「WE ARE!!」
『315!!』
れじぇが新春メドレー的な中継のしんがりつとめることになった舞台袖のお話です。Pさんキャラがぶっ飛んでます。
@toasdm
「いやあああああああああああああ似合うわあーーーーっ!」
「お前さん、もう少し抑えたらどうだい」
彼女が膝から崩れ落ちるのを、雨彦は呆れて見守るしかなかった。お前さんたまに吹っ切れちまうからな、と漸く呼吸が落ち着いた彼女の目線の高さに合わせるようにしゃがみこみ、雨彦は袴の裾を撫でつけた。
「顔が和風だからかい?」
「いやもう、なんか、うん。はい。めっちゃ似合いますね」
「フッ……そうか」
新春特番の中継で、雨彦たちLegendersが出演するのはほんの五分程度だと聞いている。同じ事務所の他ユニットの面々も全員出演する歌番組で、315プロオールスターズメドレーのしんがりを務めるのがLegendersだ。
「一番新入りの俺達がトリもらっちまっていいのかね」
「その袴優勝なんで最初っから最後まで葛之葉さんでいいんじゃないですかね……」
「お前さん適当が過ぎるぜ」
新年特番らしく、全員がユニットカラーを羽織と角帯に取り入れた共通の袴衣装を充てがわれた。雨彦たちLegendersはブルーグレーの羽織と角帯で、一足先に着替えた雨彦がステージ袖で待っていた彼女に近づくなり、この調子だ。これなら北村と古論が来たら大変なことになっちまいそうだな、と苦笑して、雨彦はインカムのトランスミッターを腰板の脇に据えられながらちらりと楽屋への道を見た。
「……お、っと。北村たちも来たみたいだぜ」
おまたせしましたー、と二人の前に現れた想楽とクリスを見た彼女が、先程見たのと同じような形で膝から崩れ落ちて、二人が慌てて同じくしゃがみこんで、ああ、こんな光景さっきも見たぜ、と雨彦は苦笑する。
「うぅっ……手塩にかけて育てた我が子の晴れ舞台……っ」
「プロデューサーさん、落ち着いてください。アラサーの我が子がいるような年齢ではないかと」
「しかもアラサー二人だもんねー」
「北村くらいの年頃の子だって、プロデューサーにはいないと思うぜ」
「えー僕は結構ぴちぴちだと思うんだけどなー」
「もう皆さんぴちぴちですよ!」
「俺もぴちぴちだぜ?」
ニヤリと笑って雨彦が、キメ顔キメポーズでアピールを始める。
「でしたら私も!」
つられて悪ノリをするように、クリスも髪をかきあげてバッチリウィンクまでキメる。
「もー二人共ー! プロデューサーさんがまたぶっ飛んじゃうからそこまでー!」
「いやああああああああああああ! 全っ!員っ! 顔がいいーーーーッッ!!」
再び荒ぶりだした彼女を三人で宥めているうちに、メドレーは佳境に差し掛かる。小型モニターでそれを確認して、三人はそろそろか、と出番に備えて気合を入れて円陣を組む。
「ほら、お前さんも」
「う、あ、はいっ」
四人で円陣を組み、顔を見合わせた瞬間から、先程までのギャグめいたドタバタがなりをひそめる。
「プロデューサー」
「……うんっ」
すぅ、と鋭く息を吸い込んで、円陣の、そこだけいびつに凹んでしまうほど小さな彼女の体から、特大の声が出る。
「Legenders!!」
全員の目を射抜くように見る彼女の瞳には、彼らはただ「顔がいい」だけのアイドルにはみえていないことを、全員が知っていた。信頼を宿した瞳をあわせて、可能性を信じて、今年も、ずっとその先も――。
「WE ARE!!」
『315!!』
Legendersさんスタンバイお願いします、のスタッフの声に顔を上げ、三人はステージへと躍り出る。
拍手と歓声、新曲のサウンドと輝きの中に飛び出していった彼らの背中を押す時の彼女がどれだけ頼もしいのかを、三人は一度も見たことはなかったがよく知っていた。
今年も、いい年にしようね――。
そんな風に自分たちを見守ってくれている彼女の存在を背に、三人は全力で表舞台へとぶつかっていった。