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山河令7話で蔚宁が阿湘に伝えた漢詩のメモ

全体公開 2 1 1720文字
2021-03-28 16:27:04

「山河令」36話+αまで見た上で、蔚宁が阿湘に7話と29話で伝えた漢詩を振り返ってみたくなったので、まず7話の漢詩の振り返りです。最後まで見ている上での振り返りですので、ある意味ネタバレになるかもしれない。そして素人のメモです。ご注意ください!

Posted by @feishang

■7話
蔚宁と阿湘が初めて出会ったシーン。
名前が「顾湘」であることを聞いた蔚宁が「湘」とは良い名前ですね!と興奮しており、すぐに『楚辞』「九歌」に出てくる川の女神、「湘夫人」のことを思い出したことが分かります。そして、関連して美しい洛水の女神へ恋い慕う詩を思い出したのだろうと思われます。

その上で口ずさんだ詩は、その後やって来た温客行が説明したように、「九歌」と「洛神賦」からそれぞれ抜き出した一文を組み合わせています。
内容としては阿湘の名前を褒めて美しい女性であると褒めそやし、阿湘を川の女神に喩える一方で自分は美しい女神を川辺で待っている人物(湘君)に見立てて、好意を伝えているのではないかと思われます。また、後半に少々アレンジがあるので、阿湘の美しいだけではない元気の良さを感じているのかなという気がしています。
阿湘は何を言われたかさっぱり?という感じでしたが。

湘水:湘江とも。洞庭湖に注ぐ長江右岸の支流。
洛水:洛河とも。黄河の支流の一つ。

<蔚宁が口にしていた詩>
九嶷缤兮并迎 灵之来兮如云 (『楚辞』 屈原「九歌」(四)湘夫人)
飘飘兮若流风之飞雪 (『文選』巻十九 曹植「洛神賦」)
※本来の「洛神賦」では飘飖兮若流风之回雪

<書き下し>
九嶷(きゅうぎ)繽(ひん)として並び迎え 霊の来たること雲の如(ごと)し
飄飄(ひょうひょう)たること流風(りゅうふう)の雪を飛ばすが若(ごと)し
※飄颻(ひょうよう)たること流風(りゅうふう)の雪を迴らすが若(ごと)し

<意味>
九嶷山の神々が盛んに群がり並んで迎えると、湘君の神霊は衆神を従えて雲のように降ってこられる。
衣がひるがえり動く様はそよそよと吹く風が雪を飛ばすようだ
※衣がひるがえり動く様はそよそよと吹く風が雪を吹き回すようだ
雪を回(めぐ)らすは風が雪を吹き回すことから転じて、舞衣の袖を翻して舞う様子。美しい舞の形容。

・『楚辞』は戦国時代の楚(紀元前11世紀 - 前223年)の地方の歌にのせた詞。戦国時代末に生きた屈原の作品、および屈原を哀悼する気持ちから作られた後継者たちの作品。
この中の「九歌」は神へ捧げる祭祀的な内容で、全部で十一の詩から成り立っています。
そのうちの「(四)湘夫人」はその前の「(三)湘君」と対になっており、男女一対の湘水の神様が互いに慕い合っている内容です。ただ、思い合っているというだけではないのが少し不穏な内容。
新書漢文大系※によれば「湘君は夕べに北渚に降って湘夫人を待っている。心ひかれる湘夫人だが、彼女を取り巻く情景はどこか不安である」と表現されている。
※星川清孝著、鈴木かおり編『楚辞』(新書漢文大系23明治書院、2004年)

・「洛神賦」
魏の曹操の第三子曹植の文。洛水の女神宓妃をうたったもの。宓妃は洛水に溺死して神となった。洛水の女神のモデルは兄曹丕の妻甄氏であるという説もある。恋い慕う気持ちはあっても女神は消えてしまう。

「洛神賦」を引用した後半は回雪(かいせつ)という美しく舞う表現の部分が雪を飛ばすになっています。
美しく舞うだけではない阿湘の元気の良さというか勢いの良さみたいなものを感じたのだろうかと、二人のそれからを考えるとニヤニヤしてしまいますね!

阿湘へ向かって美しい女神に出会ったと思わず言いたくなってしまう蔚宁くん、最初から大好きだったんだなぁとしみじみとしてしまいます。
そして初めての出会いで引き合いに出した二つの作品の結末が少し物悲しい。これはそもそも山河令が『楚辞』を念頭に置いていることを想定するとむべなるかなと思いはするのですが、二人の思い合う先の未来のことが念頭にあって選ばれた作品なのだろうかと勘繰ってしまう訳です……

周くんと温くんが大っぴらに「好きだ」とは言い合う訳にもいかず(ラブラブでしたが!)、その他の言葉や態度や色々なもので関係性を積み重ねていくのと共に、蔚宁が分かりやすい愛の告白をしているのに阿湘は何を言われたのかサッパリ分かりませんという関係性が一緒に展開されていたのはとても良かったなぁとしみじみと振り返ってしまいました。


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