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私の恋したガラルの王様 その②

全体公開 ダンユウ作品 8433文字
2021-06-10 17:01:44

第3回ダンユウwebオンリーイベント掲載作品 チャンピオン・ダンデに恋したユウリちゃんが、ダンデさんの目に留まるためにジムチャレンジに参加するお話。 エンジンシティでのジムチャレンジ開会式からナックルシティのジムチャレンジを終えるまでの部分です。

 私とヒバニーはエンジンシティに入った。
 ワイルドエリアでのんびりしちゃったけれど、ホップと合流してジムチャレンジの手続きを始める。ジムチャレンジのユニフォームを受け取って、その日はスボミーインで休むことになった。

 次の日は開会式。
 同じユニフォームに身を着けた60人程のジムチャレンジャーがフィールドにずらりと並ぶ。年齢も体格もバラバラな私達。ただ、緊張で顔が引きつってるのはみんな一緒。それが少しおかしくて、私はこっそりクスッと笑った。
「どうしたの?随分と余裕じゃん」
 ちょっと前に仲良くなったマリィが、目ざとく見つけて話しかけてきた。
「そんなこと無いよ」
 うん、そんなこと無い。私だって緊張している。でも、それ以上にわくわくしてるんだ。
「マリィこそ、全然緊張している風には見えないけど」
 私の指摘にマリィはひょいとかたをすくめた。
「まぁね。私のアニキ、ジムリーダーなんだけど、開会式をボイコットしててね。そっちが心配で緊張どころじゃない」
「そっか……
 それぞれみんな事情があるんだなぁ、そう呑気に考えていると、お客さん達の歓声が一際大きくなった。
「ジムリーダーの入場だ。」
 チャレンジャーにぴりりと緊張が走る。
 ジムリーダー達は威厳に満ちた態度で、時にはファンサービスも交えながら悠々と歩いてくる。緊張でこちこちの私達とは、えらい違いだ。
 私は気合を入れてジムリーダーを睨みつけた。そういえばダンデさんに夢中で疎かになっていたけれど、ダンデさんと戦うには彼らを下さないといけないのだ。
(まず、ジムリーダーを倒してジムチャレンジをクリアするでしょ。それから、セミファイナルトーナメントを勝ち抜いて、ジムチャレンジャーの中で一番になる。さらに、ファイナルトーナメントで本気のジムリーダーを倒して、ようやくダンデさんと戦える)
 よくよく考えれば、途方もなく遠く険しい道のりだ。だいたい、ジムチャレンジをクリア出来るトレーナーも例年数人程度。実力不足と判断されれば容赦なく落とされるので、ジムチャレンジの合格者がいない年もある。そんな厳しい世界。
(だけど、それでも……) 
 0.000001%でも可能性があるなら、チャレンジしてみたい。だって、このまま諦めて見ているだけなら、ダンデさんの目に留まる可能性は0なんだから。
(今回、ダンデさんを倒せなかったら、すっぱりと諦めよう。)
 恋心は憧れのままで。私は、弟の友人のままで。忘れ去られよう。その覚悟は、出来ている。

 フィールドの中心に立つローズ委員長がジムチャレンジの開会を宣言した。
 その隣に立つダンデさんは、今日も変わらず凛々しく輝いている。
 ふとダンデさんと視線が交わった気がした。それだけで心と身体が熱くなる。でも、それは自惚れなんだろう。ダンデさんはホップを見ただけかもしれない。

 そうだ。そうに決まっている。


「だーーーっ、なんかどっと疲れたんだぞ!」
「珍しい。ホップでも緊張する事があるんだね」
「あそこの空気は別格だったんだぞ。ジムリーダーの覇気に飲まれて、息が止まるかと思った」
「あ、わかるかも」
 開会式も終わり、いよいよジムチャレンジが始まった。早速次の目的地へと駆けていく人。地元からの応援団に激励をもらう人。ロビーはお祭りのような雰囲気で賑わっている。
「ホップはもうターフジムを目指すんだよね」
「おう、トレーナー達とばんばんバトルして、オレはチャンピオンになるからな!ユウリは?」
「ターフジムなら、今のヒバニーと攻略出来るかな?」
「ユウリのポケモンはまだヒバニーだけだもんな。なら、その前にひとバトル、特訓だぞ!」
 その時、ふっと部屋の中が静かになった。それはロビーの隅っこにいた私達にも伝わって、私はホップと顔を見合わせた。

