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【サガフロ】幸せな夢の中にきっと私はいない【ルーアセ】

全体公開 サガフロ 10 2354文字
2021-03-11 21:46:53

ルージュとアセルスが良い雰囲気になってくれないかなと妄想して早23年経ちました。↓の小説とは時空が違う、別の世界戦ということでよろしくお願いします。でもやっていること(指切りげんまん)は変わらないシュライク出身者とルージュが見たかった。

 仲間たちに頼まれた買い出しの途中、一息つこうとたまたま目に付いた喫茶店にアセルスと二人で入った。僕はコーヒーを、彼女は紅茶を頼み、お互い注文したものが運ばれてから、ふと彼女から尋ねられる。‬
‪「そういえばさ、ルージュは資質集めが終わったら故郷に帰るんだよね」‬
‪「えっ……ああ、うん。そうだね」‬
‪「やだ、ぼーっとしてた?」‬
‪「ごめんごめん。思ったより疲れていたみたいだ。でも、どうしたの突然」
 僕がそう問いかければ、アセルスは困ったような顔をする。そうして手元にあるティーカップを包み込み、視線を落とした。無言の空間。喫茶店内の洒落た音楽と、他の客のお喋りが大きくなった気がした。どれくらい経ったかはよくわからないけれど、しばらくして俯いていた彼女が顔を上げて口を開いた。
……あのね、ルージュ。私、目的がないの」
「目的?」
「その、ルージュみたいに資質を集めて故郷に帰るとかそういうの。私は、ただあの場所から逃げ出したくて逃げて、その先のことを全く考えていなかったから」
 そう言って彼女は悲しそうに笑った。以前、隠し事は苦手だし嫌だから話すね、と言って彼女の素性を聞いて驚いたのは記憶に新しい。
 馬車に轢かれて一度は死んだ身が、妖魔の王の血によって目覚めて半妖となったこと。彼女自身が目覚めるまでに十二年もの歳月が経っていたことを。そして、妖魔の王が支配するリージョン、ファシナトゥールから脱出してきたのだと。
「そっか、今のアセルスはあてのない旅をしてるっていう状況なんだね」
「初めは、自分の家に帰るつもりだったの。でも、そこで十二年も時間が経っていたことを知って、叔母さんに私のことを否定されちゃって……それからずっと、目的もなく旅を続けてるんだ。ごめんね、こんな話」
 アセルスは笑って話を終わらせたが、その目は笑っていない。なんの目的もなく旅を続けていることが苦痛に思っているのだろうか。
 でも、目的があっても、それが良いと言える話ではないのは、自分がよく知っている。だから当てのない旅をしている彼女が僕は羨ましいと思っていたのに。
「アセルス、無理に目的を見つけなくてもいいんじゃないかな?」
「えっ」
「きっとアセルスの旅の目的は、その目的を探す為の旅なんだよ。ほら、リュートだってそうじゃないか」
 仲間の名前を上げて言えば、アセルスはその目をますます丸くする。その表情は、彼女の時を止めた年齢相応の、あどけない少女の顔だった。
……そっか。いいんだ」
「いいんだよ。アセルスなら、きっと見つけられる。それにね、正直僕は君のことが羨ましいと思ってたんだ」
「え、うそ」
「嘘じゃないよ。だって、僕は帰ったらきっと死ぬまでキングダムに縛りつけられる。今だって、自分のために旅をしている訳じゃないからね。術の資質に興味がないわけじゃないけど、これは僕の意思じゃなくて、上からの命令だし」
「そっか……私、ルージュが羨ましいと思ってた。ふふっ。私たち、お互い無い物ねだりしてたんだ」
「そうだね」
 そして、アセルスが今度は心の底から楽しそうに笑った。うん、君に曇った顔は似合わない。アセルスの目的を探す旅、どうか幸多からんことを——なんて思っていたら彼女が自分の目の前に小指を立てて差し出していた。
「え、これは何だい?」
 わけがわからなくて彼女に問えば、彼女は目を見開いて驚いていた。本当に表情がくるくると変わって見てて飽きないなあと思ってしまった。
「えっ、知らないの!? ってそうかリージョンが違えば常識も違うんだった……ごめんね。これは『指切り』って言って、お互いに約束事を守るための仕草、みたいなものなの。ちょっとやってみてもいい?」
「うん、いいよ。僕はやり方を知らないから」
「よし、じゃあ私の真似をして手を出してみて」
「ええと、こう?」
 アセルスに言われるがまま、真似をして小指を立ててみる。すると彼女が自分の小指を僕の小指に絡ませたと思ったら歌のような物を口ずさむ。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます! 指切った!」
「針千本!?」
 アセルスが歌い終わって指を離したと同時に、僕は驚いて大きな声を出してしまった。そんな僕を見て彼女は笑っていた。
「本当に飲むわけじゃないよ。まあ、約束をして破ったらそれくらい酷いことをされても構わないよね? っていう脅し文句みたいなものだから」
「そっか……びっくりした……っていうか何の約束?」
 勢いのままにしてしまったけれど、何のための約束事かまでを聞いていなかった。そしてそれに気付いたようでアセルスもどこか焦っていた。
「あ、えっと、私の目的が見つかるまで、もう少し付き合って欲しいな……って。ごめんね指切りまでさせといて後出しとか!」
「えっ。それならもうしばらく付き合うよ」
「いいの!?」
 言った後で申し訳なさそうにしていたアセルスが僕の方へと身を乗り出していた。その目はキラキラと輝いている。きっとこれが、彼女の生来の性分なのだろう。
「まだ、術の資質集めも時間が掛かりそうだしね。仲間が多いことは悪いことじゃないし。ただ、僕の方が資質が集まったら戻らなきゃ行けないんだけれど……
「それはもちろん、ルージュの目的最優先でいいよ! 私もそれに便乗しているような物だし……
 お互い、最後は尻すぼみのような言い方になっていて、それがなんだか笑えてきて、気が付けば二人で心の底から笑っていた。
 ――いつか、お互い羨むような立場ではなく、同じ目的を持って旅をしてみたい、なんて思ってしまったのだった。


お題bot @odai_bot00より「幸せな夢の中にきっと私はいない」


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