@Aogami_project
結界のとある冬。
景色は白く染まり、道行く人の口元からは白い息が漏れ出す。今年もいつも通りの、いつもと変わらない季節だ。
その光景は人里でも変わらない。里の魔法使いであるマリーは、道に積もった雪を退けながら、少し低めの位置から覗かせる太陽を見上げた。ごく普通の、何ら変わらない日常である。
——しかしそんな日常にも、やはり変化は訪れる。それも決まって、唐突に。
「我々の望む平和の為に、ぜひ協力を」
そんな文句が書かれたチラシが、人里のあちこちにばら撒かれているというのだ。その騒ぎを聞きつけたマリーは、いち早く異変の臭いを察知する。彼女はそのチラシを片手に、里の外へと飛び出した。
「……って感じよ。明らかに怪しいと思わない?」
「ふーん。……てかお前、ちゃんとドアは閉めろ。寒いだろが」
「別に良いでしょ、どうせ直ぐ出るんだから。それで、どう思う?アズ」
里から遠く離れたとある草原。そこにぽつんと建っている小屋に、彼女は向かっていた。アズールの家である。
「さあ……そもそも、あの森にこんな建物あったか?天楽寺……寺、なのか?」
「私も聞いた事無いわ。でも、ご丁寧に道のりまで示してくれてる訳だし。確認するのは簡単ね」
「じゃあお前がなんとかしてくれ」
「だーめ。あんたも来るのよ」
「俺は寒いの無理なんだ。ほらとっとと行った」
「……来ないなら、このまま家のドア吹き飛ばすわよ?」
「…………。……はぁ、分かったよ。面倒だが、何か異変が起こってそうなのは間違い無いもんな」
そう言って、彼は重い腰を上げた。
突如として頭角を現した、森の寺への旅である。