「やあ!きみたちがチャンピオンの推薦したトレーナーですね!ようこそはじめまして。わたしくし、ローズと申します!」
 よく通る野太い声と共に、割腹の良いスーツ姿のおじさんが歩いてくる。あ、開会式で見た。ナントカ委員長、ローズさん。
 そしてその後ろには麗しのダンデさん!はぁ、今日もカッコいい。ダンデさんは私に向って、にっこりと笑ってくれた。きゃー!きゃー!
 ローズ委員長は興奮気味に、「いい!素晴らしい!」と一人でぺらぺら喋って、「では、わたくし、急ぎの用事がありますので」と去って行った。私は呆気にとられてぽかんとその背中を見送る。なんだか、変なおじさんだ。
「委員長、ゴキゲンだな!」 
 そうダンデさんは嬉しそうに笑っていた。だけど、すぐにダンデさんはきりりと顔を引き締める。
「いいか、ふたりとも。まだスタートしたばかりだ。勝ち進むなら、ポケモンだけでなくトレーナーである自分を鍛えろ」
「はい!わかりました!」
 一にも二にもなく、私は頷いた。うんうん。そうだよね。ダンデさんに勝つためには、やっぱり自分自身を鍛えなくちゃ。

「ホップ、決めた!私、暫くワイルドエリアに籠もるよ」
 ありったけの決意を込めた私の言葉に、ホップは小さく苦笑した。きっとダンデさんに激励されて張り切っている私を単純だと思ってるのだろう。……その通りなんだけど。
「わかったぞ。だけど、とりあえず、ひとバトルだけしような」


◇◆◇◆

 モンスターボールと食料を買い込んで、私はラビフットと一緒にワイルドエリアで特訓を始めた。
 ホップとのバトルでヒバニーはラビフットに進化して、また一段強くなった。これならターフジムも問題なくクリア出来る。でも、次のバウジムは厳しいかもしれない。炎タイプのラビフットは、水タイプの攻撃に弱い。
「水に強いのは、草タイプか雷タイプ……。うーん。でも、草タイプはリザードンに弱いしなぁ。ワンパチを仲間にしておいた方が良かったかな」
 焚き火に木をくべながら、膝の上で丸くなるラビフットの背を撫ぜる。進化して、身体もがっしりと大きくなったラビフット。その背中はとても逞しい。
「これから戦う相手はどんどん強くなっていくからね。私達も、仲間を増やそう」
 眠っているはずの、ラビフットの尻尾がタイミングよくぴょこっと揺れた。まるで、わかったよ、頑張ろう、と励まされているみたい。
「ふふふっ。頑張ろうね」
 そう囁いて私も毛布を被り、私もラビフットの横で丸くなった。


 どんなポケモンを仲間にしようか、悩みに悩んだ。でも、ダンデさんはリザードンでほとんどのポケモンを蹴散らしていくのだ。私もタイプ相性に頼らずにポケモンを倒せるようにならないと、ダンデさんには勝てないだろう。
 だから、仲間になるポケモンのタイプにはあまりこだわらない事にした。考えるのに疲れたんじゃないよ。直観も大事だよねってこと。


 まず、ミロカロコ・北でルカリオを仲間にした。
 なんかビビビってきたんだよね。あっ、この子だって。直観、大事。

 ポケモンを仲間にする。それはとても難しい選択。
 ただ闇雲に捕まえればいいというものでもない。その子の一生を背負って、お世話をしながら共に生きていくのだ。ポケモンの育てやすさや、相性も大事。
 私との相性は良かったみたいで、ルカリオはよく懐いてくれた。そしてその力量もぐんぐん上がっていく。
 ただ、同じエリアをぐるぐる回っているだけでは、成長にも限界がくる。ラビフットとルカリオの成長が伸び悩んできたので、私はターフタウンを目指すことにした。


 立ち寄ったエンジンシティのフレンドリィショップで、ウールーを探している絵描きのお姉さんと出会った。ちょうど戦闘には向かない、穏やかなウールーを持っていた私は、お姉さんのプリンとウールーを交換した。
 ウールーは、ダンデさんに教えてもらいながら初めて捕まえた思い出のポケモン。でも、その子を必要としているのは私じゃ無くてお姉さんだから。
「ありがとう。ブラッシータウンまで捕まえに行くことも出来なくて困っていたの。私のプリンちゃん、勝ち気で意地っ張りだけど、優しい子だから……。よろしくね」
 お姉さんは嬉しそうにウールーを抱えて去っていった。
「ぷぃ?」
 プリンはじぃっと私を見上げて、その様子を観察してる。ん、なんかこのプリンもいい感じかも。
 よろしくね!プリン!

