X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

08_airu

全体公開 6834文字
2021-01-02 20:51:45



藍瑠「この森もやっぱり広いなあ」

藍瑠「結界に迷い込んだ人間の多くが生きて帰れないというのも、なんだか分かる気がするね」

??『そこ!止まれ!』













————————————
華開く木偶の坊

花平 桃子
Momoko Hanahira
————————————

桃子『ここは怨霊殿の敷地だぞ!人間はお帰り願おう!』

藍瑠「ん?あぁ、ここの主と僕は知り合いでね」

桃子「……我々の主の名前は?」

藍瑠「…………ん?」

桃子「嘘ね。何の為にここまで来たの?早く逃げないと……

藍瑠「殺される、かい?それとも君のように傀儡にされるのかな」

桃子『……!ふふっ。気づくのが早いね、人間』

藍瑠「そりゃまあ、全然気配が違うからね。人間に憑依しないと自立できない妖怪なんて初めて見たな」

桃子『私はそこらの妖怪とは違うのよ。魔法使いや寺の連中には屈しない。妖怪として人を食らう』

桃子『この人形だってそうよ。時期が来たら、ちゃんと食べてあげるわ』

藍瑠「……ふう。仕方ないか。あの子らみたく、暴力で解決!ってのはあまり乗り気じゃないんだけどね」

桃子『なにをブツクサと。妖怪である私を前にして、随分と余裕だね?』

桃子『お前はもうここまでだ。我々の屋敷に巣食う、怨霊の一つになるが良い!』


——撃破後


桃子「う、うう……負けた……

藍瑠「残念ながら、僕も普通の人間じゃないからね。普通の妖怪くらいなら負けないよ」

桃子『……この役立たず。ただの人間に負けるなんて情けない』

藍瑠「うーん。残念だけど、それは君の実力だと思うよ。悔しかったら、僕くらいの人間を呪ってみる事だね」

藍瑠「君の人形はよく戦った。君に操られているとはいえ、良い動きだったよ」

桃子『この、人間め……

桃子「…………

藍瑠「……ま、良いや。僕はもう行くよ。ここの主人によろしくね」





藍瑠「んー。方向はこっちで合ってるかな?」

??「おっ、人間か?」













————————————
踊る髑髏の泥人形

スエロ・ツァベラー
Suelo=Zaberar
————————————

スエロ「我らの森へようこそ。よく人間がここまで生きてこれたな?」

藍瑠「うん。まあ僕はそもそもこの森に住んでるからね」

スエロ「へぇ、珍しい。森に住む人間なんて、寺の連中と何処かの忍者しか知らなかったよ」

スエロ「……そんなに強そうには見えないがねぇ?」

藍瑠「まあ、強そうに見せる必要も無いからな」

スエロ「けけっ、面白い人間だ。益々興味が湧くねぇ」

スエロ「どうだい、人間。俺の暇つぶしに付き合っちゃくれないか?」

藍瑠「……嫌だと言ったら?」

スエロ「分かってるだろ?俺は妖怪。元から人間に選択肢なんて与えちゃいないさ!」


——撃破後


スエロ「あぁ、俺の負けだ。強いねぇアンタ」

藍瑠「ふう。やっぱり妖怪退治は慣れないな」

藍瑠「あの子達はいつもこんな事をしてるのか。そりゃ強くなる訳だよ」

スエロ「里にはもっと強い奴が居るのか?人間ってのも随分と進化したもんだね」

スエロ「一昔前は、魔法使い以外の人間はどいつもこいつも軟弱者ばかりだったもんだが」

藍瑠「まあ僕も一応、魔法使いだし。たぶん」

藍瑠「……さてそろそろかな?例のチラシが指す場所は。また戦いにならないと良いんだけどね」





藍瑠「随分と立派な参道だ」

藍瑠「まさかこの森の中に、こんな大きな建造物があったなんてね」

??「む、客人か」













————————————
極楽浄土の大王

橘 豊人
