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08_AiruED

全体公開 1148文字
2021-01-30 09:29:28

とある森の一角。
音の無い白い景色の中からは、その中にある一軒の小屋を見つける事は難儀であっただろう。そんな小さな家の中に、彼は居た。

藍瑠「ただいま……はぁ疲れた」

藍瑠「ただいま、って言っても誰も居ないんだけどね。寂しいなぁ」

「おかえり」


そんな彼の独り言に、予想外の言葉が返ってくる。彼は下に向けた視線を、唐突に返ってきたその言葉の先に向ける。
その先には、いつか見たとある人間の顔があった。

千代子「ほんとにこんな所に住んでるのね。よくもまあ凍え死なないこと」

藍瑠「君は……森に住む忍者だったか。どうしたんだい、僕に何か用かな?」

千代子「見慣れない家があったから物色してただけよ。まさかこんなボロ屋に人が住んでるとは思ってなかったから」

千代子「ごめんなさいね。貴方に特に用がある訳じゃ無いの」

藍瑠「そう言う事か。別に気にする事は無いよ。ここには偶に、そうしてやって来る人妖が居るんだ。コーヒーでも飲むかい?」

千代子「こーひー?何それ、飲み物?」

藍瑠「うん。まあ一度飲んでみると良いよ」


そうして、二人は暫く他愛のない話題でその場を繋げた。コーヒーの匂いが辺りに漂ってくる頃には、二人の話題はとある"彼女"に向けられていった。

藍瑠「……って訳でさ。現時点では、何処で何をしてるのかも検討がつかない」

千代子「ふーん……。カレン、ってあの金髪の女の子よね。私も一度だけ会った事あるわ」

千代子「貴方達と戦った時にね。でもそっか、最近見ないと思ったら、そんな事になってたんだ」

藍瑠「そうだね。……分からない、後悔ばかりだ。あの時、僕はカレンを救ったつもりでいた。このままずっと一緒に居られると思っていた。……甘かった、何もかも」

千代子「…………後悔、か。私は貴方達の事情を知ってる訳じゃ無いし、詳しく聞くつもりも無いけれど」

千代子「貴方の気持ちは分かる気がする。私も、自分が良かれと思ってした行動で、今も苦しめてしまっている人が居るから」


彼女はそう言って、差し出されたコーヒーを恐る恐る口に運ぶ。
暖房の効かないこの部屋を、コーヒーの香り高い湯気がいくらか暖めた。

千代子「……美味しいわね、これ。また飲みに来ても良い?」

藍瑠「ああ勿論、いつでも来ると良い。今度はクッキーなんかも用意しておくよ」


彼の魔法で作られた、照明用の小さな炎がゆらゆらと振れる。
それはまるで、二人の談話の様子を映しとったように、いつまでも揺れ続けていた。

彼女が帰っていった後、その炎はゆっくりと、音も無く掻き消えた。

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ED.03
『誰にも聞こえない団欒』

読了お疲れ様!寂しげなラストです。
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