X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

キミがいること(クラエア)

全体公開 FF7(クラエア) 1077文字
2021-04-10 22:33:07

ワンライお題「おはようのキス」

Posted by @tomo27vt

エアリスの朝は早い。
旅をしていた頃から薄らと感じてはいたが、一緒に暮らすようになってから実感を伴って認識するようになったことだ。別段クラウドが朝に弱いわけではないはずだが、基本的にエアリスの方が早く目覚めている。花の世話があるからだと言っていたが、クラウドが目覚めた時にはエアリスは既に朝食の準備を始めていることが常なのだから、早起きは彼女の中で既に習慣となっているのだろう。それもあってか、食器の準備を担うのがクラウドの常でもあった。
だから、目覚めて、隣にあるぬくもりを認識した時。クラウドの胸に去来したのは驚きだ。

(疲れているのか?まあ、いつも早いからな)

静かに寝息を立てて眠る姿は見るからに心地よさそうだ。起こすのは忍びなくなる。
カーテン越しに差し込む光は薄ら明り程度だが、ベッドサイドの時計を見るに、彼女がいつも起きているだろう時間はとうに過ぎていた。そうは言っても花屋の開店時間を鑑みても起こすまでではない。今日は自分が朝食の準備をしようと算段をつけながら、クラウドはベッドからいまだ動けずにいた。
眠気はとっくに覚めていたが、何となく、エアリスの寝姿から目が離せないのだ。

(気持ちよさそうだ)

柔らかな栗色の髪を撫でたくなって手を伸ばしそうになるが、止める。撫でる動作で起きてしまうかもしれない。翠色の瞳が閉じられているのは残念だが、気付かれることなくじっくりと見る機会も早々ないこともあって、ついつい見入るのを止められなかった。
ほんのりと赤く色づいた唇からは、寝息の合間に言葉にならない声が漏れているが、緩やかな弧を描いている上、眉間やその他の表情から強張りも感じられない。悪夢を見ているわけでもなさそうだと安心と同時に嬉しさも感じて、胸の奥があたたかくなる。

(よかった)

露わになっている額にそっと唇を寄せた。唇でも頬でもなく、額。リップ音を立てることもない、軽く触れるだけのキス。
キス自体は衝動に近かったが、原因となる気持ち自体は穏やかな心持からくるものだった。
胸に湧き上がるあたたかさ。それを感じさせてくれることへの感謝。そして何より、今この場にエアリスがいるということへの幸福。
様々な気持ちがない交ぜになっているため、クラウド自身もどうにも名称がつけられなかったが、それでも不穏な感情は一欠片とてないことは確かだった。

「おはよう。エアリス」

そっと小さく告げられた言葉は、自分でも驚くほどにやわらかくも穏やかであった。


キミがいること
(クラエア)
2021/4/10
tomo27vt


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.