了遊(付き合ってない)。
無自覚な遊作とAiの会話。了見は出ません。短いよ
@d9_bond
トルコ製だというそのグラスは、手の中にきらきら光の欠片を落としている。
手にしたそれにしばし遊作は見惚れていた。普通のティーカップよりもスリムなラインのチャイグラスには、精緻な柄に鮮やかな色つけがされており美しい。
出先で通りかかった公園で行われていた骨董市で見つけた品物だ。衝動買いなんて初めてだったが、遊作は満足していた。今こうして蛍光灯の下で見ても綺麗だが、陽の下ではいっそう綺麗だったと思い返す。
「遊作が買い物なんて珍しいと思ったけど、そういうあれかぁ」
物を見たAiはなんとも言えない顔でそんなコメントをした。遊作は首を傾げる。
「買い物なんていつもしてるだろう」
「そういう嗜好品は初めてだろ?」
確かに今、グラスが足りてないなんてことはないし日用品とするにはいささか繊細な代物だ。デザインが気にいって買ったというのも初めてかもしれない。
「おっかないから、オレ絶対それ触んないからね。万が一にも壊したくない」
「そうか」
やや辟易した風にも聞こえたが、遊作は深く考えなかった。手にしているものに半ば気を取られていたせいだ。
ガラスに引かれた精緻な金の紋様。店に並んでいた品の中でも珍しい白と明るい緑を基調としていて、差し色に赤が入っている。
飽きずに眺めている遊作に、Aiは訊ねる。
「ちなみにだけど、今日一緒に出かけてたんだからソレ買う時もトーゼン一緒にいたんだよな。リボルバー先生なんか言ってなかった?」
「本当に買うのか、とは聞かれたな。こういう物を俺が買うのが珍しかったんだろう」
「あー、うん……遊作ちゃん、たまーにそういうとこあるよね」
「どういう意味だ」
問い返したが、Aiは大仰に肩をすくめただけだった。
遊作は考えた末、グラスを窓辺に飾ることにした。
ベッドの近くなので寝起きの度に目に入るし、窓辺なら天気の良い日は綺麗に輝くだろうと思ったのだ。
──その小さなグラスは殺風景としか言いようのない遊作の部屋に初めて置かれた、ただ飾るためのものだった。