◇◆◇◆

 そして私達はターフタウンに辿り着いた。これから、ターフジムで初ジムチャレンジだ。
 ほとんどのトレーナーはターフジムをクリアするか棄権するかした後で、ジムの中は静かだった。お客さんの姿もまばら。
 私たちは気負うことなく、楽勝でくさバッジを手に入れた。


 バウジムも順調に攻略して、みずバッジも手に入れる。
「自慢の最強メンバーだったのに、まとめて押し流されちゃった」
 ルリナさんは私のバトルを褒めてくれたけれど、私の心の中は複雑だった。
(ダンデさんだったら、リザードンで水ポケモンも打倒しただろうな)
 ジムチャレンジャーとしては健闘したのだろうけれど、このレベルではダンデさんには勝てない。もっと、もっと強くならないと。

 考え込みながらバウジムを出た私は、金の長髪が綺麗なお姉さんに呼び止められた。
「委員長がお待ちかねです。シーフードレストラン、防波亭へおいでなさい」
 へ?……あ、そっか。私、ローズ委員長に食事に誘われていたんだ。すっかり忘れてた。
 ぼんやりしていた私だけれど、有無を言わさぬ高圧的な口調に少しムッとした。人を食事に誘うのに、そんな言い方はないんじゃない?
 断わろうかとも思ったけれど、委員長はダンデさんと一緒にいる所をよく見かける人だ。もしかしたら、ダンデさんのレアな話が聞けるかもしれない。
 そう考えた私は、振り返りもせずにすたすたと歩いていくお姉さんの後を急いで追いかけた。

 ローズさんとの食事会の席には、ソニアさんもいた。ソニアさんは私にダイマックスバンドをくれたマグノリア博士のお孫さん。そして、ダンデさんの幼馴染だ。
 食事会はローズさんとソニアさんが何だか難しい話をしていて、「委員長、そろそろお時間です」というお姉さんの言葉と共に終わってしまった。ちっともローズさんと会話をすることができなかった私は、少し不満。
 ローズさんも忙しいようだけれど、人を呼んでおいて失礼じゃない?でもま、いっか。ご飯を奢ってもらえたんだから。
 ……でもローズさん、私は好きになれないなぁ。


 バウタウンから鉱山道を通り、私はまたエンジンシティに戻ってきた。
 今度はエンジンジムのカブさんに挑戦して、危なげなくほのおバッジを手に入れる。旅はとっても順調だ。
 カブさんはとても強いトレーナーで、エンジンジムをクリアできるトレーナーはそんなに多くないらしい。先行していたホップにも追いついて、私は遅れを取り戻した。

 
 エンジンシティから、またワイルドエリアを抜けて、今度はナックルシティを目指す。
 久しぶりに訪れたワイルドエリアでは、新しい出合いがいっぱいあった。 
 穴掘り兄弟という二人組のおにーさんから月の石をもらって、プリンをプクリンに進化させる。
 砂塵の窪地でクチートを仲間にする。
 そして、ワイルドエリアでの特訓で、ラビフットはエースバーンに進化を遂げた。


◇◆◇◆

 ナックルジムの近くで、ローズさんとお姉さん……もとい、オリーブさんが話をしているのが見えた。私は二人が苦手なので、気配を消してこっそりと気づかれないように去ろうとする。
 しかし、私の試みは後ろからの大声で失敗してしまった。
「ユウリさん、あなた、何をこそこそやってるんですか?」
 ぎぎっと後ろを振り向くと、眉を顰めた美少年。ジムチャレンジャーのビート選手だ。ローズさんのお気に入りらしく、私にやたらと絡んでくる。ちょっと前も、ホップをぼこぼこにしたって自慢していた。嫌な奴。
 ローズさんとオリーブさんがこちらを向く気配がして、その鈍色の瞳と目があった。
「ユウリくん!もう、ナックルシティまで来たんだね。キミは優秀だね」
 う゛!見つかっちゃった。

