@acbh_dmc4
2月に入ると今年もまた街のショーウィンドウには愛を模る飾りつけで色めき立っている。
サン・ヴァレンティーノはそれほど大々的なイベントという訳でもないが、特別に定められた日があるならば、ここぞとばかりにいちゃつくのがこの国の習わしのようなものだ。
エツィオは今夜の少し特別な夜をお祝いするために、手ごろなワインを手に取ってカートに入れた。
会計に並ぼうとしたその時、チャララとジャケットの胸ポケットに入れていたスマホが鳴った。
着信を確認すれば、今夜を共に過ごす同居人からのWhatsAppが入っていた。
『良いワインが手に入った。追加で購入する必要はないからディナーの用意を頼む』
折角好みのボトルを見つけて購入しようと思ったのに、既に先を越されていたようだ。
素直ではないエツィオは思わず返信に憎まれ口を書き込んだ。
『ディナーの用意の方が大変だと思うが?』
『デザートは特別美味しいものを用意するよ。E、愛している』
スマホの電源を消してため息を吐き、カートに入れていたワインを戻して店を出る。
示し合わせた訳ではないが、毎年持参する品が被るので、シェアする物を購入する際には必ず連絡を取るようになった。
最初のサン・ヴァレンティーノ等、お互いに全く同じワインやデザートを買ってきて、摘まみもディナーもなかったので結局近くの安い店に入った。
プレゼントも全く同じ店で買った、同じ包装の薔薇と揃いの指輪だった。どちらもオーダーしたと言うのに全く一緒なのには流石に笑った。
旅行に行くにも何処に行きたいだとか、何が見たい等が全部被るのでスムーズではあるが、些か張り合いがない。
なのになぜだかズルズルと付き合いを続けているのは、体の相性が抜群に良かったせいだろう。
初めて体を重ねたのは酒の席での事だが、それなりに互いに理性はあったはずだし、ベッドでの内容はまさに目くるめくもので、文句のつけようもなかった。
(確か、お互いの経験人数や恋人遍歴の話からそういう流れになったんだったか……)
相手は男とも関係した事があるとかで、エツィオは思わず顔を顰めてドン引きしたものだ。
自分も性には随分奔放気味だが、見境ない訳ではない。
後にも先にも男相手はあの男ただ一人。後ろで感じる良さを知った所でそれは変わらない。
適当に酒のつまみやらオードブルを買い込むと、さっさと帰宅し運び込む。
そして数刻もしないうちから同居人である男、もう一人の初老に差し掛かったエツィオも帰宅した。
真っ赤な大きい花束と、腕に先程購入しようとしていたものとは違う、バローロとバルバレスコを渡された。
チラリと男を見やると、エツィオは呆れたようにツッコミを入れた。
「……誰に貰ったんだ?」
「ふふん、何を言う。私が買ってきたのだ。特別な日のワインといえばそれだろう?」
胡散臭そうにエツィオは顔を顰め、男に近寄り首や胸元の匂いを嗅ぐと、合点がいったという顔をして離れた。
まるでマーキングのように強い香水の香りが染み付いている。
「いつもの女か?」
「お前は警察犬になれるんじゃないか?まぁ、バルバレスコの名に相応しい女帝から貰ったが、魅力的なお誘いを断って飛んで帰ってきたんだ」
いけしゃあしゃあと宣う香水臭い男を半目で睨んで、もう一つ突っ込んでやる。
言ったところではぐらかすだろうが、サン・バレンティーノの日の約束ごとを破った男を何とか詰まりたい。ただの嫌味だ。
「髭に口紅がついてる」
「まさか!ちゃんと顔は洗ったぞ?」
洗面所へとすっ飛んでいき、一頻り顔をチェックする男に呆れ、買ってきた荷物をキッチンへと運ぶ。
男の女遊びなど特に気にもならないが、ああやってわざとらしく振る舞うのはただ単にエツィオをからかっての事だ。
