FGO 2部6章後
キャストリアとオベロンのカルデア再会
オチはないが脳内解像度が低くてもどかしいのでもうひとつ書いた おそまつさまです
@syuu_29
カルデアは夢のような場所で、自分のような曖昧な存在のみならず、何人もの英霊たちが集い、それなりに自由な振る舞いを許されている。カルデアベースの中はそれほど広くないので恒久的な私室を持つ者はほぼいないが、旧施設では全員に割り当てる程度の広さがあったというから驚きだ。いや、今だって望めば一時的に私室空間を割り当ててもらえる。贅沢だなあすごいなあと感心してしまうばかりだ。
でも一番驚いたのは召喚されている面々だ。私みたいな幻想が存在するからには当然かもしれないが、故人のみならず概念的な英霊も少なくなかった。それになんといまも幽閉されているはずのマーリンまで。恐るべきカルデア式召喚術!さらには古今東西様々なクラスの英霊たちのなかには、それこそカルデアと敵対したはずの者もちらほらと混ざっていた。異星の使徒や、異聞帯の王たちまで。
なんなら私の宿敵だって……ていうかおかしくない?奈落の底に落ち続けるんじゃなかったのか。マスターに慌てて確認したけれど、さらに悪いことに私と違って記憶がそっくりあったりするらしい。なんだそれは。どの面下げてってこのための言葉では?なんて思わず言ってしまったけれど「はじめてじゃないし…」なんてへらへらしているあたり、カルデアはマスターからしてちょっとどうかしている。
でもそれならなおさら、そこでの私のことがきっと記憶にあるだろうと思うとどんな顔をしていいやらわからなかった。
それでなるべく会わないようにここまで過ごしてきた。夢のような場であるのだからそれなりにこちらの意識が作用しているのか、少なくともおとなしく人のいい姿を演じ続ける彼からちょっかいを出すつもりはないらしかった。今日までは。
でも声をかけるならアヴァロンの私に声をかけてくれたらよかったのだ。なにしろ霊基の状態に精神は左右される。記憶のない、エミュレートしたものだってそれなりに私は私なのだ。中華軍師だって若い姿だとずいぶん言動に違いが見えるぐらいだし、私だってそうなのだ。
けれどもつい魔が差して子供の姿をした英霊たちの遊ぶのに田舎娘の霊基に戻ってはしゃいでいた罰かのように、彼は私に声をかけた。親しくて気安い友達に声をかけるみたいに――まあそんな存在の記憶はないので、実感のないこれは知識から察しただけなのだけれど。
「ずいぶん懐かしい格好してるね」
オベロン、と名前を呼ぶ代わりにアルトリアは内心の葛藤を胸の奥底に沈め、声の主に目を眇めた。
「あなたから声をかけて来たのは意外です」
強ばった声はアヴァロンの自分のようだと自覚があった。にこにこしていたオベロンのほうも目を丸くして首を傾げた。
「あれ、中身そっちなの」
「そっちもなにも、私はいつでも私です!というか何です。あなたこそ、『それ』疲れないんですか」
「疲れるう?なにそれ。心当たりがないな。でも君こそそんなに振り幅あって大丈夫?」
きらきらの冠のせいなのか、それとも背中の大きな蝶の羽根からまばゆい鱗粉でもばらまいているのか知らないが、不思議と親しみを感じさせる笑みだ。でもやっぱりまるで心が伴っていない。
「……やっぱりあなたってそういうとこあるんですね」
「えー?そういうとこって?わかんないなあ」
「だからそういうところです」
きっと私を創ったあの子のまま、自分の役割だけがわかっていたあの心のまま彼と対峙するのはきっと苦しかっただろうとアルトリアは想像した。でも、だからこそ大丈夫だ。どんな顔をしていいのかはやっぱりわからないままだったけれど、彼の内心に揺さぶられたりはしない。あの彼女によって造られたのが成長した自分なのだから。
そう思えるとなんだか急に誇らしい気分になったので、できうる限りの不敵な笑みを浮かべてやった。
「でも声をかけてくれてよかった。あなたは警戒すべきヴォーティガンでもあるけど、嘘つきのオベロンだ。それがわかっている今は、逆にあなたは素直じゃないかと思えてきたぐらいなので平気なのです――え、なんです?苦虫を噛み潰したような顔をして。ああ、この例えはよくないか。ええと」
「相変わらずズレたところを気にする子だよな、君は。ああまったく!どこまでも素敵なところだよカルデアってやつは」
「ほら、逆に素直じゃないですか?」
「うるさい。声をかけた俺がバカだった」
「ああ、魔が差したってやつですか。奇遇ですね、私も魔が差してこの霊基に戻っていたのです」
「知らない。説明するな。どうでもいいから」
投げやりに踵を返すオベロンはまるきりつれない声で押し殺すように吐き捨てると、もうこちらを振り返りもせずに行ってしまった。