@Alcod_s
2021年3月18日
片付けなければいけない案件を目の前に
通常業務以外へのモチベーションを著しく落とす
恐らく原因と呼べるものは、よくわからない人間関係のせいだ。
2021年3月19日
日付が変わる頃、半野良な飼い猫が弁当箱をもって帰宅した。
飴玉を継続利用せず、部下に運ばせた夕食も綺麗に食べたと報告が上がった。
飴に関しては、効果を薄めたものであればきちんと定期検診すればもらうことができる。
し、日常生活の中で危険と隣り合わせではなくなってきたので食べるタイミングも無いだろうと思った。
何はともあれ、なすべきことはしているので、褒める。
正直、褒める、慰める、喜ぶ、怒る、泣く、そういった自己表現は得意ではなかった。
拾ってきた時よりも怯えが酷くなったように思う、飼い猫の反応。
半野良ならば、自分の居場所を見つけてくれても構わないのだと。
暮らす場所があって、そこに人が集うのならば、ここに居る必要はないのだと。
彼が心から望むのであれば、契約を続けても、破棄をしても、どちらでも良かったんだ。
言葉も、思いも、何も通じない。
一方通行地味たいつものやり取り。
打てば響く鐘のように 嘘でもいいから 一度くらい思った通りに理解して行動してもらえたら
最初を逃してしまっても 次に また次に 更に次で 挽回してくれたなら
それだけで 君に抱いたこの劣等感すらある感情を払拭出来たのかもしれない
心の内がわからない相手への
わずかばかりの期待 が
なけなしの期待 に変わっていく
契約者の君へ
仕事として頼んでいるんだ
一日一回の報告を
何かあったら連絡を
分からなければ相談を
難しいことは何も 言ってない筈なのにな
彼に言った言葉の羅列にも意味が有る
俺だってイヤミで言ってるわけじゃないんだよ
”誰の顔も見たくないときも、時間を共有したくないときも、一人になりたいときだってある”
人として生きていればそれは当たり前の感覚だ。
一人では生きられないが、一人で居たい時間はある。
仕事にも遊びにも何者にも縛られない独りだけの時間。
”時期的に忙しかったりもするし、問題が起きたりもする”
今で言うなら、年度末、年度初めまでの一律した会社としての動き。
経営者側でないとわからないのか、現場に出てみないとわからないのか。
予算を使い切ろうとする業者と、使い切った予算と残った日数でなあなあに仕事をする業者。
工事関係で言えば次の予算が組まれるまでの一ヶ月、作業員は暇になるが、経営者は書類仕事に追われる。
本棟に応接室というものを基本設けておらず、大体偉い人が話に応じるので自室が応接間対応になっている。
話し合いが長引くこともあれば、場合によっては夜間でないと会えないという御仁も居た。
そういった人たちのためにも必要な空間を確保したかったんだ。
”年始からしばらくは環境も状況も、プライベート空間を得ることを許さなかったしね”
そもそも、拾った当初の反抗的且つ薬漬け状態になっている彼の行動監視のために部屋の鍵を手渡したのだ、年始は時間があったので常駐出来たが…1月以降の滞在は基本的に宿泊備品の揃った隣家にてお願いをしている。
何より、圭ちゃんは同居人のことを一応気にかけはするが、情で接することがないので安心していた。
宿泊施設ではない、と言ったのも、これらの理由を書面に書けばわかってくれるんだろうか。
”それに…俺たちは共同生活はできるけど、そもそもあまり懐に誰かを住まわせないんだ”
殺しを生業とする者、という認識が彼の中にしっかり芽生えた筈だった。
であれば、そこに巻き込まぬようにする対策であること。
人の生き死にに其れ程の熱を持たないということくらいはわかっていて欲しかった事である。
懐に入れればそれは弱点ともなり、互いの為にならぬのは一目瞭然ではないか。
彼が己を避け初めてから幾許か、考える時間はたくさんあったんだけどな…。
俺が差し出した有益な可能性は三つだけ
一つ目、今まで通り、こちらに出入りをしつつ契約任務を続けて駄菓子屋に住まう。
二つ目、契約を継続しつつ、そばにと望むならば社宅のひと部屋を私室として賜う。
