@Aogami_project
◇1面ボス
華開く木偶の坊

花平 桃子
Momoko Hanahira
種族:妖怪
怨霊殿に仕える森の妖怪。怨霊殿は基本的に、他の妖怪は警戒して近づかない屋敷である為、彼女のような存在はかなり珍しい。
彼女の"妖怪"としての本体は、彼女の抱える人形である。
沢で洗濯をしていた彼女を乗っ取り、自身の思うままに操っているのだ。そうした意味では、真に人形と言えるのは"人間"の彼女の方かもしれない。
彼女は人間とは言え、もう既に普通の人間なら壊れてしまうような死線を何度も潜っている。人形の持つ妖力によって無理矢理に生かされているに過ぎないのだが、人の形を保ったまま生き続けるという事を可能にする人形の実力は相当なものだろう。操り人形にする相手によっては、里の魔法使いに匹敵する強大な力を有していたに違いない。幸か不幸か、弱い人間に取り憑いた結果であろう。
彼女がこの屋敷に近付くきっかけとなったのは、今年の夏の事である。
元々彼女は、森の中にある"静寂の沢"を縄張りとする妖怪であり、同じくそこに暮らす怨霊である家弘とは知り合いであった。その彼が、昔の縁で叉夜の下につく事となったため、流れで彼女も屋敷に与する事となったのである。
始めの内は、怨霊でない彼女が屋敷に踏み入れる事は快く思われなかったが、家弘の説得の努力もあってか今は怨霊殿の一員として認められているようだ。彼が何故そんなに必死になって彼女を庇ったのかは判然としない。
ちなみに同性という事もあり、絢とは姉妹のように仲が良いそう。
◇2面ボス
踊る髑髏の泥人形

スエロ・ツァベラー
Suelo=Zaberar
種族:妖怪
神居の森を縄張りとしている妖怪。
泥人形をルーツとしており、片腕が岩のように崩れている。
彼は様々な生き物の骨を収集する事を趣味としており、そのコレクションは膨大な数に上る。その多くは彼が狩った森の動物のものであるが、中には森に迷い込んだ人間のものもあるそう。殺した人間の数としては、森の妖怪でも随一とされる。
そのような彼の趣味もあってか、死体漁りを趣味とするキンカと親交があるそうだ。妖怪特有のコミュニティのでき方である。
ここ十数年、彼は森の中で最も狂暴な妖怪とされてきた。
それは彼の骸骨収集の為に殺された人間が後を絶たないからであったが、天楽寺が森にできてからは多少大人しくなったようだ。当時の魔法使いですら手が付けられなかった彼を、寺の人間が粛清したのである。
そんな過去がある故、彼は寺の人間を快く思っていない。主人公達と寺の近くで会ったのも、彼が何とか寺の弱みを握ろうと偵察していたからであった。
彼が妖怪として生まれたのはそれほど昔の事ではない。ちょうど、レジーナが結界を継いだ頃に存在が確立したと考えられている。
妖怪は基本的に肉親がいない。人間のような生殖は行わず、血を残そうともしない。子孫を残さずとも、自分さえ生き残れば数百年と血を残す事ができるからである。
そんな妖怪である彼は、とある魔法使いが作ろうとしたゴーレムの失敗体が起源ではないかと考えられている。森の妖怪を研究する里の学者の知見であり、確固たる証拠はどこにも存在しないが、もしこの言説が正しければ、彼のような強い妖怪を生み出した魔法使いも相当な手練れであった事だろう。
◇3面ボス
極楽浄土の大王

橘 豊人
Tatibana Toyohito
種族:人間
天楽寺に住む人間。鼓を趣味としており、その実力は結界世界随一である。
同じく太子の下につく光子とは仲が良く、共に鼓を打つ事もしばしばある。同じような主従関係の構図を持つ、怨霊殿の忠と絢とは正反対である。
彼は基本的にいつでも穏やかで、物静かな性格をしている。それは光子と居る時も変わらず、常にそうした態度を崩さない。
彼と光子は元々、里で暮らしていた人間である。
茸狩りをする為に森に入った所を妖怪に襲われ、食われそうになっていた所を太子に救われた。その後、天楽寺で手当てを受けながら太子の考えや志に触れて大層感動し、弟子入りを申し込んだのである。
最初は普通の人間と変わらなかった実力も、稽古をつけてもらう内にみるみる上がっていった。どこか楽観的で抜けていた性格も、段々と変わっていった。
そんな憧れの太子と、一世一代の計画を果たす為、彼は里に例のビラを撒いたのである。
◇3面ボス
光輝燦然の皇女

