FGO 2部6章後
カルデアのバーヴァンシー(とオベロンとキャストリア)
@syuu_29
カルデアとかいうところに喚ばれて数日経てば、いい子ちゃん揃いかと思えばそうでもない英霊たちさえ共同生活ってやつを営んでいる奇妙な場所なのはよくわかった。人間も、そうじゃないやつも混ざって和気あいあいと仲良くしている。全員がその輪に入るわけじゃないらしいのもわかってきたけど、それでもだいたい仲良しごっこが基本でつまらない。
お母さまとそっくりの顔をしたのも何人かいるし、なんなら忌々しい予言の子だっているけれど、お母さまはいないし、このカルデアに妖精騎士は私だけ。見たことのある妖精はいたけれど、私のことを知らないらしい。汎人類史のトリスタンなんかはずいぶんすっとぼけた男で、なんでお母さまがあの名前をくださったのかはよくわからない。
マスターは説明が下手だから図書室で本を探すといいなんて言うけれど、入口付近でなんだか狼狽えて一方的に他の英霊に詫びている女を見かけてからは気が引けて近寄れずにいる。
お人好しの英霊どもをひっかきまわすぐらいしか面白いことはなかったのに、何故だかこのところは顔色をうかがわれているようで、向けられる視線がことごとく不愉快だ。ただでさえ人の多い場所は好きじゃないから寄りつける場所も限られる。
いいかげん、シミュレーションにも飽きてきた。だってエネミーはろくな悲鳴を上げない。命乞いもしない。わかりやすい悲鳴を上げてもらわないといけないのに、そうじゃないとだめなのに、誰かを苦しめないとお母さまに褒めてもらえやしないのに、そうでなきゃ、何の意味もないのに。
でも擬似的だろうが血を浴びるのはまあまあ悪くない。つまらなくても血を見ると安心する。崩れ落ちるエネミーをわたしが呪ったと思うとホッとする。
やらないよりもずいぶんマシだと思い立ち、与えられた部屋からシミュレーション室に向かう廊下の分かれ道、そいつは曲がり角からやってきた。
「うわ、血の伯爵夫人かと思ったけど君かあ」
「お前――」
名前なんか覚えてないけど、妖精王を名乗るいけ好かないやつだ。アタシのあとにこのカルデアに来た新参者。王子然とした涼しげな態度も、人の輪の中で茶目っ気を見せるような言動もなにもかも気に食わない。頭上にきらきら輝く王冠だってムカついてしかたない。なんでも持ってそうで視界に入るだけで不愉快な優男。なにが妖精王だ。おまえなんか知らない。妖精の王はお母さまだけだ。このへらへらしてる男を虫けらみたいにヒールで踏み潰せたらどんなにすっきりするんだろう。
でも二の句を継ぐより早く、慌てたような声が割り込んできた。
「オベロン!」
向かおうとした廊下の奥から現れたのはお母さまと同じ顔をした、金髪の女。いまや選定の杖を持たない、金の冠を被ってずいぶん大人びた予言の子。
ああ、まったく眩しいぐらいに輝いていて穏やかで、一目見るだけで喉が焼けたと思うほど妬ましい。まるでお母さまそっくりな顔が吐き気がするほど忌々しい。それに以前に比べて嘘みたいな魔力量が身体を輝かせてさえ見えるようで目の前が赤くなりそうなぐらいに憎らしい。でもアタシに噛みついてきたいつかが嘘みたいに冷たいお母さまみたいな顔で、なぜだか王子野郎とアタシの目の前に割り込み、まるで庇うみたいに相手に鋭い視線を向けた。
なんでだかさっぱりわからないけれど、男だって一瞬あっけにとられていたけれど、でもすぐに微笑みに不釣り合いな平坦な調子で挨拶をした。
「うわぁ。これは奇遇だなあアルトリア」
「ええ、奇遇ですね妖精王。ですがここはカルデア。あなただって汎人類史のマスターと契約したのでしょう?」
なんだかわからないが、穏やかな空気ではない。変だな。でもどっちもアタシの行く手を阻んでるのは間違いない。
「お前ら何?通行の邪魔なんだけど」
「すみません、バーヴァン・シー。呼ばれてはいませんが通りすがってしまったのです。あなたはどうぞお気になさらずに」
「おいおいアルトリア。何だい、君。まさかあいつの代わりでもやる気なのか?へえ、同じ顔だと同じ結論にでも至るわけ?」
「彼女の代わりなんかできないし、そもそも望まれもしないでしょう。今の私はマスターの剣。マスターの願いを砕こうとする行いを見過ごしたりはできません」
「おおこわい!剣呑だなあ。まるで僕が悪の帝王かのようじゃないか。心外だ。悪逆の限りを尽くそうとする悪の華より、この皆に愛される脆弱で無力な僕のほうが邪悪だと断罪できる材料が君には……ああ、そうか。君も妖精眼の持ち主だったね。すっかり忘れていたよ。あの頃の君があんまり健気だったものだから。それこそ、そこのお嬢さんも顔負けなぐらい必死に……ああ、なるほど?気に入る理由がわかったよ。たしかにその子は正直者だ。君にとってもあいつにとっても、そういうところが――」
「おい、揃いも揃って訳のわからない長話をするならどけよ!」
すっかりこちらを無視してやり合う二人に耐えかねて叫べば、はっと振り返る予言の子が何か飲み込むように眉をひそめていた。まるでなにかしでかしてしまった子供みたいな、今の立ち振る舞いにはずいぶん似つかわしくない表情だ。
「すみません、バーヴァン・シー。あなたの邪魔をする気はありませんでした」
そうしてアタシに道を譲る。王子野郎が足を踏み出してこなければアタシはそのままこいつの来た道を辿れるだろう。でもなんとなく嫌な予感がして王子野郎を見れば、覚えのある視線が向けられていた。馴染みがある。よく知ってる。無価値なものを見る目。穢らわしいものを見る目だ。まるきりその姿形に似合わない視線。
「あ――」
逃げろといつかお母さまが怒ったのを思い出す。それでも思わず足がすくんでいると、取り繕うみたいにその表情が和らいだ。ふんわりと、花が綻ぶみたいな笑みと朝日みたいに暖かで柔らかな声。
「ごめんねえ、お嬢さん。別に君に対して何かあるわけじゃないんだよ」
それがたまらなくおぞましくて、かえって足が動いた。弾みがついたように我に返れた。
大丈夫、取り繕って、虚勢を張れる。だってあたしはお母さまの娘。ワガママで、ザンコクで、カワイイ、女王のたった一人の後継者。そうあれとお母さまが望んでくれた。鼻を鳴らして、ヒールを鳴らして、アタシは悪態をついてその場を離れた。
別に、怖じ気づいたわけじゃない、そうじゃないのお母さま。ただあんまりにも、あんまりにも久しぶりに、あんな視線向けられたから、昔みたいに思ってしまったの。アタシが悪いと気が迷ってしまったの。
だからアタシは、背後で妖精王が低い声でなんと言ったかなんて知らない。聞こえない。わからなかった。
「なんで霊基を戻しちゃったのかな。理解に苦しむよ。何もわからないほうがあの子にとっては幸福だろうよ、偽善者どもめ」
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最終再臨までしたけどあんまり不憫だから再臨状態を元に戻されてるバーヴァン・シーとそれを知ってるカルデアの人たち、という妄想でした おそまつ
あとは第三再臨後の姿でモルガンに介護される妄想をしたいです(そういうのが癖だから…)