三つ目、佐々田の案件が全て終了し次第、契約を破棄して駄菓子屋に戻る。
鍵を置いて勝手に傷ついて、欲しかった答えを反故にし出て行こうとした君が選んだのは今まで通りの項目。
別に、逢いに来るなというわけではない。存在が迷惑だと言ったわけでもない。
けれど君は、駄菓子屋に帰るし、そこで寝て過ごすことも少なくないじゃないか。
たまに尋ねれば教えてくれる、ご飯は食べてる、飴は食べてない、という事。
だったら、もう大丈夫なんじゃないのかい?監視が居なくても、此処に縛られて居なくとも。
俺達のことも、他の友人達と同じ様に扱えばいいのに、傍に、と願うがあまりに関係性が歪んでしまっていた。
「最初から、会社の不利益払拭のためだって、言ってるのにな…」
庇護しなければ薬の熱狂的なファンにしてやられてしまう
保護していれば味方となって守ることが出来るだろう
そんな気持ちもあったのは確かだ。故にそれを基盤に契約を結んだ。
ヒトに害された猫はヒトに怯える。
ならば拾ったヒトは、食いつかれても構わず優しくする。
ここは安全だ、と。お前を害するものは何もない、と。
そうして慣れてくれたなら、徐々に誰相手であれ大丈夫なようにする。
誰相手でも大丈夫になったら、野生に返すか、里親に出すかを考える。
やっていることは同じだ
ヒトにも猫にも感情はある
餌で釣られるか人柄に釣られるか
ムチと飴だったらムチの方が多いこの場所に 縋る意味がわからない
愛着は沸く けれどそれは手放せないほどの執着ではない
「難しいな…色々と」
後日正式な書面として、と言ってしまったので、書類を作る。
言葉の裏の意味も込めた、業務的とはいささか言いづらい文面のものを。
2021年3月20日(土)
朝五時就寝
午後四時起床
惰眠を貪り
ゲームをし
少しばかり散歩をして帰宅
2021年3月21日(日)
母が遊びに来るかも知れない。
という前情報をもらっていたが一向に来ず。
夜になったので適当にご飯を食べてテレビを観
午前1時前に就寝…した、筈。(してない)
2021年3月22日(月)
朝目が覚めたら、寝返りが打てなかった。
ぎっくり腰かな…と思いつつベッドから這い出し、起立。
15分ほど直立のまま、しゃがむことも叶わず、腰を回す運動。
しゃがめるようになったところで布団に横になり15分、体を温める。
無事出勤。―――午後、事故復旧の作業中、強風に煽られコーンがすっ飛んだ。
インパクト類も吹っ飛び、危うく車に轢かれそうになった充電池を車道に取りに。
咄嗟に抑えようとした際、重量のあるケースで手首を強打した。
その後は特にこれといった問題もなく、事故復旧終了。ひしゃげたガードレールを持ち帰る。
朝の一件後、特に腰の痛み等はなく、帰宅途中買い物へ。
翌日が早いため、珍しく12時前に就寝。
2021年3月23日
ぶつ切り睡眠だった気がするが、寝覚めはスッキリ、腰も問題なし。
6時半に出社、行く先と同行者を確認、7時、相方の出社を確認して出動。
昨日よりも上がる気温ながらも行く先が山間部なためか、風が吹くと肌寒く、日陰に入ると寒さが増した。
そろそろ三月が終えてしまうので、出来れば仕事を終わらせてしまいたい、と思考しつつバケットに同行を。
16時には作業が終え、1時間かけて帰社。手首が少々痛むが、問題はないだろう。
2021年3月23日深夜から24日早朝にかけて
暴力団△△組の本拠地へお邪魔する
一度目は窓に向かって外部協力者の一人が勢いよく投石
パリーン!という音と共に怒声が聞こえ、下の道まで犯人を探しに来るチンピラの姿が見えた。
奴らが躍起になって犯人探しをしている間に、別角度から極弱めの無味無臭催眠ガスカプセルを穴の空いた窓に投げ入れる。ほかのことに気を取られているなら、新たに飛び込んだ異物になんて気がつかないだろう。
そう思って、協力者に報酬と夜間バスの切符を持たせてその場を後にした。
協力者――金田知之、以前路地で拾った青年は、これを記している頃には故郷に帰れていることだろう。
ガスが室内に蔓延するまでの間、端末を弄りながら繁華街へ。
やる気充填のための抱擁をひとつもらって、時計を確認しつつ数十分経ったところで暴力団事務所へと舞い戻る。