穴穂部 光子
Anahobe Miko
種族:人間
天楽寺に住む人間。かくれんぼの強さなら結界世界随一である。あまりに強すぎる為、本当に失踪したと思われた事も数回あったそう。
同じ時期に天楽寺に弟子入りした豊人とは仲が良い。普通の人間だった頃も、森や山へ採集によく行っていたそうだ。
ちなみに、兄妹のような関係ではあるが、豊人と実際に血が繋がっている訳ではない。あくまで親友という関係性であるらしい。
寺に入ってから彼女は、元々得意であった気配を隠す技術を磨いた。
隠密行動など、相手に気付かれないように行う必要があるものにおいて、彼女は結界世界でも五本の指に入る実力を持っている。幼少期からのかくれんぼがルーツになるとは、彼女自身も思いもしなかったであろう。
天楽寺の今回の計画は、彼女の里の偵察などを通して綿密に練られたものであった。魔族の強襲を避け、月人の目をかいくぐり、この冬を彼女達は勝負の季節に選んだのである。それは魔法使いの長であるレジーナでさえ、チラシが撒かれるその瞬間まで悟れないものであった。
そうした意味では、彼女はこの異変に与した重要な立ち位置にいた人間と言えるであろう。
◇4面ボス
万象を聞き取る聖女

厩戸 徳映
Umayado no Tokue
種族:人間
天楽寺の長として、太子と慕われる人間。見た目は子供のようだが、実際はしっかりとした大人の女性である。身長の低さは遺伝らしい。
彼女は人間であり、かつ魔法使いでも無い身でありながら、他を圧倒する力を有している。その力は里の一般的な魔法使いや森の妖怪を遥かに超え、結界の守護者や妖怪の長、結界の神々に匹敵すると言われている。
事実、今回の異変で主人公達と戦った際も、彼女は本気を出してはいない。明らかに手を抜いて戦っていたという事は、主人公達にも伝わっていたようだ。
彼女は、この天楽寺の長として弟子達から"太子"と呼ばれている。寺の人間は勿論、森に住む妖怪からもその信頼は厚い。中でも、森に暮らす地蔵の妖怪である垂迹は、彼女の思想に感銘を受け、昨年の春頃から里で布教活動を続けていたらしい。
その信頼の根源は彼女の力の強さもあるだろうが、それよりも彼女が持つ思想に依る部分が大きい。人間と妖怪が手を取り合う、平和な世界を作りたい。その純粋な思いは、種族を越えてあらゆる人妖を惹きつけた。
元々、彼女は隠世の里で生まれた人間であった。
幼い頃から、その特異体質は遺憾無く発揮されていた。記録的な大雨で土砂崩れが起きた時は、大人の魔法使いの腰元にも満たない子供であった彼女が、大岩を素手で退けて人々を救助して大層驚かれたそうだ。
なぜそれほどまで、彼女が強い力を持って生まれたのかは定かでは無い。ただ、結界に囲まれた里ではごく稀に彼女のような特異体質を持って産まれる人間がいる事が知られているらしい。
彼女は成長するにつれて、自分のこの力を人の役に立てたいと感じるようになっていった。彼女にとって、里を守ると躍起になっている魔法使いや、森を跋扈している妖怪は弱く脆い幼児のようにしか見えなかった。
ある日、森で妖怪に襲われ、悲惨な姿となって死んでいる人間を見た。またある日は、魔法使いに蹂躙され死んでいる妖怪を見た。
彼女はそんな、日常のどこかに人知れず挿し込まれる残酷な真実に深く傷付いた。自分の力があまりに強く、周囲があまりに弱かった為に、彼女はいつも他人の死を看取る側にしかなれなかったのだ。
そんな経験からやがて彼女は、人と妖怪の橋渡しとしてこの世界に役立つ事を願うようになっていった。人と妖怪が争う事なく、手を取り合う世界を願った。
彼女は里を離れ、森の一角に小さな寺を建てた。そこで人妖問わず、駆け込み寺のような真似事を始めたのである。それが、天楽寺の始まりであった。
彼女の特異な強さ、そして深い慈愛によって、寺の評判は少しずつ森に広がっていった。
多くの弟子に囲まれ、森の妖怪や妖精とも対等に関わり、彼女の目標は少しずつ形になりつつあった。
今回の計画は、そんな彼女の目標を利用した外の人間が元凶ではあったものの、彼女の果てなく強い夢への希求が異変の原動力となった事は言うまでも無い。
彼女は特異体質を持って生まれた人間として、多くの弟子達に信頼される太子として、この先も自身の夢に向かって努力を絶やさない事だろう。
◇5面ボス
人と妖の境目