Tatibana Toyohito
————————————

豊人「天楽寺へようこそ。我らの大志に参画せし者よ」

藍瑠「ん?何の事だい?」

豊人「なんだ、チラシを見てやって来たのでは無いのか?」

藍瑠「ああ、チラシは見たけど……ちょっと事情を知りたくてね。なんだかフィッシング詐欺にでも使われそうな文句だったもんだから」

豊人「ふぃ……?なんだかよく分からないが、詰まるところ君は我々を怪しんでここまで来たという事か?」

藍瑠「まあ、有り体に言ってしまえば」

豊人「ふむ、そうか。まあ確かに、そう思われるのも否めないな。太子なら誤解を解いて下さるだろうか」

藍瑠「太子というのがこの寺の主かい?それならぜひとも会わせて欲しいのだけど」

藍瑠「……ああでもどうせ、会いたいのなら俺を倒して行け!みたいなノリなんだよね。分かってるよ」

豊人「え、別にそんな事は」

藍瑠「あまり気乗りしないけど。悪く思わないでくれよ!」


——撃破後


豊人「別に戦わずとも、太子には会わせるというのに。せっかちな人間だ」

藍瑠「ごめんごめん。これまで会って来た妖怪に影響されてしまってね」

藍瑠「確かにそうだ。今までの流れがおかしかったんだよな」

豊人「まあ、良い。太子はこの先にいらっしゃる。彼女から我々の目的を聞くといいさ」

藍瑠「彼女……太子は女性なんだね。君のような強者を部下にするような人だ。相当な手練れなんだろう」

豊人「それは勿論。流石の君でも、指一本触れる事すらできまい」

豊人「……それでは改めて。我々は、君を歓迎するよ」

豊人「人と妖が共存する輝かしい未来を、共に作り上げていこうではないか」





藍瑠「こりゃ凄い建物だ。前に京都に観光した時の事を思い出すよ」

藍瑠「人の気配が一つ、そして幾つかの得体の知れない気配。太子は人の気配の方かな」

??「ようこそ、天楽寺へ」












————————————
万象を聞き取る聖女

厩戸 徳映
Umayado no Tokue
————————————

徳映「貴方は……何やら里の人間と気配が違う。外の世界の人間でしょうか」

藍瑠「ああ、そうだよ。君が太子で間違いないかな?」

藍瑠「探してたんだ。今回の件について聞きたい事があってね」

徳映「いかにも、私がここの長を務めている厩戸と申します。私に用事、ですか」

徳映「ここまで辿り着いたのなら、私の弟子にはもう会ってきている事でしょう。その点においては、私は貴方を信用します」

藍瑠「ありがとう。じゃあ単刀直入に聞くよ。君たちの裏にいる人間の正体は何だい?何をしでかそうとしているのかな」

徳映「……ほう。なぜ我々の裏に人間がいると思うのですか?」

藍瑠「うーん、そうだね。君たちだけじゃちょっと荷が重いと思ったからかな」

藍瑠「ほら、あれだけ大量のチラシを撒くのは大変だろ?腕が筋肉痛になる」

徳映「……分かりました。答えてはくれないのですね」

徳映「しかし貴方は想像以上に頭の冴える方だ。これは期待できます」

徳映「さあ、我々の計画に賛同を。そうすれば貴方も、更に上位の存在へと昇華できる事でしょう!」


——撃破後


藍瑠「……ふぅ、なんて力だ。前に戦った魔族よりも強いんじゃないか?」

徳映「私はそれほど頭が回る人間ではありませんが、力の強さなら自信が有るのですよ。……さて、それでは話してもらいましょうか」

藍瑠「分かったよ、降参だ。戦いに勝ったとは言え、手加減で勝たせて貰ったようなものだからね」

藍瑠「……それじゃあ一つ質問だ。君たちは、あのチラシをどうやって用意したんだい?」

徳映「……成程。そこから推測したのですね」

藍瑠「いやあの、思考が早すぎるよ。まあその通りなんだけどさ」

藍瑠「あのチラシは、この世界では一般に流通していない印刷技術が使われている。結界出身の人間だけで実行するには無理のある話だ」

