帝幻版深夜の創作一本勝負さんのお題「毒も喰らわば」で書いたもの。
クローンの死体を🎲と📚が埋める話。クローンが死ぬ描写あり。中おうから逃げてた頃の話。
暗い話ですが、一種の救済の話だと私は思ってます。
@FP2ndhayusyo
「ぐはっあ゛」
血を吐いて地面に伏したそれは、ひどく頼りない身体をしていた。まるで小学生のようで、ピンク色の頭がちぐはぐだ。ばらばらと、ピンク色の可愛らしいキャンディが水色のコートのポケットから零れ落ちる。
帝統がそれを回収しようと、彼に近づいた。俺は、その光景に立ち尽くすことしか出来なかった。痙攣していた身体が、動きを止めて、地面に溶けてしまうのではと恐怖するくらい、ぺたりと地面にくっ付く。
「こいつ、飴いっぱい持ってんな」
「帝統、それ、」
飴をせっとと拾い、ポケットをまさぐる帝統に問いかける。帝統は幻太郎の視線を追って、「ああ」と公園においてある遊具を見るかのように平然と言った。
乱数と一緒に、中王区から隠れて暮らす日々。何度目かの、クローンの襲撃にあった。いつものように帝統と二人で応戦して、何度目かのヴァースをくらわせた後、彼は血を吐いて倒れてしまった。それほどまでに攻撃が強かったのか、寿命だったのか、はたまた別の要因か。これまでのクローンとの応戦を考えると、こちらの攻撃で倒れるほど彼らは弱くない、はずだ。だから、きっと、これは。
「寿命だったんだろ」
帝統の言葉にはっとする。帝統は彼の傍らにしゃがんで、動かない身体を見ている。
「飴いっぱい持ってたしな、だから、もう長くなかったんじゃねぇの」
帝統は幻太郎の目を見て、安心させるように薄く笑う。俺の為にそう言ってくれているのか、本心なのかは分からない。でも、それでも安堵してしまう。今やっと、息を吐いた気がした。
「どうします、それ」
「んーそのうち中王区の奴らが回収しにくるだろうけど、どっか埋めるか?」
幻太郎に問いかける。帝統がそうしたいのか、幻太郎がそうしたいと願っているのではないかと、読み取っているのか、わからない。
「…隠すってことですか」
無かったことに。彼の所有者にすら教えない、二人だけの秘密に。
「いや、奴らに回収されても、きっとろくな捨てられ方しねーから、俺たちで葬ってやろうぜ」
帝統が笑う。励ましてくれる時によく見る、ぱっと明るい笑顔なのに、目に陰がかかっている。幻太郎はその意味も考えることをやめ、帝統の言葉に、頷いた。
山道に車を走らせる。シブヤの街から出て、一番初めに目に入った山。もしかしたら、幻太郎の家からも見えるのかもしれない。舗装されていない山道をガタガタと車は進む。手の震えが収まらない幻太郎の代わりに、帝統がハンドルを取る。こいつ免許持ってんのかな、そんな些細なことよりも大きな罪を犯しているのだから、まぁいいか。片手でハンドルを持って、空いた方の手で、幻太郎の手を握ってくれている。器用な奴だと思う。こんな時にでも、俺を、気遣ってくれている。後部座席に横たわる彼に見せつけてやりたいくらい、かっこいい男だ。
「この辺でいいかな」道すらない雑木林の中で車を停める。もう少し奥に彼を運んで、大きな木の下に穴を掘った。ざくざくと掘り進める帝統の半分のスピードも出なかったが、幻太郎も懸命に穴を広げた。すぐ近くで眠る、あの子のことを考える。少しでも、安眠できる場所であるように、いつしか、そんなことを考えていた。
「なあ、最後の晩餐、何喰いたい」帝統は時折、このように関係のない話題を振る。幻太郎は忙しなく掘り返される土を凝視しながら、「サバの味噌煮」と答えた。「スイカじゃねんだ」帝統は無機質に言う。それから口は動かしていたが、何を話したかは、まるで覚えていなかった。
「これ、桜の木ですね」
土をかぶせて、来た時と同じ景色になった後、よくよく木を見て気づいた。季節柄、ピンク色の花は咲かせていない。木の幹をなでる。
「じゃあさ、春になったら、花見に来ようぜ」
帝統も同じように、木の幹に手を添えていた。正面から幻太郎を見ている。
「乱数と三人で?」
「乱数には内緒。二人だけで」
二人は無意識に距離を詰めていた。帝統の顔がもうすぐそこにある。
「そうだね」
唇を重ねた。無性にそうしたかった。一人ではないと、確かめたかったのかもしれない。
最後まで見届けるからね。土の下の彼に呼びかける。いや、もっと大勢の彼らに。大事な友人の為に、飴を奪い取ることを決めた、俺たちの責任。