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金福演習

全体公開 2197文字
2015-05-05 16:37:40
Posted by @kinhukuhai

汐田医院様の企画「金福村・四月のワークショップ『金福演習』(http://privatter.net/p/717098)」に参加させていただきました。四月のワークショップなのに、大変な遅刻。そして個人の趣味全開です。SFや異形要素を含んでいるのでご注意ください。書いている本人すごく楽しかったです。素敵な企画どうもありがとうございました!!




窓の外を見る。きらきらと赤、青、黄色の彗星がぐるぐる旋回しながらまた落ちていく。左手側の窓にはガスのかかった銀河系がうっすらと見える。音もなくただ走行していた。宇宙キツネが時々高い声を上げる。

S系統を走るこの乗り物はかつてバスと呼ばれていた。

名前しか聞いたことのなかった太古の乗り物、のレプリカだ。チキュウ好きのブルジョアが星間連絡船を趣向の凝らしたものにしたいと、元々この星間連絡船を管理していた会社を買い取ったのが始まり。ユニバース社と名を変えて新しく星間連絡船(星間連絡バスといえばいいのか)を始めたのは何光年前だったか
翡翠色の二つの眼球を左右上下に動かして船内を見渡せば、実に様々な種の生き物が吊革に捕まっている。あそこの多腕系なんかは手が十七本もあって吊革に捕まるのは大変そうだ。二つ目の男は被っていたニット帽を外しパンフレットを見返す。タイトルは第四惑星語でチキュウランド。なんのひねりもないタイトルがシンプルでいい。二十億光年前に大気の汚染が原因で住めなくなった惑星の住民が、かつての生活に思いを馳せようと設立した観光用のコロニーだ。このニット帽もここで買ったもので端に名前も知らない動物の刺繍がしてある。文字も刺繍してあったが自分は難しいチキュウ語は分からなかった。

沈み込むような機体の動き。ほかの種よりも比較的固い腕を隣の金色の腰に回す。危ない、きちんと捕まっていないと引力に持っていかれるぞ。仕方がないだろう、左側にしか腕がないんだから。そうだった、代わりに俺が抱いていてやろう。

ドアが開く。色とりどりの身体が動き出して、車内は音もなく揺れた。スライム系とぶつかって方に黄緑色が移ってしまう。しまった、気に入っていたのに。流されないように、目を離さないように、翡翠の目がきょろきょろと金色を眺める。二つしか目がないのは不便だな、目の動きがせわしない。心配するな、お前しか見ていない。金城!金色が白い顔を青く染めた。ここは恋人禁止なんだから、と辛辣そうな物言いとは裏腹に甘い響きが内包された声。そういっているのは役人だけさ。それに今は太陽週間だから誰も見ちゃいないサ。眼の前の席が空く、座らないのか、福富。お前膝がないんだから大変だろう。心配そうな翡翠の男に金色は首を振る。抱いていてほしい。男はそうか、とニット帽を目深にかぶりなおす。見えないように体の位置をずらして四本の腕で金色を抱きしめる。

まだ、銀河系は遠い。



チキュウ時間で二時間後、シズオカ駅の新幹線改札口。銀河系最寄りの宇宙ステーションだ。ピカピカに磨かれたフロアの中でシズオカ駅の看板だけが錆びれている。例のブルジョアが荒廃したチキュウに捜索隊を派遣。やっとの思いで持ち帰ってきた至極の一品らしい。チキュウ学を専攻にしていないので詳しいことは分からない。これもかつて同じ用途で使用されていたらしいと見学旅行のときガイドに説明を受けた気がする。いや、福富に教わったんだっけ。金城さん、と背後から声がする。昔の学校の後輩だ。
「遅かったですね」
「ああ、重力の関係ですこし機体が重くなったんだ」
「仕方ないですよ、銀河系が近いですから」
顔の整った男は額の目を細めて訝しげな表情をする。つるつるとした節足を掲げて翡翠の男の首元を指さしボタンを留めるように勧めた。
「金城さんスライム触りました?」
「少しぶつかった」
「ああそれ福富さんの鱗粉と反応して凄いことになってますよ。せめて酸化する前に病院へ行きましょう」
「どうりでチクチクすると思った。すまない、今泉。約束は帰りだ」
新しい自転車の部品を買い揃えるという約束は守れそうにない、と翡翠の男は謝罪を述べた。
「いいですよ、福富さん待たせる前にさっさと受診してきてください」
恋人優先でしょう。と節足をひらひらと振ってホームに帰っていく。翡翠の男は時計を確認し、タクシー乗り場に駆け足で飛び込んだ。男の折れた肋骨の隙間からメガネケースが落ちる。落下音は酸素を得られず波を形成できなかった。

あの夏が存在する銀河系まであとすこし。
ドッペルゲンガーに会いに行く。



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ベース文

 S系統のバスのなか、混雑する時間。ニット帽をかぶった二十歳過ぎぐらいの男、帽子の端には小さな蛇の刺繍が入っている。スポーツをしているのか体格は良い。客が乗り降りする。隣に立っている金髪の男に何かを囁く。金髪の男はそれを咎める。辛辣な声を出そうとしているが、どこか甘えたような口調。目の前の席があくが二人とも座らない。
 二時間後、静岡駅の新幹線改札口前で、その男をまた見かける。連れの男(先程とは違う黒い髪の男である)が彼に、シャツのボタンを付けるよう言っている。男の胸元を指差し、その理由を説明する。

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