藍瑠「それにあのチラシの内容……何か引っかかる事がある。僕は外の世界で科学者をやっていてね。その血が騒いだんだよ、何かあるぞと」

徳映「急に抽象的な論になりましたね。態とでしょうか。……いやしかし、概ね正解です。その通りですよ」

徳映「我々はこの計画を、外の世界からやって来た人間と協力して行っている。その人間は貴方と同じ、科学者をやっていたそうです」

藍瑠「やっぱりそうかい。何となくそんな気がしていたんだよ」

藍瑠「それじゃあ、通してもらえるかな。ぜひともその人間と、話をしてみたいんだ」

徳映「ええ、勿論。貴方のような人間が協力してくれるとなれば百人力です」

徳映「彼はこの寺の地下に作った研究室に居るでしょう。ぜひ、力になってあげて下さい」

藍瑠「ありがとう、それじゃあ行ってくるよ。力になれるかは分からないけどね」

藍瑠「……それにしても、さっきから感じるこの気配。明らかに人間のものじゃない気がするんだけど……何だか、嫌な予感がするな」





藍瑠「ひゃあ、何だいこれは。どれも最新の機器ばかりじゃないか」

藍瑠「一体どれほどの研究費を……いや違う、なんで結界世界にこんな場所があるんだ?」

??「誰だい、アンタ」













————————————
人と妖の境目

華堂 飛香
Asuka Kadou
————————————

飛香「里の人間かい?さっそく協力者が現れたのかな」

藍瑠「残念ながらそうじゃないよ。さっきから感じる嫌な気配の正体は君だね」

藍瑠「人間だけれど、人間じゃない。まるで狐につままれたようだよ」

飛香「分かるかい?私はもう、人間を辞めたのさ。今じゃ立派な妖怪よ」

飛香「詳しい事はよく分からないけどね。友人様によると、いでんしがどうこうとか……

藍瑠「遺伝子だって……?そんな事が、可能なのか?」

藍瑠「いやそれよりも。君たちはどうしてそんな事を?この世界じゃいくら凄い論文を出したって、誰も注目してくれはしないのに」

飛香「そりゃあアンタ、我々の大いなる目的の為ってやつさ。太子に聞かなかったの?」

飛香「アンタはどうやら協力者じゃ無さそうだけど。だったらどうして、アンタはここに居るのかな」

藍瑠「さてね。ちょっとした好奇心だよ。僕も昔は科学者の端くれだったんだ」

藍瑠「こういうラボを見るとワクワクする。……このまま友人様に、会わせてくれないかい?」

飛香「ふーん。否定されるのを分かっての発言だね。ちょっとはアンタも戦えるって事かしら」

飛香「ここまで辿り着いたのなら分かるでしょ?妖怪ってのは、力の強い者の言う事しか聞かない生き物なのよ!」


——撃破後

飛香「……想定外よ。こんな人間を遣るなんて、太子はどういうつもりなの……?」

藍瑠「ヒヤヒヤしたよ。ここの機械に傷一つ付けたら数千万が飛ぶからね」

藍瑠「君もまた、ここの部屋を出来るだけ汚さないように戦っていた。もし障害のない地上で戦っていたら、僕が負けていただろうね」

飛香「ふん、そんなの関係ないわ……負けは負けよ。アンタを友人様の元に、案内するわ」

飛香「でも残念ね。私たち太子の弟子は、殺生は何があってもしないけど、友人様はその限りじゃない。……殺されるよ?」

藍瑠「怖いなあ。その友人様ってのは外の人間じゃないのかい?殺人罪だよ、殺人罪」

飛香「友人様は確かに、外の世界出身の人間だけど……私と同じように妖怪へと成った方だから」

飛香「いくら何でも、死体を蘇らせる技術は私達も持ち合わせちゃいないから」

藍瑠「そりゃそうだ。ゾンビになって蘇るくらいなら、人間のままで逝きたいもんだよ」

藍瑠「それにしても、どうやら君達のボスはとんでもない事をしでかそうとしているようだね。……早く行かなければ」

