けりゃどんなのでもいいんだが」

「形も大事だよ。――サンタクロースだね。こっちのクリスマスでプレゼントを配る人」

「ロシアは違うんだよね」

「ジェド・マロースだね。青い服を着たお爺さんなんだ」

露風はクリスマス用のクッキー型を出した。サンタクロースやクリスマスツリーや雪の結晶など様々な形のクッキー型がある。
ドストエフスキーはクッキー型はどうでもよさそうであるが、トルストイの方は意をくんでいた。

「予算は決まっているのでそれ以内にしつつも……どんなクッキーがいいかとかあります」

「ステンドグラスのクッキーとか綺麗だよね。キラキラしているから」

「子供たちが喜ぶクッキーを作りたいし、それだとどんなのがいいなって悩むのも分かるな」

「敬老会のもあるんだろう。そっちも選ばないといけないよね」

予算はそれなりに出ている。
ステンドグラスのクッキーとは焼くときに飴を使うクッキーで、ステンドグラスのような形になるものだ。
三重吉や未明は予定のことをちゃんと考えてくれていた。

「敬老会の方は吉川さんがサンタさんをするんだよ」

「直木さんがお話を読みに行くんだ」

……あの微妙な二人組タッグの話か。そっちに回したのか」

敬老会の手伝いに行く文豪も決めていた。吉川英治と直木三十五だ。南吉と賢治が口々に話している。
ドストエフスキーが言った微妙な二人組タッグの話とは当初、本館の橙髪の司書がクリスマス会に読むようの話が欲しいと
誰か文豪に書いてもらおうと思って探していたら直木と会い、直木が書いたのはいいがとても微妙な大人の男二人組の話だった。
シングルファザーとその相棒の話であったが無駄な爆発が入ったり、謎のアクションがあったり、
最初に読んだエドガー・アラン・ポーが苦情を言ってきたぐらいの微妙さであったのだ。その後の話し合いで別の話が読まれることとなっていた。

「手直しはみんなでやったから。合作みたいになった」

「皆でやると早いですね……私もあの爆発はなぜあったのか分かりません。さて、まずはクッキー生地を作ってみましょうか」

クッキー生地は様々な作り方があるし一番簡単なのはホットケーキミックスを利用することだが、今回は使わずに作る。
今回の材料は食塩を使っていないバターにグラニュー糖に卵に薄力粉、ベーキングパウダーだ。
あらかじめバターはボウルに入れて室温で柔らかくしておいた。鉄板にクッキングシートも敷いてある。

「バターをクリーム状になるまで泡だて器で混ぜると……

いくつか作ってみようとしていたのでボウルに入れたバターは二つ分用意しておいた。トルストイと賢治に一つずつ渡す。
泡だて器で二人はバターを混ぜ始めた。バターがクリーム状になってからグラニュー糖を入れ、白っぽくなるまですり混ぜる。
混ぜ方をきちんとしておかないと口当たりにも影響が出るのだ。

「混ぜてばっかりだな」

「慣れたら結構速攻なのと魔法の道具の電動泡だて器とかあるよ」

「神の道具とか言われているよね」

「今回は使っていませんが、あると便利です」

露風が使わなかったのは考え事をしつつ、ゆったりとやりたかったからであるし、今回は挑戦がメインなのでトルストイや童話組も
電動泡だて器は使わずに作る。白っぽくなるまで混ぜた材料に今度は卵を入れて混ぜる。
ドストエフスキーは見学をしていて、童話組は交代交代で泡だて器で材料を混ぜている。南吉が言う電動泡だて器は電気の力で泡立てる機械だ。
未明も頷いている。
次に薄力粉とベーキングパウダーを篩で振るって先ほどの材料に入れて、今度はゴムベラで切るように混ぜていく。

「生地はこれで完成か?」

「はい。混ぜ終わりましたら伸ばします。そして寝かせます。一時間から二時間ぐらい」

「結構待つんだな」

「ええ。今回はゆっくり作るつもりでしたが、皆さんがいますので。ドストエフスキーさん。生地を伸ばしたら司書さんに渡して”時計”を使ってもらってください」

混ぜたクッキー生地をまとめることでクッキー生地は完成したが、これから寝かせなければならない。
こうすることでクッキー生地が固まるのだが、早めに今回は作ることにする。
食べさせるだけなら冷蔵庫には冷やしてあるクッキー生地があってこれを型抜きして焼く手も考えたが、生地がなかった。ストックしておけば、
誰か焼ける者ならばクッキーを焼いて食べていく。

「許可が出てるんだ」

”時計”とは調速機のことであり、アルケミストが使える特殊なアイテムで、これを使えば時間を進められる。普段は文豪の補修に使ったりするが、
時間を進めることに関しては大抵のことに使えた。

「内線で言っていました」

「なんで俺が」

「フェージャは見てるだけだったから、これぐらいはしてほしいな」

……分かったよ」

賢治が驚いていたが、特務司書の少女も料理をする。作り方によるがクッキー生地は寝かせなければいけないものが多い。
司書室には冷蔵庫があるし、冷やす時間をカットするのだ。童話組やトルストイは生地に打ち粉を振ってから、クッキングペーパーを敷いた台に
生地を置いて麺棒で薄く伸ばした。伸ばすのにもコツが入り、どうにか伸ばしていた。厚さは三ミリほどにする。
三ミリにしてからラップをかけて生地は大きな皿にのせられドストエフスキーに託された。ドストエフスキーは生地を司書に渡しに行く。