「それで、花束もその女帝から貰ったのか。花なんか大量にあっても処理に困るから買わない約束だよな?」
「その薔薇は今夜使うから私が買ったんだ。やはりお前は薔薇の花が似合うからな。それを使って私の甘いデザートのデコレーションをしたい」
つまり、プレイに使うということか。うんざりした顔をして首を振る。
ベッドでひたすら美しいだの芸術品だの囁きたいのだろうが、若い頃の自分と瓜二つの男を前に、自画自賛して楽しいのだろうか。
まぁ、ナルシストの気があるのは今更かと諦める。
ディナーの準備を二人で進める。
とはいっても買ってきたオードブルを年上の男が皿に盛り付けして、それをエツィオがテーブルに並べていく。
わざわざオードブルを皿に乗せ替えれば洗い物が増えると文句を言いたいところだが、男曰く、こういうのは雰囲気の問題との事でどうせ一蹴される。
言い出しっぺに皿洗いを任せれば良いとテーブルメイキングを進めた。
二人で食卓の席について、バローロで乾杯をした。
食事の穏やかな会話の合間に、今日は甘い囁きを素直に互いの口にのせる。
二人の関係は、どちらかが喧嘩を吹っ掛けるかベッド以外では至って和やかなものだ。
元々主義嗜好が同じである上に、お互いの好悪は知り尽くしているし、第三者曰く、コミュ力お化けだ。
そしてなるべくお互いのテリトリーは侵さぬよう、まったく違う人脈を築いているため、互いの生活の報告をするのは至極有意義な時間となっている。
そんな事で、楽しいヴァレンティーノのディナーを終えて、残すところメインの甘い時間を過ごすだけとなった。
洗い物は年上の男に任せ、エツィオは身支度の為の風呂の準備を始める。
湯を溜めるボタンを押して、バスタオルとバスローブを脱衣所に二揃い置く。
念のため殴り合いになった時用に薬箱も置いておく。こと性交に関しては、男の好奇心によって不本意な事をやらされることも多く、喧嘩になる事がしばしばだ。
二人の家の風呂は特注の為、ゆったりと足を延ばせる。
年上の男が白い円形の風呂に入りながら買って来た薔薇を散らした。
「薔薇の花びらを浮かべてゆっくり湯につかるのも乙だろう?」
「一つ言っておくが、後始末は自分でやれよ」
「まったく、色気のない。後始末をお前にやらせた事なんて数えるくらいだろう。それに、どうせお前は明日動けなくなるし」
「動けなくなるまでヤル気なのか。呆れる程元気だな」
広い浴槽だというのに、ピッタリと寄り添い、年上の男に後ろから抱きしめられる。
エツィオが皮肉気に「男同士で抱き合うなどゾッとしないな」と憎まれ口をたたくが、相変わらずその場の空気は甘いままだ。
普段から素直ではないエツィオの嫌味など、ただの照れ隠しだと一蹴し、忍び笑いを零しながらその艶やかな髪に、そして項にと口づけを贈る。
鼻孔に薔薇の鮮やかな香りが立ち上り、まるで煽られる様に体温が上がった。
「風呂で交わるのもたまには良いな」
「堪え性の無……んっ」
最後まで言わせることなく噛みつくように唇を塞ぐと、そのまま貪る様な口づけが始まる。
舌を絡ませ唾液を啜り、時折食んでは悪戯に舌の付け根を擽ってみる。
互いに主導権を握られまいと奪い合う口づけは、最早勝負事に似て、些か物騒な空気を醸し出す。
唇を離せば二人とも息が乱れ、まるでのぼせたようにトロンとした顔つきになっていた。
「ふ、相変わらずお前は可愛げがない」
「そんなもの、あってたまるか。あったとして、それを披露するのはアンタ相手じゃない」
「そうか?私に抱かれるようになってから、他では物足りないのではないか?かくいう私も、お前との相性が抜群に良いお陰でここ最近女はご無沙汰だ」
言いながら不埒な手が、エツィオの左胸から腹を通り、欲望の兆しが見え始めた部分を絶妙に避けて、内腿の付け根をいやらしく撫でる。
