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美味しいを渡したい

全体公開 2529文字
2021-05-09 11:27:03

書きかけの有島と司書の話終わるのか

Posted by @akirenge

【美味しいを渡したい】

とある国定図書館にて、有島武郎は欠伸をしながら重ねた本を持っていた。
春先、庭に咲いている桜が散り始めたころのことだ。そろそろ、八重桜も咲き始めているし、枝垂桜も咲いている。

「司書さんは八重桜を好んでいたっけ」

今日の有島は図書館当番だ。文豪たちは交代交代で図書館の業務を手伝っている。国定図書館は半分が研究施設とはいえ
もう半分は図書館であり、地域住民に開かれている。

「有島さん。眠たそうね」

――司書さん」

本を持ち、図書館の方に向かうとこの図書館の二代目の特務司書である灰祢がいた。有島の顔が明るくなる。
カウンターにいたのは一般の図書スタッフと灰祢だ。
図書館の方はそれなりに広い。灰祢が実家と呼んでいる帝国図書館と比べたら狭い方だとは聴いているが、
この辺りでは一番大きな図書館であった。有島はカウンターテーブルに持ってきた本を置いた。
今、図書館にいる利用客は少ない。そんな時間帯だ。

「気晴らしに来たの。書類仕事は終わったんだけれども」

「お疲れさま。書類もそうだけど、司書さんは他も大変だからね」

「みんな、それぞれに大変なところはあるけれど、だからこそ、息抜きは大事ね」

柔らかく灰祢は言う。彼女が採択をしなければならない書類はそれなりにあったはずだ。
他もと有島が言ったのはアルケミストとして彼女は実験をしなければならないところがあり、実験もこなしていたのだが、
灰祢は灰祢だけだった。

「司書さん。実家の方から封筒が届いているんだけど」

「重治。定期的に成果は出さなければならないとは言え、また、とかなるわね。たまには帰りたいとは思うけど」

「帰ったのは、随分前だからね」

有島と灰祢が話していると助手である中野重治が大きな封筒を持ってきた。封筒にはこの図書館の住所が書いてある。
郵便で送られてきたようだ。封筒が送られてくるということは大体は頼み事だという。近況報告の方は時折の連絡で
しているそうだ。彼女が帝国図書館に帰ったのは海外文豪関連のことだ。コナン・ドイルのことを報告しに行った時ぐらいである。
灰祢は元々は帝国図書館で司書業をしていたのだが、先代の特務司書を手伝うために司書補佐としてやってきた。
先代の特務司書だった少女は恋人であった文豪とこの国定図書館にある施設内にて事故で焼死している。

「一休みは終わりにして、仕事に戻るわ。程よく休憩をとって今日を過ごしましょう」

伸びをしながら灰祢は言う。有島は微笑んだ。

「お互いにね」

お互いにと話す。灰祢は有島と共に司書室へと戻った。彼女が図書館業をやることはあまりない。それよりも優先するべき
ことがいくつもあるからだ。本の選書についてもベテランの司書に任せている。任せられるところは任せるのが彼女の方針だ。

「先代が酷すぎたので、彼女になってよかった」

ベテランの女司書が言う。それについて有島は曖昧にしておいた。直木三十五以降の文豪は灰祢が転生させたものであり、
先代のことを知らないし、先代のことをしっかりと覚えておる文豪たちはいない。アルケミストの力のせいだ。
だから先代については一般スタッフの方が覚えているが評判はよくはないし、それは今も言われている。

(それほどまでに悪かったんだろうな……

有島はそう思うとカウンターに置いた本に手を伸ばした。



「ビーフシチューが食べたい」

「君がリクエストをしてくるってことは……食べたいんだね」

司書室にて灰祢が言う。中野が珍しそうに返していたが、灰祢は食べることにそうこだわりはない。
ないのだが、たまにこうしてリクエストを出してくる。出すということは仕事がややこしいことになりそうということだった。

「この手のことはアオ君が得意なんだけど、別の研究をし始めたって聞いたから」

「元同僚だったっけ」

「そう。錬金研究でデーターが取りたいとか、向こうの司書もしてるんだけどいくつかのデーターはいるし」

「どの文豪に手伝ってもらうかは言ってほしい。連れてくるよ」

「よろしくね。今から決めるから」

文豪たちを鍛えることは忘れていないし、指環もとっている。この図書館のアルケミストは灰祢ぐらいだ。
そうなるようにしているというか、先代のことがあったからだが。実家……帝国図書館もそれを分かっている者は
分かっている。潜書で本の世界から物質を取ってきてもらわないといけないため、文豪たちの力がいる。
灰祢はシフトを確認しつつ、文豪をしていた。中野が呼びに行く。期限がまだあるとはいえ早めに片付けておきたい案件であった。



有島が中野から灰祢がビーフシチューを食べたいと言っていたのを聞いたのは、彼が潜書する文豪たちに声をかけていたときだ。

「今日の食堂はメンテナンスで昼が終わったら使えないからな。各自で食うって方針になっていたし」

「新しいキッチンは司書さんがアルケミストパワーで作りましたからね。錬金術は凄いです」

志賀直哉と武者小路実篤が話す。白樺派のメンバーが集まってお茶会をしていた時だった。中野は里見弴を連れて行った。
アルケミストパワーを言われているが広義には超能力に入るらしい。それを使えばいくつかの材料や手順はいるが、
あっという間に部屋にプールを出したりキッチンを出したりすることが出来るようだ。
文豪たちのリクエストを聴いては灰祢は様々なものを作ってくれる。

「ビーフシチューが食べたいって司書さんは言っていた。前にレストランに食べに行ったとき、美味しかったから」

「この前出かけたときですね」

武者小路の言葉に有島が軽く首肯する。有島は灰祢の恋人であった。仕事とプライベートはきっちりと分けているが、
休日には二人で出かけている。ビーフシチューと聞いて有島が浮かべたのはレストランでのことだった。
デートに行ったときに立ち寄ったレストランで食べたものが美味しかったのだが、レストランはここからは遠い。

「なら作るか? 材料があればできるし。圧力鍋もあるからな」

ひたすら煮込むことに


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