「三木さんはどうしてクッキーづくりをするようになったの?」

ドストエフスキーが戻ってくるまでの間、クッキー型を選ぶことにしたがその際にトルストイが聞いてきた。
露風はクッキーづくりが好きである。

「元々は徳田さんがクッキーを作っているのを見て」

「あの人が」

徳田秋声は最古参文豪だ。転生した文豪は必ず秋声の世話になる。そうするようにしている。文豪たちの人数が多くなってきた今、新人文豪が
他の文豪を覚えることも大変な今、秋声を覚えておけば何とかなる……という風にしておいていた。

……司書さんにおやつに食べさせようと焼いたステンドグラスエディブルフラワークッキーが泉さんにガスバーナーで焼かれて喧嘩をしていた時でした」

「ステンドグラスエディブルフラワークッキー」

「クッキー生地を焼くときにくりぬいて、飴玉を置いて焼くとステンドグラス見たくなるの。その上に食べられるお花を乗せるんだ」

「見た目はとても綺麗なんだ」

露風はあの出来事を今も覚えている。秋声と兄弟子である泉鏡花が大げんかをしていて、原因が秋声が特務司書の少女におやつとして
ホットケーキミックスで作ったステンドグラスエディブルフラワークッキーを食べさせようとしたら発見した泉がお茶請けとして食べようと、
持っていたガスバーナーでクッキーをあぶったのだ。泉は潔癖症で有り、食べるものにとにかく火を通そうとする。
南吉と未明が説明していた。ステンドグラスエディブルフラワークッキーは味もおいしい。

「アイシングでコーディングしたアイシングクッキーとかも露風さんが作ってくれるけど、美味しいんだ」

「様々な種類のクッキーがあるんだ。フェージャが気に入りそうだ。僕もクッキーは好きだよ」

「作り方を学び始めたら、凝り始めてしまって」

自分でも作れるのかと想い、作り方を習った。特務司書の少女の教え方が感覚的だったので秋声や他図書館スタッフの手も借りて、
露風はクッキー作りを覚えた。クッキーも中に入れるものによって様々な味になる。
賢治が嬉しそうに言い、トルストイもクッキーは好きだと話す。

「俺も食べたことはあるけど、美味しかったアーモンドが沢山入った岩みたいなやつが好きだ」

「ロッククッキーですね。また作りますよ」

「帰ったぞ」

三重吉はロッククッキーが好きなようだ。露風が好みを覚えていると、ドストエフスキーが冷やした生地を持って帰ってきていた。



冷やした生地をクッキー型で抜いていく。テーマはクリスマスなのでクリスマスツリーや星やサンタクロースなど、
ひたすら抜いて、余った生地をまとめてクッキングシートを敷いた鉄板に並べて余熱をしておいたオーブンで焼いた。
リング型の生地には小さく刻んだドライフルーツなども乗せた。

「後は食うだけか」

「さましてからになりますが。お茶は……

「入れてやる。俺は紅茶にはうるさいんだ」

「クッキー生地をもっていっただけで手伝ってなかったけど」

「今度は一緒にやろうよ。フェージャ」

紅茶はドストエフスキーが淹れてくれるようだ。ロシアの紅茶は濃く入れたものを好みでお湯で薄める。
三重吉が呟くとトルストイが笑顔でドストエフスキーをクッキーづくりに誘っていた。

「手伝ってくださると助かります。配る分は、量が多いので。ラッピングもありますから」

「露風! 手伝うよ。頑張る」

「僕も手伝うよ」

「ラッピングとか任せておいて」

「俺もやる。兄貴分がやらないとな」

それなりに多めに作っておきたいところだ。童話組のメンバーも手伝ってくれるというので助かる。南吉がごんと共に手をあげていたし、
未明や賢治、三重吉も助けてくれる。オーブンがクッキーを焼き上げてから取り出し、ケーキクーラーの上にのせて冷ます。
ドストエフスキーが紅茶を入れてくれて、さっそく、作ったクッキーを食べてみることにした。
食堂にクッキーをもっていき、皆でテーブルを囲む。

「上手にできたよ。美味しい!」

「やった……うまくいった。逍遙さ……先生にも食べさせたいな」

「大事な人に食べてほしいよね」

「俺なら夏目先生かな」

クッキーづくりは成功した。露風も一枚食べてみるが、トルストイも初めてにしては上出来だし、童話組のクッキーもおいしかった。
南吉が喜び、未明や賢治、三重吉は大事な誰かにクッキーを食べさせたいとなっていた。

「まずまずだ」

「もっと頑張るよ」

ドストエフスキーは景気よくクッキーを口の中に放り込み、トルストイが決意を新たにする。露風は和やかに眺めていたが、

――司書さんにクッキーをもっていかないといけませんね」

気づいてクッキーを他の皿に移していく。気が付いてよかったとなった。クッキーは大半が食べれられていたのだ。
作ったクッキーは、とても美味しかったのである。


【Fin】


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