大体のメンツは夢現の世界に旅立ってくれたか。事務所に入る際少々の警戒をするも、動く気配はなし。
事務所の作り的に大きな部屋と社長室的な個室がひとつ、あとは倉庫とトイレと給湯室か。
なるべく足音はさせぬようにしながら寝こける男たちの口に飴玉を仕込んでいく。
紫色のぶどうの香料が香るもの
透明セロハンのキャンディ包みを一度男の両手で摘ませてから包装を解いて、肩頬に詰め込んでいく。
都度、くしゃくしゃにしたセロハンを床に転がし、小型スプレーで各々の口奥に甘い液体を噴いた。
白い、記憶を混濁させる飴の主成分のみを抽出したものだが、名残で色とミルクの味が残されている。
大きい部屋に転がっている奴らはなんとかなった。トイレと給湯室に人気がないのを確認。
ドアで隔離遮断されている倉庫を覗き込むと、ベッドがひとつ、そして女が二人。
ガスは排気口を伝って届いたのか、こちらも意識は低下中だ。
事務所内の男たちと同じようにスプレーと飴を仕込んだ。残るはひと部屋。
窓の穴が換気の仕事をしているのか、こちらに影響を及ぼす程の物はなかったが、油断も生じはしたのだろう。
部屋の各所から透明フィルムの紫キャンディを拾い集める。男たちのポケットという収納も全て。
基本的には事務所内管理なんだろう、大部屋からも倉庫からも数は出なかった。
最後のひと部屋、ドアをそっと開ければ、応接ソファで横たわる大柄の男がひとり。
スーツの仕立てが良いところを見ると、おそらくコレがここのボスか。
呼吸音と脈拍を確認、飴とスプレー噴射の後、飴探しに。
机の上、引き出しの中、机の裏、と調べていたら僅かなうめき声と、衣擦れの音。
意識を音の方に向けようとした瞬間、首筋に激痛が走った。比較的鋭利なものでの殴打。
声は出さず、差し向けられたエモノを右手でいなして、左手で首横から手刀を叩き込む。
横からの攻撃、には慣れないものだろう、よろめきうろたえた所で股間狙いで一蹴、男はその場で沈黙した。
カラン、と落ちたエモノを見てみれば、ステンレス製1m定規。これはこれで凶器だな。
思いながら、中腹についた赤を見止め、拾い上げた。コレに血が付いているのなら、出血は確実だろう。
組員、組長が持っている飴はこれだけか…。透明のパッケージ半ばまでしかない飴玉。
此処を中継地点にもっと転売されているのだろうが、そこまで追う必要はない。
佐々田の名前と顔、勤務先を知る者を世間的に始末出来ればそれで目的達成だ。
巻き込まれ犯された女性には悪いが、今後の被害者が出ない代わりの尊い犠牲となろう。
準備段階から五時間かそこらが経過した頃、時計を見れば後一時間程で新聞配達が始まる。
そろそろ帰ろうか、と、投石を残し、持ってきたキャンディ包の袋を戸棚の中へ。
他にも飴玉を散りばめてその場を後にした。傷の手当てをするまでは裂傷の痛みが。
一晩寝てからは、打撲から捻挫に切り替わった手首の痛みと、殴打を受ける際に強ばった首肩筋肉の張りに悩まされることとなる。寝違えたかのように左右上下を向くのが辛くなるため、任務は成功したが、大成功!という結果にならなかったのは言うまでもない…。
24日深夜 ネットとテレビでニュース速報が入った。
『都内某所の暴力団△△組が、大麻取締法違反で警察のガサ入れを受けた際、無差別に拐かしては性的暴行を加えていたという証拠と、性的暴行の被害者を事務所内で発見。現行犯逮捕と犯行に使用した薬物の押収に成功した!件の暴力団は、街中で紫色の飴を売り、気持ちよくなる飴、などといって高値で取引していられたと見られ―――』
殺人事件ではないので、血痕やらの捜査はされない様子だったが
△△組に関わり、一度でも性的被害を受けたことのある男女は被害の申し出を受け付ける、といった有無がネット上で拡散されていた。奴らの資産から被害者に慰謝料をという話ではなく、飴玉というモノに対しての実証性を少しでも増させて、奴らをより長く刑務所内に止めたいがための警察の悪あがきなんだろう。
何はともあれ、これにて佐々田が起こした飴問題は幕を閉じる事となる。
繁華街近くの平和率が少し向上はしただろうが
しばらくパトカーの巡回が頻繁化したのは申し訳ない限りである……。