また、逆側の手は、右の乳房を育てる様にこね回し始めた。
年上の男の手管は見事なもので、エツィオの敏感な部分を適度に掠めて焦らしながらゆっくりと追い上げていく。
「は、ぁ……今日はいやに焦らす、な?直ぐ打ち止めになるから、延ばしているつもりか?」
「なるほど?私の絶倫ぶりをたっぷり味わいたいみたいだな」
エツィオの止まらない軽口に愉快そうに目を細めて彼の姿を観察する。
煽る言葉はそのまま余裕の無さを伺わせる。薔薇の効果か普段よりもどかしそうに男の手に身もだえ、期待に震える下肢を見下ろし口角を上げる。
徐に睾丸に骨ばった手が這わされて柔く揉まれて腰が震えた。
「大分中身が詰まっていそうだな。今日の日を期待して禁欲でもしていたか?」
「……っ……単に忙しかったからだ!ン、それ、止めろ!」
袋の裏側の筋に指を滑らされ、敏感な部分を弄ばれる。そうかと思えば玉全体を握り込み、痛くならない程度に力を込められてヒヤリとする。絶妙な快感に大きく足を広げて、欲の中心に手を伸ばせば、案の定男からストップがかかった。
獰猛な男の視線が咎めるようにエツィオの顔をジッと見下ろしていて、羞恥を煽る。
その視線から逃れるために、首を伸ばして男の唇に吸い付けばクツクツと口の中で嗤われて苛立ちを覚えた。
同じ記憶を共有していても、己と男は別の人間だ。何もかもを知っていると言わんばかりの態度は腹立たしいものがある。
意趣返しにもならないが、男の舌を痛みを感じるギリギリの力で噛みついてやれば、脅す様にまた睾丸を握り込まれた。
成す術もなく唇を離して思わず睨みつければ、男の瞳には喜色が宿り、凶悪な笑みを敷いた。
「相変わらず、煽るのが上手い」
グイっと両の太股を後ろから抱えられ、直接触れられてもいないのに欲望に猛ったペニスを突き出す様な格好をさせられた。
「見ていてやる。好きに抜いて見せろ」
「なっ」
「でなければ今日はこれで終いだ」
エツィオは目を剥いて男を見やったが、この男は一度言ったならばそれを覆す事はない。
例え男もエツィオ同様に興奮していたとしても、エツィオが従わなければ直ぐに興ざめして放り出される。
これが他の者であれば、誠心誠意労わり、宥めすかして熱烈に愛し合うだろうに、事自分の一部のような相手には容赦がない上に非情だ。
こういう所が大嫌いだと思いつつ、何故いつも離れられないのか、自分の事すら信じられなくなる。
屈辱に濡れた顔を覗き込まれながら、エツィオは己の欲望に手を伸ばすと、一先ず男の事は頭から追い出して、快感を貪る事に集中した。
「従順なのは結構だが、私を排除する真似は良くない。エツィオ、私を見ろ」
ギラギラとした視線は支配欲に塗れてエツィオを見下ろしてくる。
どれだけ情けない姿を晒させれば気が済むのかと苦々しく思うが、男の目を見ながら手を動かすと、興奮が増すのもまた確かだった。
欲に濡れ興奮している時ほど、あられもない姿を晒すのに抵抗はなくなる。そして蔑む様な言葉や態度さえも快感に変わる。
どちらかと言えば己は嗜虐方面が強く、やり込められるなど大嫌いな筈だが、男によって随分歪められてしまった。
男はエツィオの潤んだ琥珀の瞳を見つめ、そこに自分が写っているのを認めると、痺れるような満足感と快感が走った。
熱く勃起して脈打つ雄をエツィオの尻に擦り付ければ、目の前で艶めかしく欲を貪る男から小さな悪態の声がした。
余裕がないのはお互い様なのだが、やはり加齢で多少は落ち着きつつある男の方が、まだ少し余裕があった。
悔し紛れと更なる快感を期待して、男の唇を求める。底意地の悪い男は、分かっていて求めるエツィオの舌を無視し、軽いバードキスしかしてくれない。
