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【サガフロ】明け方未明の境界線

全体公開 サガフロ 2414文字
2021-03-11 21:28:49

ルージュとレッドがマンハッタンのファーストフード店でのんびり話しているだけの小話。ルージュとレッドの赤コンビ好きです。あとルージュに指切りげんまんをさせたかった。

 外の世界に出て一番驚いたのは、外の世界の双子は一緒に育てられているということと、殺し合うような運命なんてない、ということだった。
 資質集めの途中。買い物と羽を伸ばしに、と訪れたリージョン・マンハッタン。買い物を済ませ、ファーストフード店で仲間であるレッドとくつろいでいたその時、目の前に顔のそっくりな二人の女の子が駆け足で笑い合いながら去って行くの、思わず凝視してしまった。
……
「ルージュ? どうしたんだよ」
 食べ終わったハンバーガーの包みを丸めながら、レッドが問いかけてくる。動揺していると思われないように、なるべく普段と変わらない風を装って話し始めた。
「今の女の子たち、双子かな。顔がそっくりだった」
「ならそうじゃねーの。双子以外で顔がそっくりの方が怖いって」
「あはは、それもそうだよね」
 もう一度、彼女たちが走って行った方向を見やる。もう姿は人混みに紛れて見えなかったけれど、先ほどの光景にいかに自分がマジックキングダムというたった一つの世界で生きてきたのかをつくづく見せつけられたのだった。
 彼女たちは一生知ることがないのだろう。双子が生まれてすぐに引き離されて「兄弟を殺せ」と言われる運命を。双子は不完全だと言われ続けることを。
 僕はそういう風に言われて育ってきた。それが絶対の価値観だったから。けれど、こうして外の世界へ出ていろんな人や物と出会って、分からなくなってきていた。キングダムの教えが正しいモノだと信じて生きてきたけど、本当にそれだけでいいんだろうか。もっと他に何かできることはないんだろうか。そう考えるようになってきていた。そんな風にぼんやり考えていると、突然、額に強烈な痛みが走る。
「!? な、なにっ!?」
「ココ、皺寄ってるぜ。ルージュはさ、あんまり難しいこと考えない方がいいと思うんだけど」
 レッドが指で僕の額を弾いた。いわゆるデコピンと呼ばれるアレである。言われたことは確かにそうなのだけど、デコピンの仕打ちと僕より年下のレッドに言われたのがちょっと癪で。つい僕も言い返してしまっていた。
「そういうレッドはもうちょっと考えて行動した方が良いと思うな」
「んだと!」
「ほら、そういうすぐ頭に血が上るところ」
「う……キヲツケマス」
 僕が指摘すればレッドはばつが悪いのか肩をすくめて縮こまっていた。ちょっと意地悪をしてしまったけれど、彼なりに僕を励まそうとしてくれたことは、素直にありがたかった。
「ふふふ。でもありがとう。マジックキングダムを出てきてから、いろいろ考えさせられることが多くて」
「そっか」
「生まれてからずっと、キングダムで生きてきたから。他のリージョンのことはもちろん知識として知っていたけど、実際に訪れるのとはまた違うし」
「確かに。俺も生まれてずっとシュライクで育ってきたからそこはルージュと一緒だって。キグナスに乗り始めて、いろんなところに行って、いろんな人に出会って、良いことも悪いこともあったし。世界って広いんだなーって改めて思ったぜ」
「そうだね。本当に世界って広い。まだ行ったことも見たこともないリージョンだってあるんだし」
 僕がそういった瞬間、レッドの頭上に閃きの電球が見えた気がした。よほどテンションが上がったみたいで、テーブルから身を乗り出して僕に話し始める。
「あ、じゃあルージュの旅と俺の目的が一段落したらさ、未開のリージョンに足を踏み入れてみるってのはどうよ?」
「それは面白そうだね! いつ終わるか分からないけど……いつか、行ってみたいね」
「よっしゃ、約束な!」
「???」
 そういうなり、レッドは手で拳を作ったかと思いきや、小指だけを立てて僕の方へ差し出してくる。いったい何のサインなのだろうか。
「あ、そっか。ルージュは知らないか……つい癖でやっちまった」
「これは何のサインなんだい?」
「これは指切りっていって、お互い約束するとき、その約束を必ず守るときにするおまじない? みたいなもん」
「へえ。こうでいいの」
 見よう見まねで同じように小指だけを差し出す。すると、レッドが小指を僕の小指に絡ませてきた。
「おう、合ってる合ってる! で、こうやって指を絡ませて『指切りげんまん 嘘吐いたら針千本 飲ーます 指切った!』って歌がある」
「針千本!?」
 僕はレッドにされるがまま、歌のリズムに合わせて手を上下に揺さぶられ、歌い終わりと同時に指が離される。その歌の強烈な歌詞に思わず聞き返してしまった。言葉の綾だと信じたい。
「実際やったりしなって! 約束破ったらそれだけひどいことされても文句は言うなよっていう脅しみたいな……まあそんなもん」
「へえ、面白いね」
 ついしてしまった約束だけど、果たして僕は本当に果たせるのだろうか。僕の旅が終わりは双子の兄弟を殺して最強の術士となってマジックキングダムに戻ること。戻った後、また今みたいにこうしてその世界に出かけられるのだろうか。そんなことを考えながら小指をじっと見つめてしまった。
「ま、とりあえずは術の資質集め終わらせないとだよな」
「うん、そうだね。付き合ってくれてありがとう、レッド」
「俺も強くなりたいし、術が使えれば便利だろ。ブラッククロスをぶっ潰すためにも手数が多くあった方が良い」
 言いながらレッドは自分の拳をぎゅっと握る。その目に静かな炎が燃え上がっているのが見えた。ブラッククロスという謎の組織によって家族を失ったレッドは、その行方を追っている。
 家族のために戦う彼と、自分のために兄弟を殺す僕。
 ――ああ、外の世界はあまりにも違いすぎて。時々どうしようもなく泣きたくなるんだ。

「明け方未明の境界線」
Cock Ro:binお題配布bot @CockRobin_botより
二〇一六年七月三日 初出
青の激情 赤の熱情収録


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