@Aogami_project
結界世界。
その端の草原に、一軒の小さな家がある。
寺での戦闘を終えた"彼"は、そこに居た。
「入るわよー。……まーた昼間っからダラダラして」
そんな小屋によく慣れた声が響く。彼はゆっくりと腰を上げた。
アズール「……だから勝手に入るなと何度言ったら分かるんだ」
マリー「何よ、私に見られちゃマズい事でもしてるわけ?」
アズール「お前な……ったく。今日は何しに来た?」
マリー「遊びに」
アズール「懲りねぇなお前も。里からここまでよくもまあ来るもんだ」
マリー「まあねー。寒いから入るわよ、っと」
小屋からは先程までとは違って、二人分の声が漏れ出してくる。一通りの世間話を終えた二人は、少しだけ声の高さを下げて本題へと入った。
マリー「それで……寺の件は結局どうなったの?」
アズール「とりあえず今回は流石に諦めただろ。……今回は、だが」
マリー「嫌ねえ、また出動しなきゃいけない羽目になったら。里の人間をみんな妖怪に、なんて冗談じゃないもの」
アズール「まあな。……お前もやっぱり、そう思うか?」
マリー「…………あなたは違うの?」
少しだけ、沈黙が二人のもとに訪れる。
彼はゆっくりと次の言葉を続けた。
アズール「……いや、俺もお前と同じだ」
アズール「ただ、アイツらの言う事は分からないでも無かった。人間だから、妖怪だからと勝手に区別して扱っていた俺達は、もしかしたら間違ってるのかもしれないな」
マリー「あなたにしては妙に真面目ね。急にどうしたの?」
アズール「今日はそういう気分なんだ。人間じゃない奴が差別されるのなら……俺だって同じなのにな」
マリー「……!あなた、今なんて……」
空気が揺れる。
彼は彼女とは違う、どこか遠い虚空を見つめているように見えた。
アズール「いや、なんでも無いよ。……それはそうとお前、まさか手ぶらで来た訳じゃ無いだろ?」
アズール「今日の夜は鍋だ、鍋。ほら、準備手伝えよー」
マリー「……あ、うん。そうね……そうしましょう」
マリー「ていうかあんた、いい加減私にたかるの止めたらどうなの?働きなさいなちゃんと」
アズール「面倒だから嫌だ。別に金なくても生きていけるしな」
マリー「全くあんたは……私が居なかったら今頃孤独死してたんじゃないの?」
アズール「はは……そうかもな。感謝してるよ」
無理矢理に戻した明るい雰囲気が、また小屋から漏れ出てくる。
二人は鍋の準備をしながら、特に当たり障りの無い話題に興じる事にした。
今年の冬は、いつもより少しだけ寒かった。
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ED.01
『記憶は煙に巻かれて』
読了お疲れ様!冬と言えば鍋ですね。
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