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野苺ノイ絵本〜1分でわかる野苺ノイ〜

全体公開 野苺ノイ 1 2196文字
2021-07-31 11:55:30

本編はこちら→ https://privatter.net/p/6056976



北の国、どこかの場所に
コロポックルの楽園がありました。

コロポックルは、大きなフキの葉っぱの下で生まれる、小さな精霊のことです。

りんごにはりんごのコロポックルが
ぶどうにはぶどうのコロポックルが
野いちごには野いちごのコロポックルが
森のめぐみを分けてくれるのです。

ですが、ニンゲンが森を荒らしてしまったので、いつしかコロポックルは森の奥へ隠れてしまいました。
だからコロポックルたちは、北のどこかで、ひっそりと暮らしているのです。




ノイは野いちごのコロポックル。さいきん生まれたばかりです。
大好きなひととあじさい畑に囲まれて、幸せそうに笑っています。




紫陽 しよう紫陽花 あじさいのコロポックル。

生まれて数百年は経ちますが、コロポックルにしては若いほうです。ノイをあたたかく見守ってくれます。
あじさい色にキラキラ光るレインコートの下から、ノイを見つめる瞳が大好きでした。




ノイはある日、森を見回っていた紫陽 しようのもとに風に乗ってやってきました。
紫陽 しようを大好きになったノイは、ずっとこの森で暮らしたいなと思いました。




ぶつかり合うことも、大切だからすれ違うこともありましたが、ノイと紫陽 しようは、そのたびに絆を深めていきました。






この楽園は、大昔にひとりのコロポックルが築いたものです。
ヤマブドウの「ハツ」は、この森にコロポックルの コタンをつくった最初のひとです。
森の動物たちから、たいそう慕われていました。

ハツとは、古い言葉で「甘やかなヤマブドウの実」という意味でした。





老いたハツには、やがて幼い孫が生まれました。
ヤマブドウの初孫は「カズラ」と名付けられました。
カズラとはブドウのツタのことです。じょうぶなツタのように、カズラは元気にすくすく育ちました。




やがて幼いカズラには親友ができました。トリカブトの「スルク」です。
スルクはある日、この森にひとりぼっちでやってきました。トリカブトは猛毒ですから、みんな近付くのを嫌ったのです。
けれど、カズラはちっとも怖がりません。最初はかたくなに心を閉ざしていたスルクも、少しずつ笑うようになりました。





数百年の歳月が流れ、トリカブトの「スルク」は、森の誰も敵わないほど強く成長しました。
国中に散らばるトリカブトの花と同じ、深い紫の髪を風に遊ばせて、スルクは多くの土地を旅しました。親友のカズラに土産を持ち帰るためです。
カズラはヤマブドウの樹木のコロポックルでしたから、自分の樹のそばから離れられないのです。

美しい琥珀は、スルクがたったひとりの親友に贈ったものでした。




幸せな時間が続くと、スルクは疑っていませんでした。森が人食い熊に襲われるまでは。




熊に襲われたスルクを庇って、カズラは帰らぬひととなりました。
スルクそのさき百年、自分を責め続けました。

スルクの手には、親友に渡しそびれた琥珀だけが残りました。
甘やかな黄金に輝く琥珀は、親友の瞳と同じ色でした。




たったひとりの親友を失って深く絶望したスルクは、命に関わる無茶を繰り返しました。

コロポックルは命を落とすと、霧の国を通って、雲の上の神々 カムイの世界に登ります。
けれどその途中、霧の国の大きな河で、道に迷ってしまう者がたまにいます。

黄泉路で迷ったスルクを迎えたのは
ずっと昔に失った親友でした。

「よお、スルクちゃん。ここに来るにゃあ、ちと早いんじゃねえか?」




甘やかで優しい夢でした。
もう二度と見れないはずの夢でした。

カズラは笑いました。暗闇にも負けない眩しさで。

「だからな、帰れ。お前はオレの夢だ」

夢から醒めたくないと、スルクは心から願いました。

「なあスルク。捻くれ者で優しい、オレのいちばんの親友」

ふわ、とヤマブドウの香りがスルクを包みました。

「オレはここでちゃあんと待ってっから」

お別れでした。カズラはスルクをドンッと押しのけました。
川に落ちていく一瞬、カズラは優しく微笑みました。


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