まるで本当の鳥の様にちゅっちゅとエツィオの唇と舌を戯れに啄んでは離れていく。
そしてイキそうになれば手を止められて、顔中に宥めるようなキスが降らされる。何度も止められて焦らされ、弄ばれる。これではたまらない。あまり焦らされるのは拷問と一緒だ。
エツィオとて年上の男の本当に弱い所は知っている。
眉根を寄せて、目に涙を溜め、切なそうに強請る視線を投げて、駄目押しに「欲しいんだ、エツィオ」と名前を呼んでやれば直ぐに男は折れた。
「……まったく、お前は」
可愛く見える仕種や素直さはエツィオにとって最大の強みであり武器だ。
互いに欲望を我慢している状態であれば、一見プライドを捨てた様なおねだりも最強の攻め手になる。
年上の男は抱えていたエツィオの太股から手を離すと、腰に手をかけて彼の体を反転させ、向かい合うように膝の上に乗せた。
男の体の上に乗り上げさせれば、湯から出た体には薔薇の花びらでデコレーションが施された。
「美味しそうなトッピングだ。ここに吸い付けば、どんな味がするのかな?」
エツィオの肩に張り付く薔薇の花びらに唇を寄せ、きつく吸いあげて仄赤い所有の証を刻む。
僅かな刺激も、何度もイキそうになっては寸止された敏感な体には、堪らぬ快感となった。
「あっあっ……も、早くっ!」
「そう急くな、私のデザートちゃん。これからたっぷり味わってやる」
乳首のすぐ傍に張り付く花びらに唇を寄せる。ツンと尖って主張をしているピンク色の飾りは無視して、周囲を舐ると非難がましい視線が落とされる。
普段は女ではないのだから乳首など弄るなと言う癖に、毎度しつこく弄り倒していた結果、いつのまにやら其処の刺激の虜になっていたようだ。
肌に消えない花びらを描く様に、身体に着いた薔薇の後を辿り吸い付く。
この恋人たちの日に甘い時間を過ごせるよう、年上の男なりに趣向を凝らしているつもりだ。
エツィオは己こそ嗜虐の傾向にあると思い込んでいるようだが、年上の男から意地悪く攻め立てられると感度が良くなる。
それを年上の男が指摘したとして当のエツィオは否定するだろうが、本来奥底に隠れていた性質を引き出すのは男の密かな悦びだった。とは言え、己がやられる立場になるのはごめんだが。
興奮と熱い湯に当てられたのか、全身をピンク色に染めているエツィオを眺め、それから後ろにある大きな鏡を見やり、ニヤリと笑みを広げる。
力の入らないエツィオの体を支えてやり、男は風呂から上がる提案をした。
「……熱い湯に入りながらでは、のぼせるな。倒れられてはかなわん。一旦出るとしよう」
「もう、上がる……のか?」
「いいや?まだ体を洗っていないからな。まずは隅々まで君の肌を磨いてやろう」
既に男と交わる為の身支度は出来ていたが、それを言って止まる男ではない。
よもやまだ焦らされるのかと切ない顔をすれば、目の前の男は愛しそうに微笑んでエツィオを鏡の前に立たせた。
鏡越しに男の顔を見て、瞬時にその意図を察する。
要は、己の抱かれている様を見せつけながら交わりたいとかそのような事だろう。
浴室の大きな鏡の前で腕をつくと、目の前にはだらしなく蕩け切った顔をした己が映っていた。羞恥心よりも更なる興奮が勝って腰が抜けそうになる。
エツィオの状態にいち早く気付いた男が、しっかりと腰を掴んで支えた。
鏡越しに見つめ合いながら、待ちわびた男の熱が後孔に宛がわれ、ゆっくりと狭いそこに打ち込まれる。
難なく受け入れられた結合部を慣らす様に、ゆっくりと抽挿を繰り返し、徐々に速度を上げていく。
労わられ、様子を見るような腰遣いは、徐々に男の快感を貪るものに変わり、容赦なく尻タブを男の腰に打ち付けられて、水を含んだ音が辺りに響いた。
