作者名:ナナシ さん
スペース:クロルク / う2
@_rookwebonly
部活も終わり寮に戻り、そそくさと自室へと入る。鍵をかけてようやく一息つくことができた。そして、部屋にある鏡の前に立ち帽子を脱ぐ。そこには、髪と同じカナリアゴールドの猫耳を生やした自分が写っていた。
事の発端は今日の部活で運悪く魔法薬を被ってしまった影響で獣人族のような耳としっぽが生えてしまった。それを見て薔薇の騎士ことトレイくんは「派手にやったな」と眉をハの字にして笑う。
いつもの自分であればそんな身体に興味を持つが、今回ばかりは都合が悪い。今日は学園長の部屋に泊まる日だ。
学園長は猫との相性が良くないとぼやいていた時があった。猫といっても一部だから問題はないと思うが、万が一冷たくあしらわれてしまうかもしれない。そんな考えが過ぎるとどんどん悪い方に考えてしまってどうにもならない。そんなことを考えてる間も魔法薬を被らなかったトレイくんは他人事だと笑っている。その姿が少し恨めしくなる。それから、部活が終わってすぐに猫耳を帽子の中に仕舞い込んで寮へと帰ってきて今に至る。
部活に来ていたクルーウェル先生の見解によると一日経てば治るだろうと言っていた。だから、今日さえ我慢すればいいんだとスマホに手を伸ばしメッセージを打つ。元の姿に戻ればまた会えるのだからと自分に言い聞かせて送信ボタンを押す。無慈悲にも送信されたメッセージを見てせっかく学園長の部屋に泊まる日だったのにと肩を落とす。
◇◇◇
学園長に連絡を入れてから夕食や入浴などを終わらせてもう後は眠るだけだった。ふと、時計に目をやると時刻はもうすぐ22時。本来ならば今頃学園長の部屋に向かう時間だったのにとまた落ち込んでしまいそうになるため、今日はもう寝ようとベッドに向かう。
その時、コンコンと窓の外からノック音が聞こえた。窓の外からノックをする人物なんて一人しかいない。そう思うとサーっと血の気が引く。
なぜ?どうして?や連絡は入れたはずなのにという疑問が頭にたくさん浮かぶが今はそれどころではない。このまま気づかないふりをするべきかと考えていると、もう一度窓を叩く音が聞こえる。流石に見過ごすことはできない。そう思った途端窓の鍵が開く音がした。まずいと思い布団に潜り込む。暫くすると窓の開く音がして、ベッドに近づく気配を感じる。
「今日は行けないと連絡したじゃないか」
「ええ、連絡は来ましたよ。ですが、何がなんでも来ようとする君にしては珍しいので何かあったんじゃないかと心配して来たんですよ。それに……」
バサッと布団を剝ぎ取られ隠していた耳が露わになる。学園長の瞳は明らかにそれを捉えている。
「これには……その、いろいろ事情が……」
うまく言葉が続かない私をよそに学園長は何も言わずぺたんと伏せた耳に手を伸ばして撫でられる。状況が理解できず学園長を見ると「実は触ってみたかったんですよね」と言って微笑まれた。
あまりのことに目を丸くする。触ってみたかった……?その意味を飲み込むことができずポカンとしてしまう。その間も学園長は撫で続けている。
話を聞くと私の連絡を受けた後、クルーウェル先生に会って私のことを聞いて様子を見に来たという。がそれは建前で、猫に触ってみたかったのが本音らしい。いつも猫に会うたびに威嚇されて、触ることが叶わなかった学園長にとって私が獣人の姿になったのは思いがけないチャンスだったらしい。
結局、嫌がられるという心配は杞憂で終わってしまい、拍子抜けしてしまった。
「なかなかいい毛並みですね」
そう説明し終わると学園長はしっぽを撫でる。そして、突然しっぽを強く握られ、ギャッと悲鳴が上がった。
「あまり強く握らないでおくれ」
「ああ、すみません。力加減が難しいですね」
今度は優しく撫でられてだんだん心地良くなる。学園長に撫でられるのは好きだ。もっともっとと欲が出てくる。
「……頭の方は撫でてくれないのかい?」
「おや、気持ち良かったですか?しかし、耳は撫で辛くないですか?」
「頭も一緒に撫でたら撫でやすいと私は思うよ」
「そっちが目的なんじゃないですか?」
「まあいいじゃないか」
「またそうやって君はすぐに調子に乗るんですから」
「貴方も撫でてみたかったのだろう。だから利害の一致じゃないか」
「またそうやって屁理屈を……」
はあと大きなため息をつくも、しっぽに伸びていた手が頭に置かれる。なんだかんだ甘い学園長に向かってにっこり微笑む。こうやってずっと撫でてくれるならこの姿のままでもいいかもしれないとぼんやり思いながら彼との時間を過ごした。