エロを目指したのにエロにならなかった……何故だ。
@acbh_dmc4
「ふむ、エイヴォルはハーヴィを拒絶したか。こうしてみると、何ともまぁ哀れな老いぼれになり下がったものだ……傲慢の王が見る影もない」
バシムはエイヴォルがヴァルハラの死者の扉の前で抵抗したメモリーを再生していた。
転生した者を取り込むことに失敗した嘗ての旧友は、これで永遠の死を齎された。
自らの破滅を回避すべく、方々駆けずり回り、対策してこの体たらくだ。その見る影も無くなったみっともない姿を鼻で嗤い、バシムはそのメモリーを閉じた。
「だからと言って、エイヴォル、お前を許すことはないがな。我が愛しき息子が受けた屈辱と苦しみ、何度生まれ変わろうともお前には嫌というほど味合わせて苦しめてやりたい!」
そう一人ごちれば望むとおりに出現したエイヴォルの幻影に、鋭い剣の一閃を振るい、その首を跳ね飛ばす。
ここへと閉じ込められてから、同じように首をはね、目をえぐり、腹を裂いて骨を断ち、何度そうして現れ続けるエイヴォルの幻影を殺し続けたか知れない。
いい加減飽き飽きするかとも思ったが、エイヴォルを殺すその瞬間は得も言われぬ興奮に身を高ぶらせた。
そして終われば、実際に戦ったあのゴリンヘリルでの戦いを思い出す。
正直なところ、あの時の戦闘が一番興奮し、心躍った。探し求めていた宿敵を前にした高揚、そして初めて押さえつけた時のあの怯え、困惑した表情の何もかもが好ましかった。
ここでのメモリーでも、その時の状況をシミュレートしたのだが、プログラムされた同じ動きを繰り返せば、簡単に動きをねじ伏せる事が出来るようになる。
魂の無いただの操り人形をいくら屠っても、バシムを満足させることなど到底できない。ああ、なんて思い通りにいかない世界なのだ。
悪戯や快楽に傾倒する質では、ここだって地獄のようなものだ。腹いせに屠った後は、いつだって虚しさが心に淀む。
そんな内心とは裏腹に、目の前にまたエイヴォルが現れる。
意識を向けて指示しなければ襲ってきもしない、表情もなく、本当にただの人形だ。
バシムは剣を振るう気もせずに、呆と目の前の人形を観察した。
形の良い卵型の輪郭に、大きな目は長い睫毛に彩られ、その中心にある瞳は空を映した海のような鮮やかな青。
筋の通った鼻梁に続くはバラ色の小さな唇。
そして首は片手で手折れそうなほどに細く、鎧に隠された体躯も華奢だ。
女なのだからそうだろう。
その衣服を剝けば、繊細な曲線が現れるに違いない。
そこまで観察して、バシムはふと疑問に思った。
今まで己が屠り続けてきたのは、元凶であるハーヴィではなく、直接は関係のないエイヴォルだ。
そして今後も手にかけたいと願うのもエイヴォルただ一人。
「私をこの牢獄に閉じ込めたのだ。忌々しい……“私”が恨みに思うのも当然だろう。それに、あの男のあんな情けない姿を見せられたら、猶更やる気も失せるというもの」
そう言い訳を連ねてみるが、己自身、それがこじ付けだと分かっていた。
舌打ちをし、エイヴォルの眼前へと進み、強引に顎を取る。
敵意を纏わず、ただ無感情に見つめられる目の前のそれが、急にただの女に見えた。
「……この小娘を犯し、孕ませ、目の前で子供を八つ裂きにしたら、楽しいだろうな」
顎を持ち上げていた手を、そのまま首に這わせるようにゆっくりと下ろす。
無骨な鎧が邪魔に思えて、そうすれば熔ける様に消失した。
首元を隠す青の柔らかな襟に指をかけ、力を込めて引き千切る。
布地が鋭い悲鳴を上げて裂け、エイヴォルのきめ細かい肌が現れた。
白い布でサラシを巻かれた胸は、それでもなだらかな丘陵を描き、締め付けられて寄せられた谷間に目が吸い寄せられた。
首筋を撫でるよう、何度も往復して肌の感触を確かめる。
性に奔放であった彼女は、かの女神、フレイヤのように誰とでも寝た。
彼女なりの基準で褥を共にする男や女は選んでいたのだろうが、バシムとも泥酔した挙句に誘い、一度だけ肌を重ねた事があった。
その時の感触そのままに再現された人形を舐めるように観察する。
エイヴォルの肌の柔さや温度、味も全て己は知っている。それどころか、この空間に彼女も繋がれたのだ。
再現など容易いだろう。
前だけ肌蹴られたその続きをするのも苛立ちを覚える。
掌を上げればそこに己の武器が現れて、嬲る延長で肌ごと衣服を引き裂いた。
苦痛を漏らす唇は赤く、歪められた表情に全身が歓び粟立った。
これから待ち受ける享楽にこくりと喉を鳴らし、手のシャムシールにエイヴォルの血を吸わせる。
細かく傷つけられた白い肌は血の衣に彩られ、バシムの興奮をより高まらせた。
「美しいな。まるで、女神のようだ……ああ、君は人の言う所の神の末裔だったな、猛る者よ」
飛び掛かるようにしてエイヴォルを押し倒し、彼女の頭を地に沈める様に打ち付ける。
首元を飾る狼の噛み傷を良く見える様に晒して、そこをねっとりと舐め上げた。
舌先に鉄臭い味が広がる。その味に煽られて、鋭く噛みつき、まるで上書くように傷跡を食い破った。
耳元で上がる彼女の悲鳴が、まるで美しい旋律の様にバシムの鼓膜を震わせる。
血の味や悲鳴に興奮し、獣の様にむしゃぶりついて、肉を裂く。
既に息絶えてもおかしくない程に傷つけた。
だが、バシムが死を許さない限りこの女は死なない。ひたすら与えられる苦痛に目を虚ろにさせて浅い息を吐いている。
その様を見下ろして、うっそりと嗤う。
まるで激しく攻め立てられ、何度も絶頂に導かれ、正体を無くしたような表情だ。
いつかの夜のような彼女の姿は、美しく、そして残酷なほどに淫靡だ。
「お前が本物であればどれ程良かったろう。お前を蹂躙し、自ら死を懇願するほどに苦しめて私のモノに出来れば、ああ……きっと私は満たされただろうな」
言いながら隠し刃を彼女の脇腹へと突き立てれば、ゴボリと口から血が溢れる。
その美しい紅色を唇に塗り広げてやれば、今にも光を失いそうな薄青い宝玉がバシムに向けられた。
ボロボロな彼女が許しを請うようにバシムを見つめれば、眩暈がするほどの多幸感に満たされる。
何千年もの間、乞い求めていた存在に、愛しい程の憎しみを感じる。
満身創痍の美しい女を抱きしめて、耳元に唇を寄せて囁いた。
「私は君を気に入っているんだよ、エイヴォル。もし君もここに捕らわれてくれていたなら……」
―――永遠にこの世界で愛してやれたのに