激しく揺さぶられる衝撃で、鏡を見る余裕もなく徐々に前かがみになってしまう。
腹の下から覗く己の雄が、男に欲望を打ち込まれるたびに激しく揺れている。その様を見て、後孔が歓びに締まったのが己でもわかった。
クツクツと笑われるその声すらも最早愛撫のようで、熱い迸りをもっと寄越せと言わんばかりに彼を受け入れた部分が蠢動する。
背中に覆いかぶさるように彼の肌が触れ、鏡に縋り付く震える腕に、男の熱い手が添えられた。
首や耳に掛かる男の荒い吐息に肌を粟立たせ、何度も男の切っ先に入口の良い所と奥を刺激されて絶頂へと駆け上がる。
直ぐにも出そうになるが、腹に納めている男の欲が、忌々しくもまだ弾けそうもなくて己の欲望の根元を自ら絞めた。
切なさにキュウキュウと中を締め付け、男の欲望を刺激する。
押し殺すような小さな声で男が「そろそろイキそうだ」との言葉を合図に、戒めを解いた。
束の間、吐精に寄るホワイトアウトを垣間見て、同時に中に熱い種子が流れ込む。
一度目の開放を終え、膝から崩れる様に浴室のタイルに膝を着くと、暫し互いに息を整えた。
後孔から男の一物がズルリと抜かれ、中に出されたものが溢れ、太股に垂れる感触がする。
そのわずかな刺激にも感じてしまって身震いをする。
息を整える合間に、男は浴室の戸を開けてさっさと出て行ってしまった。
まさか一回目の事後の情緒もなく、早々にベッドにでも向かったのかと思ったが、何やら浴室の直ぐ手前に置いてあった簡易的な椅子を持って戻って来た。
その突飛な行動に目を丸くして男を見つめていると、気付いた男はまた不敵にニヤリと笑って説明した。
「先ほどの体勢では、満足に淫らな姿を見る事は出来なかっただろう?だが、こうすれば楽しめる」
「まだここでヤるつもりなのか?」
「大きな鏡があって、いくら汚しても良い場所はここだけだろう?セックスの後に部屋の掃除などしたくないしな」
男が椅子に座り、これ見よがしに自慰して見せる。
思わず目の前で行われる手淫に目が釘付けになり、喉が鳴る。
あっという間に欲望を育て上げ、立派にそそり立ったそれを、再び男に背を預ける形で受け入れる。
中に放たれた精の滑りを借りて、すんなりと熱を受け入れると、男はエツィオの両太ももを再び抱えて足を広げた。
「ほら、よく己の姿を見て楽しめ。なるべく鏡から視線を逸らすなよ」
言うなり下から突き上げられて、快感と己の欲も勢いよく跳ねる。
全身を羞恥と快楽の色に染められ、阿保みたいに蕩けて虚ろになった己の目と見合った。
まるでその淫らな姿に見惚れる様に鏡に映る自分から目が離せない。
「はぁ、イイ……締め付けだ……どうやら、気に入ったようだな」
低く掠れる甘い声が鼓膜を震わせる。
耳の後ろを熱い舌がねっとりと舐められ、ゾクゾクする。
そして己の犯される様を眺めている内、尻の結合部から、男の腰のあたりに目がいった。
後ろから抱えられた揺さぶられる体制は、男に取ってはそれなりに大変な姿勢だ。
なるべく椅子に浅く腰掛け上体を倒して上下に腰のみを動かす。
その腰つきは淫らだったが、何故かエツィオの琴線に触れ、思わず失笑した。
「ん、ふふ……」
「ど、うした……?随分余裕そうだな?」
「ふ、きもち、いい……あんたの、努力の、おかげで……ぁ……」
男もチラリと鏡に映る自分の姿を確認して得心いくと同時に、咎めるように激しく腰を動かし始めた。
浴室内に肌を打つ音と獣のような息遣いが響き、鏡を見る余裕を無くしてエツィオの腰が跳ねる。
大方攻め立てられているエツィオよりも、年上の男の方がよっぽど間抜けな格好をしている、「鴨の水かきだ」とでも言いたいのだろう。
こちらがエツィオを楽しませるために努力をしているというのに、憎たらしい奴めと毒づきつつ、愛しい淫靡な姿を楽しむ。