 ローズさんに捕まった私は、彼が仕事の時間になるまで、エネルギープラントに関する自慢話をみっちりと聞かされた。あまり興味の持てない話はつまらなくて、眠たくて。私は顔を引つらせながら、何とか笑顔を保ってローズさんの話に付き合った。


「あー。辛かった。まだ、表情筋がぴくぴくするよ」
 顔をくにくにと揉みながら歩いていると、遠くからキャップを被った男性が歩いてくるのが見えた。私は慌てて佇まいを正す。遠くからでもそのオーラははっきりとわかる。ダンデさんだ!
 でも、ダンデさんの表情はいつもと違った。
 普段は朗らかな笑顔を浮かべているキラキラしい顔が暗く陰っている。何か考え事をしているようで、視線を落として歩いているダンデさん。そんな姿を見るのは初めてで、私はぱちくりと目を瞬かせた。
 あ、ダンデさんも人間だもんね。人並みに落ち込んだり、考え込んだりするんだ。
 それは新鮮な発見で、私のダンデさんへの好感度は急上昇。同時に、いつもみたいに元気に笑って欲しい気持ちも湧き上がって、私はダンデさんのところへ駆けて行った。
「ダーンーデさん!」
 私の声にダンデさんの視線が上がる。その顔には、いつもの朗らかなチャンピオンスマイルを浮かべていた。
「ユウリ!順調にジムバッチを集めているな!」
 ダンデさんはにっこりと笑いかけてくれる。でも、それが何だか無理をさせているみたいで、私はちょっと寂しく、申し訳ない。
 聞くと、ダンデさんはローズさんとの約束なのに迷っていたらしい。私は道案内がてら、束の間のおしゃべりを楽しむ。ダンデさんは不調気味のホップのことをとても心配していた。
 結局、ダンデさんが何を考えこんでいたのかは聞けなかった。ホップのことかな?それであんな浮かない顔をしていたのかな?その割には深刻そうだったんだよね。
 心に少しの引っ掛かりを覚えながらもダンデさんと別れ、私は次の目的地を目指した。


 5体目の私の相棒はユキハミになった。
 ラテラルジムとアラベスクジムを攻略して通りかかった8番道路。湯けむり小道でキャンプをしていた私達の所へ突然、一匹のユキハミが落ちてきたのだ。
 カレー鍋に直撃しそうだったユキハミを、ルカリオがすんでのところでキャッチする。クチートが激しく威嚇しながら空を見上げている。私たちの上空を、バジルーナが一匹、バサバサと逃げるように去って行った。
「バジルーナに捕まっていたの?」
 問いかけてみるが、ユキハミは目をハートにして煮込んでいるカレーを見つめていた。
「呑気だねぇ。危うくキミがカレーの具になるところだったんだよ」
 でもそんな図太い性格が気に入って、私はユキハミを仲間にすることにした。


「クチートもルカリオもユキハミも、みんなリザードンには不利だね」
 
 満天の星空の下でカレーを食べながら苦笑すると、クチートとルカリオが寂しそうな目で私を見上げた。
 でも、その子達を選んだのは私だから。ビビっと来ちゃったのだから、仕方ない。
「大丈夫。みんなで強くなろう。リザードンに負けないくらい、強くなろう!」
 えいえいおー!と叫ぶと、みんな拳を突き上げてキャッキャと笑ってくれた。みんなの顔が、やる気と希望に満ちている。こんな素敵な相棒に恵まれて私は幸せだ。

 そんな私達のを祝福するように、夜空にキラキラと星が流れる。
 私のダンデさんを目指す旅は、折返し地点を迎えようとしていた。


◇◆◇◆

 スパイクジムを攻略して、私はスパイクタウンの外に出ると、ズン!という地響きがして、一斉にココガラ達が羽ばたいた。
 
「9番道路が大変なんだけど!」
「チャンピオンが来てる」
「誰か、手伝いに行った方がいいんじゃないか?」
 にわかに集まって、騒ぎ始める大人たち。

 え?何?ダンデさんが来てるの?
 何が起こっているのかわからず、不安が募る。
 「チャンピオン」という言葉が気になって、私は9番道路の奥へと駆け出した。

 程なくして、私はナックルシティへ繋がるトンネルの近くでダンデさんを見つけた。
「ダンデさん!何かあったんですか!?」
「シュゴオオオオン!」
 トンネルの奥から咆哮が響く。私は少し怯んで、何も見えない真っ暗なトンネルの奥をじっと見つめた。
 そんな私を安心させるように、ダンデさんの大きな手がぽんと私の背中を叩いた。
「ユウリくん!来てくれてサンキューな。」
 その顔は、自信に満ちて明るい。いつもと同じダンデさんのチャンピオンスマイルとその風格が、今はとても頼もしかった。
「謎の音はオレに任せてくれ。チャンピオンタイムだぜ!」
 ダンデさんはお決まりのリザードンポーズを決めて、皆の歓声を浴びながら軽快な足取りで走り去って行った。


