@Aogami_project
森から遠く離れた結界の山。
その麓に、周囲の景色に隠されるように鎮座する神社がある。結界管理の中継地として建てられた、椿神社である。
羽珠女「ただいま帰りました……邇々芸様?」
彼女はその言葉に続くであろう、自身の主人の言葉が無い事に違和感を覚えた。
彼は神社の奥で、何やら術式を唱えているようだった。
羽珠女「邇々芸様……ここにいらっしゃったのですね。結界に異常でも有ったのですか?」
邇々芸「む……雅か。よく帰って来たな」
邇々芸「帰って早々に悪いのだが……お前も手伝ってくれ。結界のあちこちで、急激な綻びが出始めている」
彼は彼女の方を向いて話す事も無く、ただ目の前を見つめたまま術を続けている。
その一連の動作だけで、彼女は今起きている事の重大さを悟った。
羽珠女「分かりました。結界の山周辺に出向いて、綻びを修正して来ます。……後は、里の結界師にも連絡を」
邇々芸「いや、連絡は良い。そもそも私は、彼らの連絡でこの事を知ったのだ。山での異常には勿論気付いていたが……」
邇々芸「この異常はどうにも、この世界全体で起きている事らしい。……いよいよこの日が来たのかもな」
羽珠女「この日、ってまさか……」
邇々芸「アカガミが、新たな魂へと継承されたのかもしれない」
刹那、二人の間にある空気が重くなる。
彼女はその空気をなんとか押し返すように言葉を続けた。
羽珠女「そんな……でも彼女は、私と一緒に異変解決に向かっていた筈です。そんな中で継承されたなんて、有り得ない……」
邇々芸「だろうな。だから私も、一先ずは現在の継承者が生きている事を願うが……もし手遅れであった場合。つまりは正当な継承が行われていなかった場合……最悪、この世界が壊れて無くなるかもしれない」
羽珠女「…………!」
彼は、一瞬だけ術を止めて彼女の方を向く。
その表情は至って真剣で、常にこの事態に対する覚悟が出来ていたかのようだった。
彼女はそんな視線に耐えられず、そのまま彼の視線の向こう側に飛び立っていった。
結界の危機はあまりに唐突に、気まぐれに、彼女へと襲い掛かった。
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ED.04
『小さな世界の黙示録』
読了お疲れ様!あまりに不穏なラストです。
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