華堂 飛香
Asuka Kadou
種族:妖怪(元人間)
太子に仕える弟子の一人。実力では、弟子達の中で最も太子に近いとされている。
彼女は元々人間であったが、今回の計画にあたってヒト妖怪化の手術を受け、妖怪となった。人間だった頃の記憶は一部を除いて消され、今ではただ計画の目的意識、太子への忠誠があるのみである。
ちなみに彼女の背中にある翼のような異形は、この妖怪化に伴って生えてきたそうだ。
人間の頃ですら大抵の妖怪を打ち倒せる程の実力を持っていた彼女は、妖怪となり更なる力を手に入れた。主人公達には惜敗を喫する事になるが、周囲に気を使う必要の無い地上で戦っていれば主人公達と互角、あるいはそれ以上の実力を発揮していただろう。
太子に仕える弟子達には、それぞれ弟子となる過程で様々な過去を抱えている。ある者は妖怪に襲われた所を助けてもらった事、またある者は人間を襲っていた所を制された事、それは弟子達によって多様である。そしてそれは、彼女もまた例外では無い。
彼女は、里の外れにある貧しい家に産まれた。
隠世の里では、安定しない食糧供給と労働力、それらの確保の為から激しい貧富の差が存在している。彼女はそんな里の中でも最も貧しい地区で生を受けた。
そのような環境では、子供は労働力として売られるのが通例である。彼女も周りと同じように、幼いうちに両親の元を離れ、その先で農業に従事した。
彼女はそんな自分の運命を呪う事も無く、ただ黙々と働いた。幼い彼女には、自分が不幸であるという事すら理解出来なかったのである。
そんな日々が幾年と続き、彼女はやがて知ってしまう事になる。
周りと自分は明らかに違う。周りには優しい両親がいる。友人がいる。いつもそんな大切な人達と、笑っている。
私には両親が居ない。友人も居ない。心の底から笑った事なんて、今までの人生で一度も無い。
…………私は、不幸なんだ。
彼女は自暴自棄になっていた。その事に気付いた瞬間、全てが霞んで見えなくなった。
その日の夜、彼女はまるで何かに操られるかのように里を抜け出し、森の奥へと入っていった。妖怪の住処である森に、里の人間が夜に単身で入るのは、当然ながら自殺行為に等しい。彼女は恐らく、その事を認識した上でそのような行動に出たのだろう。
案の定、彼女は妖怪に襲われた。
抵抗する気力は最初から、残ってはいなかった。じっと目の前の妖怪を見つめ、中身の無い空っぽな走馬灯を眺め、彼女は目を瞑る。
——暫くして目を開けた時、彼女の目の前には自身の背丈とそう変わらない女性が立ちはだかっていた。
その女性は妖怪を追い払った後で、彼女にゆっくりと手を差し伸べた。その顔は、慈悲深い笑みで満たされていた。
彼女はその夜初めて、自分の頬を涙で濡らした。
その夜が、彼女——華堂 飛香という人間の、すべての始まりである。
◇6面ボス
万物を超えた造形師

クリスパー・スキュルトール
Crispr Sculpteur
種族:妖怪(元人間)
寺の地下に設けられた研究室の長。元人間であり、外の世界出身でもある。
彼はその部屋で、人間を妖怪に変える為の研究を行なっていた。その研究自体は彼が外の世界に居た時から極秘になされていたようだが、実際にそれが完成したのは結界世界に入ってからであった。
外の世界でも、実際に人間を使った妖怪化実験は行われていた。実験対象は重罪を犯した囚人、身寄りのない孤児など多岐に渡ったが、当然ながらいずれも合法的なルートで手に入れた物では無く、彼は言わば"闇世界の科学者"として研究を重ねていた。
そんな中、実験を繰り返す内にたった一度だけ、外の世界での妖怪化に成功した例があった。実験対象は、両親を亡くし独り身となった女性の学生であった。
彼女は妖怪化の過程であらゆる記憶を失い、今となっては人間の頃に持っていた唯一の趣味に関する記憶だけが残されている。
そんな彼女は、今ではその趣味を大学で披露して生計を立てて暮らしている。かつての絶望の縁に立っていた人間の彼女は、彼が救った数少ない人間と言えるだろう。
彼の実験は、結界世界へと拠点を移す事で更に加速した。
結界に入る頃には、彼自身の身体も妖怪化の段階にあった為、森の妖怪に襲われる事も無く生き延びる事が出来た。しかし彼がそんな中で、天楽寺まで辿り着いて徳映達と関わりを持ったのは全くの偶然である。
彼は天楽寺の者達が掲げる夢について考えた。
彼女らは、人と妖怪が対等となって暮らす事のできる世界を創り上げたいという目標の元、活動を続けていた。
彼にはそんな目標も夢も無かったが、人間である彼女らの妖怪に対する思い、その熱量にはひどく感銘を受けた。そして同時に、この寺を上手く利用すれば自身の研究に役立つのでは、という考えもよぎった。
彼は天楽寺の思想に同調した振りをして、その目的の為の手段として"ヒト妖怪化計画"を提案した。
先ずは自身の完全な妖怪化を達成し、その次に徳映の一番弟子であった飛香にその手術を施した。そしていよいよ、人里の人間を同様に妖怪にする為、治験という体を装って里にビラを撒かせたのである。
彼自身は徳映のような大志は持ち合わせていない。ただ、自身の研究をこの小さな世界で完成させたかったのだ。
その計画は主人公達の活躍により中途に終わるが、彼はまだその夢を諦めてはいない。
この先も、妖怪としての長い長い寿命を使って、果てなき研究に身を投じていくのだろう。
◇EX面ボス
妖を束ねる面霊気