藍瑠「このまま放っておけば、この結界から人間が消えてしまう。そうなる前に、止めないとね」





藍瑠「本当に広いなこの地下室は……

藍瑠「一体ここで何の実験をしてるんだ?まさか核でも使ってるんじゃ無いだろうね」

??「何処かで見た顔だね」













————————————
万物を超えた造形師

クリスパー・スキュルトール
Crispr Sculpteur
————————————

クリスパー「外の世界で会ったのかな。少し昔の記憶に、君の顔が残っている」

クリスパー「まあ兎にも角にも、我が研究室へようこそ。中々立派な部屋だろう?」

藍瑠「立派もなにも、僕は外の世界でここまで充実したラボに出会った事は無いよ。なんて羨ましい」

藍瑠「……じゃなくて。君がここの元締めかい?人を妖怪に変えようとしているらしいじゃないか」

クリスパー「うん、そうだよ。君はどうやら、僕と同じ匂いを感じるな。科学者かい?」

クリスパー「ならば分かるだろう。あの革新的な技術の事を」

藍瑠「なんだい急に。僕は君と、科学者として議論しにきた訳じゃ無いよ?」

クリスパー「まあ待て。君は、我々が人を妖怪に変えようとするその理由を知りたいんだろう?順を追って話すさ」

クリスパー「僕はね、外の世界に居る時からずっと妖怪の研究をしていたんだよ。人間と殆ど形態的には変わらないのに、何故か人間を圧倒する力を有する……そんな妖怪を」

クリスパー「しかし残念ながら、外の世界でヒトの妖怪化に成功した事例は一つだけだった。あの時は、細胞レベルでの妖怪化に成功していたに過ぎなかった」

藍瑠「なんて研究を……人体実験みたいな真似までしていたのかい」

藍瑠「そんな事して、周りの科学者が黙っているとは思えないけど」

クリスパー「だろうね。だから僕は、いつしか大学を辞めて独りで研究をするようになった。……そしてある時、僕はこの世界の事を知ったんだ」

クリスパー「昨年の春の事だった。僕はこの世界へと入り、本物の妖怪を目の当たりにする事で確信した。僕の研究はこの世界で、完全なものへと昇華していくのだと」

藍瑠「その見立ては大当たり。君は自分自身とこの寺の者を妖怪に変えた。……そして今、この世界の人間を全て妖怪に変えようとしている」

藍瑠「そう言うことかい。……惜しいな。君ほどの天才が、どうしてこんな道に逸れてしまったのか。真っ当な研究者として生きていれば、今ごろ……

クリスパー「何を言う。僕はいつでも真っ当さ。僕のこの研究は、これまで人類が望んで来た事を実現するに足るものだ」

クリスパー「妖怪になれば、強さを得られるだけじゃない。永遠に近い寿命を得る事も出来るんだ。……分かるかい?永遠だ」

クリスパー「僕はこの技術を持って、この世界に知らしめる。僕の研究を、人類が望んできた大望を。その為にこの計画は、僕にとっても素晴らしいものになる」

藍瑠「……君の気持ちも、分からない訳じゃない。研究者であれば、自分の研究を世に広く知らしめたいという欲求は当然のものだ」

藍瑠「だけどね、君のそれは危険が過ぎる。君の目的の為に、一体どれだけの人間が犠牲になると思っている?」

藍瑠「残念だけど、僕は君を止めなくてはならない。この世界の人間として……そしてまた、君と同じ科学者として、だ」

クリスパー「うん。きっとそう来ると思っていたよ。残念だけど、君と分かり合えない事は最初から分かっていた」

クリスパー「他の科学者もそうだった。僕のこの夢は、人類全ての希望でありながら、誰にも認められるものでは無かった」

クリスパー「……だからこそ、僕はこの世界で全てを叶える。誰の邪魔にも屈しない」

クリスパー「さぁ行くよ!このラボは僕の庭だ。君の大好きな、科学に翻弄されて朽ちていくと良い!」


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.