 ダンデさんに言われた通り、何かの唸り声が聞こえなくなるのを待って、私はダンデさんの向かった方へ走った。
 野次馬が談笑しているトンネルをくぐり抜けると、そこに見知った顔があった。
「ホップ!どうしたの?ダンデさん、見なかった?」
 私の矢継ぎ早の質問に、ホップは興奮して答える。
「そうなんだよ!アニキなんだよ!シュゴ!!て音がしただろ?赤い光が湧いてさ。なんか近くにいた野生のポケモンが、なんとダイマックスしたんだよ」
 そう言いながら、ホップはスマホを取り出した。
「ほら!アニキだぞ!最強にかっこいいだろ!暴れるダイマックスポケモンを、アニキとリザードンであっ!という間にしずめたんだ!」
 良かった。ダンデさん無事だったんだ。さすが、強いや。
 ホップにニュースの記事を見せてもらって、私はほっと安堵の息を吐いた。同時に、「ダンデさんと戦うには、ダイマックスポケモンを一匹の手持ちで倒せる程の力量が必要」と、頭の中にメモをした。
 うーん。もっともっと強くならないと。


◇◆◇◆

「あっ、ユウリじゃん!」
 ナックルシティの正門へ向かうと、ソニアさんとダンデさんが真剣な表情で相談事をしていた。ソニアさんが私に気付いて手を振ると、ダンデさんも私の方を向いてにっこりと笑ってくれた。
 でも私を見てくれたのは一瞬で、またすぐに二人は会話を続ける。

「何がおきたんだ?」
「わからない……何が起きているのか……
 
 途中でマグノリア博士も加わって、3人は意見を交わし合う。
 話の内容はちょっと私には難しい。何となくわかったのは、赤い光がポケモンをダイマックスさせること。それがもしかしたらソニアさんが調べている災厄、ブラックナイトに関係があるかもしれないということ。それって、ガラルの一大事だよね。
 ナックルシティでダンデさんが悩んでいたのはそのことかな?ダンデさんの負担を少しでも減らしてあげたい。役に立ちたい。私はその一心で声を上げた。
「何か私達に出来る事はありますか?お手伝いさせて下さい!」
「うん。オレたちも何か役に立てるかもしれないんだぞ」
 私の声にホップも頷いて賛同してくれる。でも、ダンデさんは静かに首を振った。
「サンキュー!キミらの気持ちはありがたく受け取るぜ。だがオレの願いは最高の決勝戦なんだ。オレが未来を守るから、ジムチャレンジを勝ち上がってくれ!」
 力強いダンデさんの言葉。でも、私の力なんか全く当てにされてなくて、眼中にも無い。そう言われているようで、ちょっと悲しい。
「わかった。なんたってアニキは無敵のチャンピオンだもんな」
 ホップはしたり顔で頷いて、私にナックルジムへ進むように促す。
(ダンデさんは無敵なんかじゃないよ。一人の人間なんだよ。だから、みんなで支えてあげないと)
 そう思ったけれど、とてもじゃないけど言い出せる雰囲気じゃ無くて。私は仕方なくダンデさんやソニアさんと別れて、ナックルジムの門をくぐった。


 むしゃくしゃする気持ちをぶつけて、私は最難関のナックルジムをあっと言う間に攻略した。ホップも私に続いて、ドラゴンバッチを獲得する。私たちは全てのジムチャレンジをクリアして、チャンピオンカップ・セミファイナルトーナメントの参加資格を得た。


 ずっと憧れていた、チャンピオン・ダンデ。その背中をようやく捉えられた気がした。ようやく、夢見た彼に手を伸ばせる。
 あとはシュートシティへ向かうだけ。決戦の時はもうすぐ。
 この時の私はそう思っていた。


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