秦神 猿楽
Hatagami Saraku
種族:妖怪
森の妖怪の頂点に立つ面霊気。結界世界における最強の妖怪である。
彼の実力は、妖怪であれば知らぬ者は居ない。ひとたび彼の名を聞けば、妖怪達は総じてその顔を引き攣らせ、震え上がる。彼がたとえ直接の攻撃を加えなくとも、妖怪達にとっては彼の存在そのものが畏怖の対象になるようだ。
そんな妖怪の彼はまた、無類の女好きとしても名を知られている。その対象は人妖を問わず、彼に声を掛けられた女性の数は数え切れない程である。
森の噂では、彼が監視の為に使っている面の数にも届く程なのではという説が有力だそう。
彼は森の妖怪の頂点として、森における秩序を保つ役割を担っている。
森には妖怪と妖精、そしてごく一部の人間や精霊が暮らしている。そのような種族が混在する環境において、各種族の長を立てる事で種族間の争いを防いでいるのだ。
妖怪王として名を馳せる彼、天楽寺の長である徳映、そして結界内の妖精を束ねるバーバチカ。この三人が、森の支配者である。
この三人は定期的にそれぞれの拠点で会議を開催し、森の今後について協議を重ねている。その内容は主に、森で起きた事件の処理や争い事の調停、怨霊殿のような新規住人の対応など多岐にわたるが、少なくとも彼にとっては綺麗な女性二人に会える機会くらいにしか捉えていない。
彼のそんな性格や態度は、根が真面目な徳映には特に嫌われているらしい。二人は会議の後、きまって戦闘という名の喧嘩に発展する。結界世界では定期的に、森を震源とする地震が起きているが、その内の幾らかは彼等の喧嘩の所為である。
彼は主に、森の妖怪の監視および人間の保護を担っている。彼の持つ面を森にばら撒き、それを使って監視をしているのだ。こうした監視の能力に関しては、結界のアカガミの力すら凌駕しており、彼の能力をふんだんに生かした役割と言えるだろう。
彼は元々、人間を積極的に食らう凶暴な妖怪であった。
既に彼は数百年の時を生きているが、凶暴だった頃の彼は歴代アカガミの所有者ですら手を付けられない程であった。
彼に食われるという事はもはや天災のようなものであり、その行為は暗黙のうちに了解されているようだった。
やがて時は過ぎ、いつしか彼は森の妖怪を支配する存在となり、里には結界が張られ自由な行き来が不可能になり、森に定住する強い力を持った人間もやってきた。こうした時代の流れに応じて、彼も変化を余儀なくされた。
このまま妖怪が人を襲い続けては、いずれこの世界から人間が居なくなってしまう。さらに里を覆う結界は、見たままの物理的な障壁というよりも、これを越えた場合容赦なく結界師が排除する、という心理的な障壁の方が大きく、これを破れば結界全体を巻き込んだ戦争に発展する事は明白である。
こうした事実から、彼はやがて人を喰らわなくなった。
妖怪としての闘争本能と、当時好んで食していた人間の女性への好意、それだけを名残りとして、彼は妖怪としての自分を捨て去った。
今では、月に一度の会議で徳映と全力で喧嘩する事が唯一の楽しみになっているらしい。
相手の彼女は、良い迷惑であるようだが。